COP5の期間中、様々なサイドイベント(ミーティング)が行われた。その中で筆者が参加したもので、IPCCに関するもの、そしてアメリカの技術による排出量 削減の試みについてのミーティング内容を報告する。
1.IPCCプレゼンテーション
IPCCの話題としては技術移転や土地利用・吸収源の特別 報告書など、会期中いくつかFCCCに関連するミーティングがあった中で、主に発展途上国の報道関係者用に、現在作成途中である第三次評価報告書の紹介に重点をおいた発表があった(11/1)。ブラジルFilho副議長、米Watson議長、シエラレオネDavidson共同議長からそれぞれ第一、第二、第三作業部会の内容が報告されたが、やや、気候の科学、温暖化による気候変動の影響評価に偏り、適応・緩和策や社会科学的側面 についてはインパクトが少ないものであった。特に、異常気象などの気候変動が温暖化によるものとして危機感を煽るものであったのが残念であった。全般 にはプレゼンテーションを通じ、一般理解を深めたと言えるであろう。また、11/2の全体会議における各NGOからの声明でもWatson議長から現況、特別 報告書の内容報告、SBSTAとの関連や財源確保について発表があった。
2.アメリカの京都議定書削減目標達成のための試算評価
National Environmental Trust (NET)のThomas Natan氏から、技術革新・普及によって京都議定書目標量 の半分以上の削減を可能にする試算が発表された。発電所の効率向上、交通 機関(自動車、航空機)燃費向上、電気自動車・ハイブリッド車利用、照明・冷房の効率向上など扱っている項目はよく見られるもので新規性がないが、計算の基となる技術の数値は現実の産業のデータを収集し利用している点では(米のものでは)あまり例を見ない。つまり、米では原子力新設や炭素隔離、太陽電池の大規模導入をせずとも削減可能ということである。勿論この研究について導入量 の仮定に現実味がない、規制や経済情勢などは考慮していないなど否定的な意見も出ているが、定量 的に概要を把握するものとして十分興味深い結果であった。
3.Business Round Table (BRT)による地球温暖化技術の試み
アメリカの大手数社のトップによる地球温暖化緩和のための技術に関する発表であった。自動車、エネルギー(電力)、化学工業など幅広い発表を聞くことができた。司会はFMC Corporationであり、初めに、Bechtel Groupからは太陽光利用システムについて太陽電池システムと、Power Tower Projectと呼ばれる可動型の反射板により太陽光を一箇所に集積し(=タワー部分:565℃)蒸気発生させ発電するシステムの説明があった。
Dow Chemicalでは自動車、建物、農業部門への新素材開発による温暖化対策を行っており、たとえば自動車では軽量 化のための車体用プラスチック、建物には新しい断熱材(従来のR値の5倍の断熱効果 )などの開発を進めている。Duke Energyは複合発電プラントの推進からコジェネレーション利用、家庭用燃料電池の開発まで高効率発電システムの追求をしているとのことであった。General Motorsは主に水素燃料利用燃料電池自動車の研究を進めており、現在の効率は72%(開放起電力0.9V)、53%(0.6V@1.0A/)であるが、インフラ整備の遅れを考慮しガソリン、メタノール利用も検討しているとのことであった。
どの企業も技術・システム開発での温暖化対策(主にエネルギー効率向上、省エネルギー中心)に熱心であるが、京都議定書については現状では批准に好意的ではないと明確に発言するなど、BRTの発表自体が米国産業界のFCCCに対する抵抗の一つとも見ることができた。
COPの実際の交渉の外は「気候変動関連の文化祭」とも言える様相である。筆者は参加日数とタイミングの関係で多くのミーティングには参加できなく、結局IPCC関連、技術関連に絞ったが、何らかテーマを決めてサイドイベントに臨むのも非常に面 白いと思う。次回ハーグで開催されるCOP6は議定書発効を左右するということから会議そのものが非常に重要な意味を持っている。これは同時に、注目度、参加国・人数・団体からして過去最大級の見ごたえのある「文化祭」もまた開催されると想像できる。
(田中 加奈子)