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1999年4月号

REPORT

「アジアの中の日本を考える」研究委員会、
報告書完成引き続き、第2次委員会発足 


京都大学東南アジア研究センター教授、白石隆先生を委員長に進めてきた標記委員会の報告書がこのほど完成した。また同委員会はこの3月より、新委員を加えて「第2次アジアの中の日本を考える」研究委員会を発足させ、アジアと日本の関係を長期的な視点で研究していくこととしている。


(1) 研究委員会報告書、序より 

  今、アジアは転換期にある。97年7月に始まったタイの通 貨危機は瞬く間に近隣諸国に飛び火して、金融危機、実体経済を巻き込んだ経済危機、国によっては社会・政治危機をも引き起こした。またアジア発の危機はロシア、ブラジルへと世界規模に広がる様相を見せている。 

  一方、アジア全体のGDPの4分の3を占める日本では未だに政治的、経済的停滞の長く、暗いトンネルの出口探しに苦しんでいる。こういった状況の中でアジアの危機をめぐっての様々な論議が展開された。いわくアジアのクローニー資本主義が瓦解した、市場制度の曖昧さが危機の原因だった、急激な国際資本移動こそアジア危機の本質であった、IMF、世銀の対処法が間違っている等々。さらには資本主義という動物にはインフレ、デフレを交互におこす遺伝子が組み込まれている。経済はあるサイクルのもとに波動を繰り返す。事実、アジア経済は着実に危機を克服しつつあるとも言う。アジアをめぐる議論はとどまるところを知らない。 

  しかしながら、このまさにこの混迷の時に当たってジェフリー・パラグラフが『現代史序説』の冒頭で述べた至言を想起する必要があるのではないか。 

  「さまざまの出来事の経過をただ叙述するだけでは、たとえそれらの出来事が世界的規模のものであっても、それによって今日の世界を動かす諸力の理解が深まることにはならない。諸々の出来事の根底にある構造変化を認識することが不可欠であり、そのために何よりも求められるのは、認識の新しい枠組みなのだ。」 

  これまでのアジアと日本の関係はまさに「アジアと日本」であって「アジアの中の日本」という思考は一部を除いて日本にはなかった。東西冷戦体制が崩れ、EUがその理想に向けて大きな一歩を踏み出した今、アジアの地域秩序とそこにおける日本のあり方、日本の対アジア戦略は21世紀の日本の存在基盤を考える上で益々、重要となってきている。 

  本委員会では「アジアの中の日本」という枠組設定のもとに、産学官の有識者が一堂に会し、様々な角度から真摯な議論を展開した。そして各人各様のアジアへの熱い思いが凝集し、その成果 をこのたび報告書としてまとめることができた。昨今のアジア危機に関する表面 的事象の叙述に飽き足らず、時間軸を超えて、真摯に日本の国益とは何かを問い、アジアの新たな興隆と共生を願う人々にとって本報告書がいくらかでも裨益することを期待し、且つ信じるものである。 

  最後に本研究委員会設置以来、多大のご尽力をいただいた白石委員長はじめ、委員各位 並びに講師の方々に深く感謝の意を表したい。

(2) 委員並びに講師委員長    

委員長 白石 隆 京都大学東南アジア研究センター教授
委 員 原 洋之介 東京大学教授 東洋分化研究所所長
委 員 後藤 俊夫 (財)国民経済研究協会 常任理事研究企画部長
委 員 土居 征夫 日本電気株式会社 取締役
委 員 小池 洋次 日本経済新聞社 国際部長
委 員 菅野 真一郎 日中投資促進機構 事務局長
委 員 深川 由紀子 青山学院大学 経済学部助教授
委 員 鈴木 崇弘 国際研究奨学財団 研究事業部長代行
委 員 篠原 興 (財)国際通貨研究所 専務理事
委 員 松島 茂 通商産業省工業技術院 技術審議官
5L^;^0J^0 細谷 裕二 通商産業研究所 研究主幹
講 師 神川 良一 三井物産株式会社 プロジェクト開発部長
講 師 関 成孝 通商産業省通商政策局経済協力部
  アジア太平洋地域協力推進室長
講 師 原 嘉夫 日本インドネシア化学フォーラム 
  日本委員会事務局長
講 師 増田 達弘 (財)横浜・神奈川総合情報センター
  中小企業地域情報センター長
講 師 黒田 彰一 黒田精工株式会社 会長
講 師 松本 厚治 (財)産業研究所国際経済研究センター所長

(順不同、役職名は1999年1月現在のものです。)


(3) 「アジアの中の日本を考える」研究委員会報告書目次

1.アジアの中の日本

アジアの中の日本 ・・・・・・・・・ 白石委員長
日本のアジアにおける位 置  ・・・・ 小池委員


2.アジアの金融危機と日本の役割

“アジア通貨基金”に向けて ・・・・・・・・・・・・・・・ 篠原委員
アジア通貨基金の構想・日本の役割 ・・・・・・・・・・・ 原委員


3.アジアのネットワーキング

ポリシーネットワーキングAPECの場合 ・・・・・・・・・ 関講師
アジアのシンクタンク ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 鈴木委員
アジアと日本の知的連携・協力について   ・・・・・・・・・・ 土居委員
留学生問題と人材育成   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 原委員


4.アジアにおける技術移転、日本のアジア化

産業団体活動と「アジアの中の日本」 ・・・・・・・ 後藤委員
日僑型企業のアジア展開   ・・・・・・・・・・・・・・ 増田講師
金型からみた日本とアジア製造業の将来 ・・・・・・ 黒田講師
アジア・開発プロジェクトにおけるリスク管理 ・・・ 神川講師


5.東南アジアと東アジア

日韓経済関係の現実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 松本講師
日本のアジア経済危機対応と韓国  ・・・・・・・・・・・ 深川委員
対中投資に於ける日本の役割 ・・・・・・・・・・・・・ 菅野委員



報告書は関係先にはすでに送付されていますが、残部が少々ございますので送付ご希望の方は担当の竹林(Tel. 03-5563-8800)           
(E-mail :
takebayashi@gispri.or.jp)までご連絡下さい。