平成11年6月29日(火)、本年度第1回通 常理事会を開催し、平成10年度事業報告書・収支決算書の承認、専務理事の選任等を行なった。概要を以下のとおり報告する。
【事 業 報 告】
I.概 況
平成10年度は、前年度からの継続調査研究3件及び新規2件の計5件の調査研究を行った。また、国・特殊法人等から調査研究事業を受託し、積極的な事業展開を図った。
一方、我が国経済の停滞から、金利は低水準で推移、財務面では依然厳しい状況にあった。
財団創立10周年の記念事業を含む平成10年度事業実施状況は、以下の通りである。
II.事業の実施状況
1.調査研究等事業
(1) 研究委員会(日本自転車振興会補助事業)
1)グローバル・ガバナンス研究委員会
i)「地球規模の諸課題とガバナンスの研究」総合安全保障研究委員会(委員長:今井隆吉 世界平和研究所理事)
安全保障、グローバル・イシューを中心に議論、国家は強制執行能力ある中心的アクターであるが、政府の役割は変わりつつあり、限界の存在、矛盾の拡大が指摘された。
ii)「グローバリゼーションの中の国際システムとガバナンスの課題」研究委員会(委員長:大芝 亮 一橋大学法学部教授)
グローバリゼーションの進展がもたらす国際経済的な課題と新たな枠組みを検討し、また、理念国家米国とその他多くの脆弱性を有する国・社会に対し、如何なるガバナンス構造を考えるべきかを討議検討した。
2)「アジアの中の日本を考える」研究委員会(継続)
(委員長:白石 隆 京都大学教授)
アジアの「中」の日本との意識で、地域秩序と日本の対アジア戦略を議論、アジア諸国との交流拡大・深化と日本の国内システム変革、その実現への施策に重心を移すべしとの結論を導いた。
3)「アセアンを中心としたアジアの政治・経済システムとそれに立脚した地域協力と日本の対応-ナショナリズムとグローバリズムの調和-」研究委員会(継続)
(委員長:山影 進 東京大学教授)
激変期のアジア諸国の政治・経済・社会システムにつき理解を深め、地域協力のあり方と日本の役割について新たな可能性を探るため、ASEANの地域固有要素と普遍的要素(ナショナリズムとグローバリズム)を整理し、新ASEANの課題を抽出、その行方を展望した。
4)「21世紀の開発戦略」研究委員会(新規)
(委員長:竹内 啓 明治学院大学国際学部教授)
「社会福祉の実態」という観点から東南アジア各国を評価、そのレベル向上の為の援助施策を探り、経済援助目的の「貧困低減」に「社会福祉の向上」要素を加え、新しい視点から議論を展開した。
5)アジア・太平洋の情報化が産業に与えるインパクト研究委員会(新規)
(委員長:公文俊平 国際大学グローバルコミュニケーションセンター所長)
アジア経済危機の影響は大きく、情報化は経済牽引役を果たすに至っていないこと、安い労働力、政治の不安定などアジア特有の要素が原因とも考えられ、アジアの情報化にODA等で日本が貢献できる、と結論を導いた。
(2) 委託調査研究(日本自転車振興会補助事業)
「東南アジアにおける国内政治経済体制の比較研究」
(委託先:財団法人国際貿易投資研究所)
京都大学白石教授をハブに東南アジアネットワークを形成、通貨危機に直面
した東南アジア諸国間での危機対応較差を、各国の政治経済体制から比較・議論した。
(3) 受託調査テ-マ
1) 地球環境問題影響・対応方策検討調査(地球温暖化対応方策検討調査)
(委託元:通商産業省環境立地局)
2) 発展途上国エネルギー消費効率化基礎調査等事業/IPCC等国際会議事業、
CDMワークショップ(発注元:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))
3) 地球環境国際協力事業/気候変動影響評価等事業
(委託元:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))
4) 中国における共同実施活動等推進調査(委託元:新エネルギー・産業技術総合
開発機構(NEDO))
5) 新エネルギー等導入促進基礎調査(委託元:通 商産業省資源エネルギー庁)
6) アジアにおけるエネルギーセキュリティー調査(発注元:石油公団)
7) アジア通貨・経済危機の特徴と危機下の機械産業を中心とした多国籍企業の
