京都大学・東南アジア研究センターの白石隆教授を委員長に迎え、第2次「アジアの中の日本を考える」研究委員会は平成11年度に終了し、このほど、研究委員会報告書が完成した。白石委員長はじめ委員会委員各位 の1年間にわたる御尽力に謝意を表するとともに、以下に、報告書概要を紹介する。
1.委員会報告書概要
東南アジア諸国との貿易・直接投資等の経済活動を通して、日本はアジアの中に組み込まれつつあるといえる。
第1次「アジアの中の日本を考える」研究委員会(平成9-10年度)では、こうした状況下、アジアの地域秩序とその中での日本の位
置取り、地域秩序再編に対する日本の戦略が議論された。そして経済、文化、技術等の領域でのアジアとの交流の深化・拡大が、長期の時間軸上における「アジアの中の日本」の展望形成を可能にするとし、日本自身の意識改革、システム変革の必要性を指摘した。
第2次となる本年度委員会では、「日本を中心とした相互増益的な発展構造(構造的優位
;ヘゲモニー)とはいかなるものか?」との問題意識に立ち、歴史的或いは文明的視点からのアジアの構造特性、様々なアクターによる地域化への対応・寄与とその戦略、グローバル化・市場経済化への構造改革と国家及びその政策との関わりについて議論、「アジアの中の日本」としての自らの改革課題を導出した。
まず、アジア地域化は市場の力に牽引されつつ引き続き進展すると見通
した。地域の中における日本の存在条件は、アジア地域化の進展を政策的に支援し、またアジアの人材とエネルギーに依存しつつ日本の繁栄と福祉を達成することであるとした。それには日本が社会システム、企業システムの変革を進め、地域化するアジアから活力を受容しうるような体質転換が必要となる。
その具体的イメージが以下にまとめられる。
(1) | 魅力ある国:規制緩和と構造改革により、開かれた日本、魅力に富む日本を目指すべきである。 |
(2) | ソフトパワーによるイニシァティブ:経済的パワーを背景に、文化・価値観・様々な知的蓄積などのソフトパワーによるイニシァティブを発揮、アジアにおける寄与・貢献で影響力を確保する。 |
(3) | 敏速な対応:97年アジア通貨危機に象徴されるように、グローバル化は予測を越えるスピードで状況を変化させる。機敏で的確な政策対応がより一層必要になる。民間の専門知識を結集し、迅速な政策形成システムを構築したり、平時からいくつかの危機対応シナリオについてのコンセンサスとオプションを確保しておくことが重要である。 |
これら三つの目標を実現するためには、日本が自らを改革する強い政治意志、国民的意志を持つことが必要である。
(文責 委員会事務局 竹林忠夫)