蓄電池でまず我々が思い浮かぶのが自動車のバッテリーである。これは鉛蓄電池と呼ばれる。一方、我々の生活の周囲にもこの蓄電池がいっぱい入り込んでいる。これらはニッケルカドミウム電池と呼ばれ、略してニカド電池といわれている。乾電池が一次電池といわれ一度放電を終えれば使用済みになるのに対して、この電池は充電して何度も使えるため二次電池といわれている。近年このニカド電池の伸びが著しい。この原因は用途が従来に較べて広がったためであるが、その伸びの御三家がビデオカメラ、パソコン・ワープロ等の情報機器、携帯電話である。資源が有限であることを考えれば、繰り返し使えることは省資源につながる。しかし、この電池もいつかは寿命がくる。(一般 機器で3~5年程度、情報機器のバックアップ電源用はもっと短命である。)その際、機器に当初から内蔵されているが故に、機器を廃棄するときに回収すべき電池があるという意識は一般 的に低い。また、形状、用途が乾電池とよく似たものもあり、一般の人には乾電池と区別 できないといった問題もある。リサイクル法でも回収が義務づけられているが、現状の回収率は20%程度と低い状態にある。(7~8年前のものが現在捨てられたという条件でまた、この電池は直接輸出で50%程度、製品に組み込まれる物まで含めると輸出比率は80%近くになり、生産量 に対して国内に残るものは以外と少ない。)
回収ルートは大きく二つに別 れ、民生用は主に電気店である。業務用についてはリサイクルメーカー4社に直接送る方式を取っている。この場合には、リサイクルメーカー側から送り主にkg当り50円のリサイクル助成金を支払う仕組みになっている。リサイクルメーカーでは、使用済みの電池を熱処理してカドミウムと鉄とニッケルの化合物であるフェロニッケルを取り出す。そこからカドミウムは70%程度が電池に再利用される。フェロニッケルはステンレス鋼の原料となる。しかし、再生されたものも基本的には市況商品であり、再生コストとバージンコストとの間で競争原理が働く。現状は市況が再生コストに見合わないため、その不足分を蓄電池メーカーが負担している。回収率が40%~50%になった場合、今の負担の仕組みが妥当かどうか問題となる可能性がある。
日本蓄電池工業会としては、2000年に40%以上の回収率を目指している。その方策としては、(1)電池、電池内蔵機器に蓄電池であることを表示する、(2)内蔵機器からの取り外しを容易にする、(3)回収ルートの充実、(4)自治体や量 販店等への広報活動の徹底を図ることを挙げている。
話を聞いて感じたことは、一つの素材をとってもリサイクルは大変であるということである。また、生産についても最終製品として送り出されるまでに、原料から部品までいろいろな会社が関係しており、どこがリサイクルのコストを負担すべきかという問題が今後議論を呼ぶように思われる。そこには、単位 当り10円の素材を売る会社と100円の最終製品を売る会社のどちらに1円の環境コストを負担する能力があるかという問題がある。リサイクルのコストについても、産業の連関の中で付加価値税のような仕組みが必要である。また、リサイクルの仕組みを一般 に周知するにも多大な費用がかかる。このようなものについては、情報を伝える媒体の側にもディスカウント料金を適用するといった仕組みも必要ではないかと思う。