企業行動・直接投資に関する調査研究
(委託元:社団法人日本機械工業連合会)
8) アジア諸国の石油製品品質規制動向とその影響に関する調査研究
(委託元:財団法人機械振興協会)
9) 2000年からの次期自由化交渉に向けた貿易政策に関する調査研究
(委託元:財団法人国際経済交流財団)
(4)助成を受けて行う調査研究
1) 中国・郷鎮企業の環境に配慮した持続可能な発展に関する調査研究
(助成元:財団法人イオングループ環境財団)
2) 中国の廃プラスチック資源化普及のための調査・ワークショップ開催
(助成元:環境事業団地球環境基金)
(5) その他の事業
1) 地球環境問題懇談会
地球環境問題に関する会員企業への情報提供と会員企業間の情報交換を目的とし、平成10年度は計4回の懇談会を実施した。参加者は40名~120名であった。
2.共同研究及び協力
(1) 環境と開発に関する中国国際協力委員会
チャイナカウンシル本委員会及びその傘下の作業部会とタスクフォースへ派遣、中国政府に対する政策提言のための調査・研究を行い、中国政府(朱鎔基首相)に対し政策提言報告を行った。
(2) 環境保全と成長の両立を考える研究委員会
気候変動問題に関し、当財団と未来研究所(米国)で、共同研究を実施、主に柔軟性メカニズムについて論点整理、経済モデル分析、経済理論的アプローチ、技術開発・技術移転に関し議論、技術論を主題に「日米の温暖化対策について」公開シンポジウムを開催した。
3.セミナー、シンポジウム、フォーラム等の事業
(1) シンポジウム・セミナー
1) 国際シンポジウム「21世紀の世界秩序-市場、国家と国際社会の役割」
第1テーマ「持続可能な発展と国際社会のあり方」では、中国における環境問題の大きさとその経済的負担を議論、一方温暖化問題には長期的方策の必要性が提起された。 第2テーマ「21世紀への諸課題とグローバル・ガバナンス」では、制度再設計の必要性とその理念が提起され、覇権的構造への牽制意見や、グローバリゼーションの実態と日本の政治決断の必要性が指摘された。
2) CDMワークショップ
(発注元:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))
新エネルギー・産業技術総合開発機構から、「発展途上国エネルギー消費効率化基礎調査等事業」の一環として「IPCC等国際会議事業」を受託、「CDMワークショップ」を開催した。
3) ポストCOP4セミナー
財団法人地球環境戦略研究機関との共催で開催、COP4の概要と評価を政府の交渉担当者などから報告いただいた。
(2) フォーラム
インターネットホームページを開設し、適宜新規情報を追加し内容の充実に務め、効果 的な広報活動を実施した。
4.情報の収集及び提供
地球産業文化に関する情報の収集、分析を実施、併せて、(1) 調査研究報告書等の提供、(2)機関誌「地球研ニュースレター」(和文)及び「GISPRI」(英文)の発行、(3)地球環境問題(企業)懇談会での情報提供、(4)10周年記念誌「十年のあゆみ」の発行、(5)「地球環境
'98-99」の出版、などにより情報提供を行った。
5.地球産業文化委員会の活動
平成10年度委員会を平成10年8月27日(木)に開催、当財団の長期戦略等について意見交換を行った。
III.特別事項
平成10年12月に創立10周年記念事業を行った。
(1) GISPRIシンポジウムの開催
(2) 10周年記念誌「十年のあゆみ」の発行
(3) 「ポスト市場主義経済」の編集・発行
【専務理事・理事の選任】
(就任)
専務理事 安本皓信(国際協力事業団理事)〈7.13付〉
理 事 氏家純一(野村證券(株)取締役社長)〈6.29付〉
理 事 増田信行(三菱重工業(株)取締役会長)〈6.29付〉
理 事 三浦 昭(三菱化学(株)取締役会長)〈6.29付〉
(退任)
理 事 相川賢太郎(三菱重工業(株)前会長)〈6.29付〉
理 事 古川 昌彦(三菱化学(株)前会長)〈6.29付〉
【顧問・参与の推薦】
顧 問 近藤次郎((財)国際科学技術財団理事長)〈7.1付〉
顧 問 向坊 隆((社)日本原子力産業会議会長)〈7.1付〉
参 与 石海行雄(地域整備公団前理事)〈6.29付〉