2002年6号
平成14年度 NPO/NGOと政府・企業のコラボレーション研究委員会 -協働のための評価のあり方を考える-
平成13年度開始の本研究は、コラボレーション(協働)の事例報告から、非営利セクター自身にはキャパシティビルディングとガバナンス向上の必要性が、また、政府/企業には非営利パートナーと対等な或いはより支援的な対応をとることの重要性が指摘された。総じて脆弱な基盤にある非営利組織の強化が優先課題とされ、寄付税制見直し、人材交流を促進する環境整備と大学での人材教育プログラムの設置などが非営利セクター全体の発展に欠かせぬ要件とした。
グローバル社会共通の様々な課題の克服に、或いは、地域社会固有の問題解決に、非営利セクターの果たす役割の重要性認識が拡がりつつあり、政府・行政、企業との協働機会が増大している。所謂NPO法施行(H10)以降、日本国内では多くの非営利団体が法人として登録されるとともに、新規設立団体数も増え、本年9月末現在、認証団体数は8,315を数えている。しかし上述のごとく、その大半の団体は管理運営面に多くの課題を抱えていることが推測され、事業遂行能力もあわせ、協働パートナーとしての適格性が懸念されるケースが少なくない。
すでに社会システムの中で非営利セクターが一定の力を持つ米国・欧州などでは非営利組織の評価のための基本データ(組織の属性,事業実績)が整備・公開され、また評価システムも発達、寄付や資金助成先の選定の判断基準として、また事業委託,協働のパートナー選定の判断材料として活用されている。多くの評価ツールも公開・提供され、非営利組織自身が自己評価を下せる環境にある。
翻って日本においては、元来社会全体に評価する文化が希薄とされ、非営利セクターの歴史の浅いこともあり、組織自体を、或いは実施事業を体系的に評価することはさほど多くはなかった。しかし、協働事例・協働企画の増加、助成申請における競争率の上昇に伴い各方面で非営利組織とその事業実績を評価する必要性が指摘され始めている。そうした状況に応えるように、近年、いくつかの事業評価モデルが提案・試行され、学会報告もおこなわれるようになった。
日本の個々の非営利団体の多くは未だ発展途上にあり、それ故セクター全体の発展段階も途上にあるといえる。こうした状況下では欧米のような非営利セクター先進地域で適用される「整備された組織」に対する評価モデルや、それらの組織の管理・運営体制のもとで行われたプロジェクトの評価システムをその原型のまま現在の日本に導入・適用することには無理がある。発展途上段階の非営利団体評価に適したモデルがあるべきではないだろうか。
そうしたモデルはまた、日本の公益の性格や社会ニーズが国際的普遍性だけでなくドメスティックな側面を合わせ持つ点、グローバルニーズの捉え方も考慮され、反映されたものでなければならないだろう。
こうした現状認識と問題意識に基づき、本研究委員会では、学界,非営利組織及びその助成/支援組織,企業,行政の各セクターから当該分野の研究面、或いは実務の専門家の参加を得て、日本の非営利団体を対象とした以下の各項を討議検討し、非営利組織に関する日本型評価システムのあり方を導くこととした。
(1) |
非営利組織の信頼性の客観的、定量的指標は如何なるものか?特に発展途上にある非営利組織の将来の発展性・成長可能性をどう評価するのか? |
(2) |
欧米の評価モデルには如何なるものがあり、それらからどのような項目・基準が現在の日本に移植可能な要素なのか?それらは日本的要素とどう調和させうるのか? |
(3) |
評価プロセスとそのあり方は如何にあるべきか?さらにその運営方法と組織体制はどうあればよいのか? |
(4) |
評価のためのデータベース整備ほかどのような要素が評価基盤を構成し、それらの構築のための課題は何か?その解決の取組みはどう進められるべきか? |
本研究委員会の研究成果は平成14年度末に報告書として取りまとめられる予定である。
|
|
|
伊吹英子 |
|
野村総合研究所経営コンサルティング1部 |
|
|
|
今瀬政司 |
|
市民活動情報センター代表 |
|
|
|
川北秀人 |
|
IIHOE(人と組織と地球のための国際研究所)代表 |
|
|
|
岸本幸子 |
|
パブリックリソースセンター事務局長 |
|
|
|
粉川一郎 |
|
評価みえ代表理事 |
|
|
|
小山正人 |
|
近畿労働金庫 経営企画部 広報・地域福祉課課長 |
|
|
|
鈴木 均 |
|
日本電気株式会社 コーポレートコミュニケーション部長 |
|
|
|
田中浩二 |
|
ITSジャパン広報会員サービス部長 |
|
|
|
田中弥生 |
|
国際協力銀行プロジェクト開発部参事役 |
|
|
|
中原美香 |
|
NPOリスク・マネジメント・オフィス代表 |
|
委員長 |
|
山内直人 |
|
大阪大学大学院国際公共政策研究科教授 |
|