2004年4号

アジア循環ネットワークの構築に関する調査研究委員会

1.背景と研究の目的

 我が国は従来から循環型社会の形成に向けた施策を推進してきた。国内ではゼロエミッションの概念も誕生し、資源有効利用促進法等法律が整備され、家電・ペットボトル等各品目におけるリサイクルが進展している。この結果、日本の静脈産業のレベルは世界最高水準にあるといわれている。

 しかし、生産拠点の海外シフトや製品・半製品形態での輸入の増加及び国内での資源回収・リサイクルの進展に伴って、一部の品目については再生資源の需給ギャップが発生している。また、海外へ進出した我が国企業が、海外生産拠点においてグリーン調達やゼロエミッション等の環境マネジメントの高度化を果たす上で、有害廃棄物の適正処理の義務づけ等のリサイクル法規制やリサイクル業者・公的処理施設の未整備等現地インフラの不足等の問題が顕在化しつつある。

 アジア諸国も我が国の成功モデルに習い、地域循環型社会構築の検討を始めている。豊かな環境を守りつつ、資源をムダなく活用し、アジア圏全体での新たな制度やルールの下に、広範な分野で市場と雇用の拡大を実現するビジョンとそれを達成するための戦略を構築する時機を迎えている。韓国・台湾では、廃棄物処理及びリサイクルの法制度が整備され、リサイクル比率も高くなってきている。中国やシンガポール、タイでは廃棄物処理・処分場の整備と廃棄物処理・リサイクル法制度の整備が始まっている。マレーシア、インドネシア、フィリピンでは単純埋立(野積)が中心で衛生的な処分体制の構築が必要である。このように各国の取組に差があり、各国間における技術・情報の発信・交換が十分でなく、ニーズが的確に把握されていないため、技術・情報の共有による取組の効率化が課題である。

 日本国内から発生する再生資源に関して言えば、すでに古紙・廃プラスチック・鉄くずなどは国内の枠を越えて、中国など東アジア諸国等に輸出されている。現行では、資源輸出の際、処理が適正でない場合や問題が生じた場合の説明責任等のリスク分散のため、国内の排出業者は中間業者を介して輸出しており、リサイクルルートに透明性が欠ける面があり、再生資源の品質の均一化が課題である。また、資源輸入国において必要資源の回収後の残渣が処理業者により違法に放置されるなどの問題が生じており、適正処理による環境負荷の低減も課題となっている。

 我が国回収資源の輸出は、国内再生資源の需給ギャップの解消、リサイクル費用の低減、国内回収率の向上、途上国が使用する原材料不足の解決などの多くのメリットがある。また海外進出日系企業の環境マネジメントの高度化に対する支援が必要である。さらに日本から輸出した再生資源を利用可能な形態に処理して輸入することや、途上国の技術では適正処理が困難な部材を国内の環境インフラを利用して処理することも考えられる。このため、本研究委員会においてはバーゼル条約の遵守を前提とし、海外での不適正処理の温床とならないよう注意しつつ、国内リサイクル施策とのバランスに留意しながら、①各国の廃棄物関連法規制・技術・ニーズに関する情報共有化と役割分担のあり方、②国境を越えた物質循環の適正管理手法、③日系静脈産業発展のスキームづくり、④あり方 などを検討し、東アジアでの物質循環を踏まえた循環モデルの提言を目指す。


2.委員会の構成

 細田衛士慶應義塾大学経済学部長を委員長に廃棄物・リサイクルの研究者・企業関係者10名程度の方々に委員にご就任いただく予定。また必要に応じて政府関係者・研究者・企業関係者等を講師として招聘する。オブザーバーとして経済産業省リサイクル推進課の方にご参加いただく。


3.進め方

 委員・オブザーバーによる研究委員会を組織する。04年9月より05年3月まで延べ6回程度委員会を開催し、検討結果に基づき、報告書を作成する。なお本研究は産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会に04年6月より設置されている国際資源循環ワーキンググループと連携して進めていく。

(委員会事務局:阿部 秀樹)

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