1998年12号

「アジア・太平洋の情報化が産業に与えるインパクト」 研究委員会発足

国際大学グローバルコミュニケーションセンター所長公文俊平教授を委員長に迎え、「アジア・太平洋の情報化が産業に与えるインパクト」研究委員会を11月より開始した。以下に概要を報告する。


1.研究委員会趣旨

 最近の情報通信産業はソフト・ハードウェア等の技術革新に支えられて著しい進歩をとげている。また、将来的にも高度情報化にむけて飛躍的な発展が予想され、社会的基盤整備の面 でも大いに期待される。ネットワーキングの進歩は地球資源(人、物、金等)の効率化、最適化にも大きな役割を果 たし、グローバル化推進の原動力になる。

 そうした世界的な情報化の流れの中で、日本は、欧米はおろかNIES諸国にも情報化スピードで遅れをとっていると言われている。

 本研究会では、日本の産業(企業)がその流れの中で今までどういう位 置づけにあったのか、今後はどうなっていくのか、あるいはどうすべきなのか、を検討していく。

 アジア諸国は情報産業を先進国に追いつくテクノジャンプの手段ととらえ国策として非常に力を注いでいるが、金融危機発生でその政策に微妙な変化が見られる。

 以上も踏まえ、今回は特にアジア地域に焦点をしぼる。

2.研究テーマ

    (1) アジア・太平洋に拠点を分散しつつある日本企業全般 (特に製造中小企業)の情報利用

    (2) アジア各国の情報基盤政策と日本の情報直接投資の行方

    (3) 日本の電気通信事業者の国際展開

    (4) 情報産業における開発主義(特にアメリカの動向)

3.研究期間

平成10年11月~平成11年6月


4.第一回研究会概要

 公文委員長をはじめ、各委員・オブザーバーから自己紹介を含めて、「アジア・太平洋の情報化と産業」について自由討議していただいた。特に、公文委員長から「新情報通 信システム」と「Y2K(2000年問題)」を研究テーマに加えるべきとの発言があった。

<公文委員長発言要旨>

 1997年の後半以来、少なくともアメリカでは情報通 信革命が第2段階に入り、それが爆発的に進展している。その内容はいろいろ考えられるが、なかでも通 信速度の超高速化があり、あと10年か20年すれば、テラビット級の高速通 信が可能になる。そうなると、各コンピューターが個別にCPUとメモリを持つ必要がなくなり、メーンフレームでもPCでもない「コンピューティングネットワーク」とも言うべき、全ての情報機器がハードウェアも含めた全てを共有し合うネットワーク世界が出現する。このような「新情報通 信システム」世界では、セキュリティーをはじめ、今まででは考えられなかった難問が続出する。

 Y2K問題には、単にプログラムを修正するというだけではなく、ROM化して修正不可能になっている半導体チップのチェックと交換という問題、自分のところは全部直せても、他社から間違ったデータを受け取ってしまうことを防げないという問題がある。

 それら全ての問題を解決することは時間的に既に不可能になっており、軍事・医療・金融・貿易あらゆる分野で深刻な事態が生じることは不可避であるが、どういったことが起こりそうか、起こった後どう対処していくべきか、を研究する必要がある。

5.研究委員会委員(五十音順・敬称略)

<委員長>

公文 俊平 国際大学グローバルコミュニケーションセンター所長

<委 員>

泉田 裕彦 通商産業研究所 主任研究官
小尾 敏夫 文教大学情報学部 教授
北村 かよ子 アジア経済研究所 経済協力研究部主任研究員
佐賀 健二 亜細亜大学 国際関係学部 教授
前田 充浩 政策研究大学院大学 助教授
三上 喜貴 長岡技術科学大学 計画%経営系 教授
山内 康英 国際大学 グローバルコミュニケーションセンター教授

<オブザーバー>

佐々木 修一 塩ビ工業・環境協会 専務理事
鈴木 淳弘 国際大学 グローバルコミュニケーションセンター主任研究員
中山 浩一 NEC 海外企画部 グループマネージャー
若松 勇 JETRO アジア大洋州課 課長代理
綿貫 健治 SONY渉外部門 国際渉外部 統括部長

(文責 事務局)

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