2001年5号

COP6 part2の結果について

 COP6part2は7/16に開会され、7/19から7/23の閣僚級会合において、京都議定書の詳細ルールなどに関する政治的合意に達した。その後、具体的なテキスト作りが行われたが、京都メカニズム、遵守等に関しては合意に至らず、COP7にて再度議論することとなり、7/27に閉会した。



1.閣僚級会合の結果

(1)議長提案の採択
7/23AMに、議長提案(7/21、22:47版)は、遵守に関する部分を一部修正(注1)した形で、合意された。(合意を告げると、フロアの交渉団も含め、会場を埋める聴衆からスタンディングオベーションが起こった。)
7/25夕刻の全体会合にて、この合意が正式に採択された。(通称:Bonn Agreement)
 (採択文書:FCCC/CP/2001/L.7)
 ※概要説明はここをクリック

(2)議長提案の概要
a.途上国への基金
気候変動枠組条約上のものと、京都議定書上のものが分けられている。ただし、具体的な金額は織り込まれていない。

b.京都メカニズム
補完性については、「国内対策が努力の重要な要素(significant element)であること」との記述となっている。
CDM、JIについては、「原子力施設から得られるクレジットの使用は差し控える(refrain from)ように」と記されている。

c.LULUCF
日本は、森林管理で1,300万t-c(基準年排出量の約4%弱)までカウントできるようになっている。

d.遵守
不遵守時は、1.3倍の利子をもって(次期)割当量から差し引かれる(deduction)。
具体的な内容は、COP/MOPにおいて決議することを勧告することとなっている。

(3)各ステートメント
a.プロンク議長
今回の合意に関与したすべての人々に感謝する。
今回の結果は、国連の枠組みにおける多国間交渉の大切さを示している

b.ベルギー(EU議長国)
途上国援助に関して積極的にサポートする。
(EU各国、加、ノルウェー、NZ、アイスランド、スイスで毎年4億1千万米ドル)

c.日本
今回の合意は2002年発効に向けての重要なステップであった。
最も多くの国が参加できる事が重要。

d.米国
京都議定書を批准しない。
ブッシュは気候変動問題を重要な課題と認識している(このときNGOからのブーイングあり)。

2.詳細テキストの作成について

閣僚級による政治的合意がなされ、主要な政治的論点についてオプションが決められたことを受けて、4つの交渉グループに分かれて、事務レベルによる詳細テキストの作成作業が行われた。京都メカニズム、LULUCF、遵守については2日間では全ての議論を終えることができず、COP7において再度議論を行い、その後正式に採択される予定である。




3.交渉経緯

(1)交渉分野ごとの会合:7/16 PM~7/19 AM
閣僚級会合に先立ち、途上国問題、京都メカニズム、LULUCF、遵守という4つの交渉グループに分かれて行われた。
各交渉グループは、19日午後より始まる閣僚級会合で議論すべき政治的論点を抽出し、それに対する解決オプションを列記したペーパーを作成した。

(2)閣僚級会合(High-level Segment):
   7/19 PM~7/23
7/19(木)
全体会合にて、各国のステートメント、IPCCワトソン議長の報告などを実施。
 (ベルギー;EU議長国)
発効させるために、包括的な合意を目指す。
 (日本)
2002年までに発効を目指す。米国の参加が最善であり、米国の説得に努めるが、この会議の進展を妨げるものではない。
 (米国)
議定書を批准しない。ただし、議論を妨げはしない。

7/20(金)
閣僚級会合メンバーのうち、35名(注2)からなる“The Group”という包括的な交渉の場が設置された。

7/21(土)
22:47付けで、閣僚級会合での採択を目指す決定草稿の形の議長提案”Core Element for the Implementation of the Buenos Aires Action Plan of Action”が配布された。
日本の吸収源は、4%弱認められる内容となっており、EU側はかなりの譲歩を見せた。しかしながら、アンブレラグループ(日本)としては、遵守、ODAの扱い、原子力などについて意見が反映されていないものであった。

7/22(日)
引き続いて、議長と各交渉団体(EU、アンブレラグループ、G77+中国ほか)の間で、相対協議が続けられた。

7/23(月)
遵守の一部分を修正し、合意に至ったことが明らかにされた(1.の閣僚級会合の結果を参照)。

(3)COP全体会合における閣僚級合意の正式採択へ:
   7/24・25
7/24(火)
7/24には、7/23に合意に達した提案文章に編集上の修正を加えた決定草案(FCCC/CP/2001/L.6)が配布され、夕刻に全体会合が開催されたが、ロシア、ウクライナから、「国連における決議プロセスでは、国連公用語(ロシア語も含む)を使うこととなっており、英語だけで採択するのはおかしい。」との意見があり、翌日に事務局が翻訳した文書を配布することとなった。

7/25(水)
夕刻に全体会合が開催され、プロンク議長から「7/23の閣僚級による政治的合意の十全性(Integrity)を尊重する」として、閣僚級が合意した際の文書(FCCC/CP/2001/L.7)の採択が提案され、了承された。(編集上の修正を加えようとしたところ、修正内容に対して異議があがり、各国の意見が食い違った上、ロシアが吸収源の上限値見直しを主張したため、7/23時点の閣僚級合意文書に戻したものと予想される。)

(4)詳細テキストの作成:7/25 夜~27
7/26(木)
京都メカニズムのテキストについては、編集上のミスや、幾つかの意見を受け付け、今回は未確定の扱いとし、COP7へ先送りすることとなった。遵守については、政治的合意をベースにCOP6で遵守に関する制度そのものを採択すると解釈するEUと、採択するのは政治的合意に書いてある事項のみとするアンブレラグループの間で議論が紛糾した。

7/27日(金)
今回合意された分野の採択については、先送りされた分野とともに、COP7で一括でおこなうこととなった。 
 (合意分野)
  途上国関連(技術移転、能力育成、基金等) 
(COP7へ先送り)
  京都メカニズム、遵守、LULUCF、5・7・8条
プロンク議長より今回の政治的合意を“Bonn Agreement”とよび、COP7においてはこれをベースに「バランスのとれた包括的なパッケージ合意を目指す」との発言があった。
(文責 定森一郎・田中加奈子・中西秀高)
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(注1)法的手法(legal instrument)、損害への支払い、といった内容が削除された。
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(注2)環境十全性グループ:1名、CG11:3名、中央アジア・モルドバ:1名、EU:5名、アンブレラグループ:6名、非附属書I国:19名


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