標記研究委員会は東京大学大学院総合文化研究科・山影進教授を委員長に就任頂き、 この程発足の運びとなった。その概要を以下、紹介する。 |
<研究経過>
平成11年度「東南アジア諸国の政治経済システムの変化と日本を含む地域協力の可能性」研究委員会では、1997危機がもたらしたアセアン自身の変容、日本のアセアンへの関わり方の変化に関し、タイ,インドネシア,マレーシアを主対象に政治体制と経済の両面
から分析が行われた。
アセアン内部動向として、タイなどによる相互内政不干渉原則見直しの機運、域内における新たな南北格差の出現などが報告され、地域統合深化の障害となる可能性が指摘され、その課題克服への日本の戦略的な協力と支援の必要性が導かれた。
経済協力を軸にアセアン諸国と二国間ベースで展開してきた日本の援助協力は、地域統合体としてのアセアンと日本という関係の発展を目指す中で、その援助の進め方にも新たな考え方が必要とされる。
一方、アセアン自身も、昨年4月カンボジアを加えアセアンテンとなったが、ベトナム、ラオス、ミャンマーを含む新参組加盟により、新たな課題を抱えることとなった。
以前から加盟のタイ、マレーシア、インドネシア等古参組が築いてきた6ケ国時代は、政治体制も、経済規模も「似た者同士」の集合体であり、公用語としての英語を駆使した円滑な意志疎通
で域内の相互信頼を醸成してきた。
新規加盟国グループは、古参組との間に巨大な経済格差、共産主義・軍政など全く異質の政治体制、また所謂ASEANウェイへの理解の差などをアセアンに持ち込み、域内に古参組対新参組の大きな溝を生むこととなった。
この溝は、ASEANが目指す地域統合への障害となるだけでなく、新たな方向を探りつつある日~ASEAN関係にも多大の影響を及ぼすものと懸念される。各国自身の、こうした状況の改善努力に対しては、様々な形態の支援と協力が実施されているものの、一層の拡大・強化が期待されている。
特に、これら新規加盟国グループの課題克服には長期的取組みを要するものが多く、そうした観点からの支援構想が築かれるべきであろう。
本研究においては、こうした状況認識のもと、これらの国々が抱えているASEAN統合への障害・課題などその実態をまず、明らかにすることとしたい。
また、日本が中期的・長期的視点に立って行いうる協力・支援の方策についても検討を試みたい。
特に着目するポイントには、
(1)民主化
(2)グッドガバナンスの確立
(3)公教育の整備
(4)経済発展の基盤整備
(5)地域協力人材育成
などを据え、このほか、メコン川流域開発計画の評価,アセアンウェイ習熟のプログラムなどについて議論を深める。
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