今回は従来とは少し視点を変えて、損害保険業界が地球環境問題をどう見ているのかという視点から、話題を少し提供したい。
地球環境問題について損害保険業界は、企業の社会的責任という観点からはもちろんのこと、地球温暖化による気候変動と自然災害の発生という因果 関係から、保険業界に非常に重要な影響を与える問題と捉えている。近年、世界各地で異常気象による自然災害が多発しており、米国の度重なるハリケーンによる被害、1993年、1995年のヨーロッパの冬期の洪水などがその代表的事例として挙げられる。また、それから発生する損害保険金額が急増していることが損保業界を悩ましている。ちなみに日本でも、1991年に本土を襲った台風19号の被害による損害保険の支払いは7000億円に達した。
また、環境汚染のリスクに対応する保険制度があるが、米国等では環境関連の法律の運用如何によっては、何兆円、何十兆円の負債が発生する可能性があると見られている。
このような状況から、欧州の大手保険会社を中心にして、UNEP(国連環境計画)の支援の下に「保険業界の環境声明」を作成する動きが急浮上してきている。その要旨としては、(1)保険業界も環境問題の解決に貢献する、(2)持続可能な発展の一般 原則を承認した上で経済的手法の利用に賛同する、(3)経営全般において環境を配慮する、顧客や取り引き先がこれらの規則を遵守することを支援する、(4)環境問題に関して関係者と情報を共有する等となっている。この動きは、今後世界の保険会社に広がると思われる。
このような流れを受けて、同社も長年業務の中に培った、統計的ノウハウ、技術的リスクマネジメント、防災ノウハウなどの損保が持つ経営資源を用いて地球環境問題に貢献していくことを目指している。また、身近な問題として紙の減量 (ここ4年間でコストベースで25%の削減)、省エネルギー(自然換気による省エネ、中水の利用)なども積極的に進めている。