1998年11月27日(金)経団連会館国際会議場において、地球産業研究所(GISPRI)は標記セミナーを(財)地球環境戦略研究機関(IGES)との共催で開催した。企業関係者など約 200名の参加者が集い、政府交渉担当者からのCOP4報告などに耳を傾けた。以下に政府交渉担当者からの報告についてその概要を記す。
-セミナー内容-
COP4の概要と評価 | 梶原成元 環境庁 温暖化国際対策推進室長 桜井和人 通産省 地球環境対策室長 |
温暖化問題に向けた 産業界の取り組み |
太田 元 経済団体連合会 参与 |
柔軟性措置の今後 | 松尾直樹 IGES 上席研究員/GISPRI 主任研究員 |
途上国の参加のあり方 | 川島康子 国立環境研究所 研究員 |
<梶原成元 環境庁 温暖化国際対策室長>
(COP4の位置づけ)
先進国側の第一の関心事は、先進国の義務を決めた京都議定書、その大前提となった「柔軟性メカニズム」について具体化の交渉を行うこと。他方、途上国の第一の関心事は、条約上の課題、すなわち、途上国への技術移転、資金の流れ、石油消費減少・抑制による産油国への影響などであった。
6月ボンでの補助機関会合で、先進国、途上国の各グループより、それなりの意見はでてきたが、どのように国際交渉にのせるか、不明確のままに終了した。9月に東京で開催した非公式閣僚会議において、COP4では内容面 で合意できることは合意し、合意できない点については今後のアクションプランとしてまとめることとした。
(COP4の評価)
COP4において、サブスタンス面で明確なものは決定されていない。しかし、「ブエノスアイレス行動計画」を採択したことが成果 。この行動計画は、独立した6つの決定を束ねたもの。そのうち、「京都メカニズム」(柔軟性措置)についての決定は、2000年のCOP6において行うことを目的として、今後、技術ワークショップ、すなわち実務者レベル会合の開催、各国から条約事務局への意見送付、事務局がそれら意見をまとめ議論に供する、などのプロセスで進む。他の5つの決定も類似の手続きを踏む。
(途上国の参加問題)
非付属書?国の自主的参加についてのアルゼンチン提案が、途上国の反対により議題から削除されたが(韓国、チリは賛成)、COP4議長提案で、インフォーマルな会合を、会期中、先進国、途上国と分けて、2回ずつ開催した。
アルゼンチンがCOP5において第一次約束期間(2008年~2012年)における目標設定を行う旨発表したほか、カザフスタンも付属書?国への参加と第一次約束期間での目標設定の意思表明。また、アフリカ、中南米諸国の一部は、途上国グループ(G77+中国)全体としての意見とは離れてCDMについて独自の提案を行うなど、途上国の中でも様々な意見が生まれてきており、答えが出たということではないが、今後十分に見通 しのできる議論ができた。
<桜井和人 通産省地球環境対策室長>
(評価)
COP4のマスコミ報道など見ると、ややもすると何も決まらなかったとのマイナスの評価を見受けるが、アクションプランが取りまとめられたことが最も重要な結果 。今後の議論の道筋を付ける、という日本のみならず各国の政府担当者が考えていた所期の目的は達成と認識。
理想論から言えば、手続きを決め、枠組みを決め、中身を決める、というプロセスがベストだが、実際は何をベースに議論を行うかという手続き論に時間が費やされ、wordingの調整に時間が取られた。ただ、このようなことは国連の会議ではよくあること。
(柔軟性メカニズム)
交渉の経緯は次の通り。
○初日の全体会合を受けた補助機関合同会合(SBI/SBSTA)では、各国ポジションのステートメント合戦。
○その後、その下のコンタクトグループ4回開催。中身の議論を行うはずであったが、実際行ったのは、ワークプランに関する議論。ISSUE PAPER、すなわち、JI,CDM,排出量取引の検討項目リスト作りであったが、合意に至らず、その旨補助機関合同会合に報告。
○補助機関において、共同議長からWork Programの決定案の原案が出た。終盤の2,3日で議論、合意に至った。
○その決定案に検討項目のリスト(G77+中国から提出)を添付。そこに先進国などの関心事項や不満点を付けた。このリストの脚注に、実質的な合意のある内容ではないことが記されている。
個人的な感想であるが、CDM,JIについては、その書きぶりから類推される結論は別 にして先進国、途上国とも論点の所在について見解は近似している。排出量 取引については、先進国の中でLiability(売り手責任、買い手責任)に相違あり。アンブレラグループは売り手責任の立場、他方EUは買い手責任、もしくは中間的な立場)。また、補足性、すなわち、取引に数量 的な上限を設けるかで意見が対立。
(交渉の構図)
先進国のグループのうち一つはEU。また、日米その他の先進国はCOP3までは、JUSSCANZと呼ぶ情報交換の場はあったが、意見の調整や統一を図るものではなかった。COP3で、米国の呼びかけで若干アンブレラのようなグループができた。現在、それをアンブレラグループと呼んでいるが、EUのように一枚岩ではなく、場合によっては各国独自の意見を出すこともある。途上国はG77+中国グループ。
ややエピソード的な話だが、11月14日早朝の最後の全体会合でスイスが議長にクレームをつけた。スイスはJUSSCANZだがアンブレラグループではない。会期終盤の非公式協議で、議長は上記3グループの代表国を呼んで意見調整を図った。どのグループにも属さないスイスなどの国は受け取る情報が不足、また、意見を反映させるルートを持ち得なかった、というもの。手続きの透明性の点で課題か。
G77+中国は今回の交渉で若干のほころびが見られた。EUは内部で補足性などの点で見解の相違が出ているようだが、外見上は一枚岩。アンブレラ内では、米国が、JI,CDM排出量 取引の3つのメカニズムの中で、JIのプライオリティが若干低いのに対して、日、加などは3つ同時に決めるべきとの立場であるなどの点で相違あり。
(今後の展望)
行動計画の大半と同様、シンクの問題についても、IPCCの特別報告(2000年5月目途)出た直後のCOP、すなわちCOP6で決定の予定。
COP3までと違って政治的ではなく、技術的(実務的という意も含む)な議論が必要。従来にも増して、インフォーマルなワークショップを通じてのインプット、条約事務局への意見提出など、地道に取り組む必要あり。
COP3当時に比しメディアの扱いが小さいなど国内のモメンタムが下がっている。国内対策として、温暖化大綱の決定や省エネ法改正などの取り組み行っているが、景気の問題大きく、温暖化問題への関心低くなってきている。経済界とも協力していきたい。