IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change: 気候変動に関する政府間パネル)では、既報のように、本年12月の完成に向けて「第二次評価報告書」の作成に取り組んでいるが、原稿の有識者レヴューが終了したのを機に題記会議が開催された。
日 時 1995年1月9日 (月) ~13日 (金)
場 所 スイス・ジュネーヴ中央国際会議場
参加者
B.ボーリンIPCC議長、R.ワトソン、M.ジニョウェラWG2両共同議長、各サブグループ共同議長、各章統括執筆者など約100 名。日本からは、通商産業省塚本弘大臣官房審議官 (ザブグループA共同議長)、東京大学石谷久教授、東京農工大学柏木孝夫教授、国立環境研究所安藤満主任研究員、桜美林大学大喜多敏一教授、GISPRI課長津坂秩也が出席
概 要
本作業部会では、1993年9月に代表執筆者を選任後、400 人が「第二次評価報告書」の執筆に取り組んでいる。今回の会合は、報告書の有識者レヴューが終了し、政府レヴューに向けて再執筆を行うにあたって、内容の統一を図ることなどを目的として開催された。
前半の3日間は全体会合と3つの分野別 会合が開催され、各章の概要、レヴュー・コメントの概要、統括執筆者による他章への批評などにより内容の重複・欠落の調整が行われたのち、報告書の主部分である「政策立案者向け要約」に織り込むべき内容について提案・意見調整が行われた。
後半の2日間は、一部の執筆チームのチーム会合と並行して、第2作業部会ビューロー・メンバー(共同議長、共同副議長)、そのサポート・チーム(ザブグループAについては通 商産業省地球環境対策室および当研究所地球環境対策部)、一部のエキスパートにより「政策立案者向け要約」の執筆チームが構成され、原稿案文の作成が行われた。
会議以降のIPCC第2作業部会の主な日程は以下のとおり。
1~2月 各章原稿の再執筆
「政策立案者向け要約」の査読・再執筆
3~4月 原稿の政府レヴュー
6月5~9日 第3回代表執筆者会議
10月16~20日 第2作業部会総会
12月11~15日 第11回IPCC総会
INC気候変動に関する国際連合枠組条約交渉委員会:Intergovernmental Negotiating Committee for a Framework Convention on Climate Change) は、1991年以降過去10回の会合を重ねてきたが、1993年12月に同条約の批准国が50か国を越え1994年3月に発効したことにより、第1回(本年3~4月)の同条約締約国会議(COP:Conference for the Parties / FCCC)以降は交渉の場がそちらに移るため、今回開催された第11回会合が最終回となる。
日 時 1995年2月6日 (月) ~17日 (金)
場 所 アメリカ合衆国・ニューヨーク・国連本部
参加者
エストラーダINC議長はじめビューロー・メンバー、148 か国、21国際組織、73NGOなど合計約1000名。
日本からは赤尾大使を首席とする代表団体13名 (外務省、通産省、環境庁、運輸省、気象庁、ニューヨーク国連代表部、ジュネーヴ国連代表部) ならびに当研究所を含む5NGOから5名の18名が参加。
議 題
全体:
第1回COP(COP1)の準備(議題を含む)、条約締約状況、COP事務局について、COPの運営要綱、議事録の採択
WG1:
各国の第1回通 報のレヴュー、通報の方法、補助機関の役割、各国の削減目標および国別 報告の妥当性、緩和策の共同実施
WG2:
資金供与の制度、GEFの暫定措置、途上国への技術・資金協力
概 要
今回の会議は2か月後にCOP1をひかえ、どこまで合意ができるかという点で事前から関係者の注目を集めており、参加者もこれまでに比べて多かった。
とくに、COP1のホスト国であるドイツをはじめとするEU諸国、環境技術力を活かしイニシアティヴを発揮したい日本、世界におけるリーダーシップを維持したいアメリカ合衆国などの先進諸国は、事態の進展に向けて積極的に意思表示を行った。
それらの背景から今回の会議では、白熱した議論が繰り返され、議事録の採択に向けて連日早朝から深夜まで話し合いが行われたが、今後の新たな目標の設定や対策の実施については意見の合意に至らず、締約国会議への先送りとならざるをえなかった。
先送りとなった主な内容は以下のとおり。
各国の削減目標および国別 報告の妥当性については、ドイツならびに島嶼国グループから議定書の策定に関するステートメントがなされたものの、産油国の強硬な反対により、前進的な表現は一切削除された。
緩和策の共同実施については、今回の会議では途上国が「現条約の緩和策の実施は先進国のみに課せられたもの」というスタンスで一致団結し、白熱した議論が行われたものの、結果 として意見の合意を得ず、各国の削減目標および国別報告の妥当性とともにCOP1に持ち越した。
なお、COP1の状況については、次号以降で報告させていただく予定である。