第二次評価報告書の概要
(統合報告書から)


1.気候系への人為的干渉


CO2、CH4、N2O等の温室効果ガスの大気中濃度は、工業化以前より際立って増加しつつある。温室効果ガスは数十年から数世紀に亘り大気中に滞留し、大気及び地球表面の温暖化をもたらしている。
化石燃料の燃焼、バイオマスの燃焼等に由来するエアロゾルは、気候に冷却効果をもたらす。エアロゾルは大気中で極めて短命で、その効果は放出量の増減にすみやかに適応する。
1990~2100年の温室効果ガスとエアロゾルの原因物質の排出に関するシナリオを用いて影響を予測すると、中位の排出シナリオでは2100年には平均気温は2℃、海面は0.5m上昇すると予測。

2.気候システムに対する感受性と適応性


人間の健康、陸上及び海洋生態系、社会経済システムは、気候の変化に敏感であり、それらに適応する必要性に直面する。
多くの生態系の構成と分布が変化し、生物多様性の減少や生態系が社会に供給する財やサービスの減少が考えられる。
環境的・社会経済的状況により影響は大きく異なるが、特に熱帯と亜熱帯で悪い影響がでるであろう。

3.温室効果ガス濃度安定化に向けたアプローチ


温室効果ガスによって気候に加えられる強制力の約60%はCO2が寄与しており、CH4寄与度の約4倍。
CO2 はその挙動が複雑なため詳細な検討が必要。

4.技術的及び政策的オプション


温室効果ガスの大幅な排出量削減は、エネルギー供給、産業、交通 、住宅/商業、農林業等全ての分野において、技術の開発・普及・転換を加速させる政策や広範な技術の活用により達成が可能。

(1) エネルギー供給分野における対策

新設のみならず既設設備の更新時にCO2排出量の少ないオプションを導入すれば、大幅な削減が技術的に可能。


多くの方策はSO2、NOX、様々な有機化合物の排出量を低減。

a.

化石燃料の高効率利用

電力変換効率の向上(現在の世界平均30%を長期的には60%以上)
熱電併給システムによる変換効率の大幅上昇

b.

低炭素燃料への転換

石炭から石油、石油から天然ガスへの燃料転換

c.

排煙や燃料からの脱炭とCO2 貯蔵

化石燃料使用の発電所におけるCO2除去・貯蔵

除去したCO2 の枯渇ガス田等での貯蔵

水素を効率的に利用した燃料電池の開発

d.

非化石燃料源への転換

原子力エネルギーへの転換

太陽エネルギー、バイオマス、風力、水力、地熱等の再生可能エネルギーへの転換)

(2)

エネルギー使用分野における対策

世界の多くの地域での技術的な抑制対策や改善された管理方法により、今後20~30年の間でわずかの増分もしくは増分コストなしで現状より10~30%のエネルギー利用効率改善可能。

現在開発されている最もエネルギー変換効率のよい技術を適用すれば、多くの国々で同期間に50~60%のエネルギー利用効率改善が技術的には可能。
改善を実現化するには、将来におけるこれらの技術適用コストの低下、資金並びに技術の移転とともに他の様々な非技術的障害を克服することが必要。


a.


産業分野の対策例

コジェネレーション(熱電併給)、エネルギーの段階的(カスケーディング)使用、蒸気回収、高効率機器の使用
原材料の再生
省エネルギー・省資源プロセスの開発

b.

運輸分野の対策例

より効率的な駆動系、軽量構造、低空気抵抗設計車両の採用

土地利用パターン・輸送システム・移動パターン

ライフスタイルの変更

エネルギー集約度の低い輸送様式への移行

c.

民生分野の対策例

建築構造物の断熱化

より効率のよい空調、給湯、照明、器具の利用

(3)

農業・畜産業・林業分野における対策

CO2、CH4、N2O 等の排出削減、CO2 吸収拡大の重要な役目を果たす

林業でのCO2固定費用は他の緩和策と競争力あり
対策例

現在の森林地域の維持

自然林の再生

森林伐採の減速化

植林地の造成

農林業(agroforestry)の促進
貯蔵作物から発生するCH4の回収

(4)

政策手段

最適な政策の組合せは、その政治的な構造や社会的な受容性に依存し、国によって異なる。

温室効果ガスの少ない技術や消費パターン修正の普及をもたらす政策の中に、国際的な合意を必要とするものもある。
政策例

エネルギー価格戦略(炭素税・エネルギー税導入やエネルギー補助金削減等)

他の補助金の削減あるいは撤廃

排出権売買

電力のデマンドサイド・マネージメント

最低エネルギー効率基準を含む規制プログラム
新技術を利用可能にする研究、開発、実証分析の奨励
先進技術の開発・適用を奨励する市場誘導ならびに実証プログラム等

5.公平性と社会的配慮

公平性と社会的影響への配慮から、特に途上国における自立的対応能力と制度面の能力の形成が必要

各国の気候変動への脆弱性、国力、保有資源等を考慮されない場合、損害費用、適応策や緩和策に要する費用負担が不公平に陥る可能性がある。

6.持続可能な方法で進行する経済発展


気候変動の軽減経路の選択には、遅れによる危険と現在の急速な軽減による経済リスクの両方を勘案することが必要。

抑制策が他の環境面での利益ももたらすよう進行すれば費用効果的であり、持続可能な発展に資する。

7.将来の前進に向けて


温室効果ガスの排出量を削減し大気中濃度を安定化させるための政策や意志決定の多くは、民間部門や公共部門に新たな活動の機会を与える。

二国間や地域的または国際的な合意の枠組による国際協力は、大幅に地球全体での排出削減コスト等を低下させる上で効果的。

 

以   上


[IPCCホームページへ]
[UNFCCCホームページへ]

▲先頭へ