第4回 エヴィアングループミーティング参加報告
2月19〜21日にスイス・ローザンヌで開催されたエヴィアングループミーティングに参加したので報告する。アジア・ヨーロッパを中心に約90名が参加し、東アジア経済危機後の世界貿易体制、WTOの次期交渉ラウンド等について活発な議論が行われた。
1.エヴィアングループミーティング
ポストウルグアイラウンド時代における貿易と投資に関する国際秩序についてアジア・ヨーロッパ間で討議する会議体が必要であるとの認識から、故清木克男氏(当時、弊財団専務理事)とJean-Pierre
Lehmann氏(当時、欧州日本研究所EIJS理事)が発起人となって、1995年に、エヴィアングループミーティングは発足され、その後、ほぼ年1回のペースで開催されている。メンバーは、主にアジアとヨーロッパの研究機関%政府%企業%マスコミ%国際機関(WTO%EC等)の関係者で構成されている。自由貿易・外国直接投資の活発化とグローバル化、保護主義の抑制を基本理念としており、WTOの次期交渉ラウンドに影響を与えること、世界経済において比較的結びつきが弱いアジア・ヨーロッパ間の関係を強化することを目的としている。
エヴィアングループミーティングは、その目的から、WTO本部のあるジュネーブの近郊で開かれる。第1回と第2回はジュネーブから約40キロのエヴィアン(フランス)で開かれ、第3回および今回はローザンヌ(スイス)で開催されたが、世界有数の水源地として有名であり、またどの国の人にとっても発音しやすい「エヴィアン」をそのままこの会議の名称として使いつづけることになった。
2.第4回エヴィアングループミーティング
開 催 日:1999年2月19〜21日
場 所:スイス、ローザンヌ、ボー・リヴァージュ・パレス
後 援:スイス%アジア財団、スイス連邦政府、EC、ネスレ(株)、
(財)地球産業文化研究所
参加者構成:ヨーロッパ約45名、アジア約25名(内日本10名)、
北米その他約15名
第4回エヴィアングループミーティングのメインテーマは「東アジア危機のグローバル化:貿易と投資およびWTO交渉議題についての示唆」となっており、東南アジアの経済危機やアメリカの貿易赤字の拡大を背景に台頭しつつある保護主義に警鐘をならし、WTOの次期自由化交渉ラウンドの方向づけを行なうことを目的としている。
今回は総参加者数約85名と過去3回(約45名)と比べてかなり大きな会議となっており、アジア・ヨーロッパ以外からも広く参加者が集まった。議長は前回と同じく日本貿易振興会(JETRO)の畠山理事長が務められた。主なスピーカーは、
Helmut Maucher(ネスレ会長)
Soogil Young(韓国OECD大使)
Rita Hayes(アメリカ合衆国WTO大使)
Supachai Panitchpakdi(タイ副首相)
などである。日本からは畠山議長の他、
福川伸次氏(電通総研社長)
斎藤潤氏(経済企画庁物価局物価調整課長)
荒木一郎氏(通商産業省公正貿易推進室長)
などが参加した。
3.プログラム概要
《2月19日》
〔ランチセッション〕
Freedom and Rules in Global Markets
Mr. Helmut Maucherネスレ会長
〔セッション1〕
Preparations for further WTO Negotiations
〔セッション2〕
Lessons of East Asian Crisis
〔ディナーセッション〕
Towards a new Model of Development in Asia:
Korean Perspectives
H.E. Dr. Soogil Young 韓国OECD大使
《2月20日》
〔セッション3〕
Implications of the East Asian Crisis on Rulesand Reforms
〔ランチセッション〕
Globalization of the East Asian Crisis: Implications forTrade &
Investment, the WTO Agenda and the World Economic Order
H.E. Rita Hayes アメリカ合衆国WTO大使
〔セッション4〕
Emerging Market Reforms & Further WTO Negotiations
〔ディナーセッション〕
Impact of the East Asian Crisis on the Global Trade Agenda
Supachai Panitchpakdi タイ副首相
《2月21日》
〔セッション5〕
Implications of the Financial Crisis on Leading Market Economies
〔セッション6〕
A Competition Oriented Approach to Further WTO Negotiations
〔The Evian Group Agenda〕
〔Chairman’s Concluding Remarks〕
4.主な発表内容と感想
◆過去において東南アジアに繁栄をもたらしたのも、また現在危機をもたらしているのも、海外からの巨額の資本流入である。この危機を克服し、アジア経済を活性化させるためにはIMFや他国からの公的資金援助に加えて、民間資金の流入が重要である。それには市場開放が前提となる。
◆市場開放している国と旧共産圏のように市場を閉鎖している国の現状を比較すれば、今回のような経済危機があったことを考えても、市場開放が国家の繁栄に役立つことは明らかである。市場自由化の推進によって我々が新たな挑戦に直面
しているとすれば、それは我々が失敗したからではなく、我々が予想以上に成功しすぎたからである。
◆情報産業、電子商取引、知的財産、農業、サービス等が次期交渉ラウンドの重点議題である。
◆中国がWTOに加盟するためにやらねばならぬことは多いが、その時期は到来している。
◆市場自由化にはそれぞれの国の発展段階に応じた適度な速度がある。発展途上国にとっては、先進国と全く同じ速度での自由化は好ましくない。
◆アジアの国々にとっては、円高の状態で日本が景気回復して、アジアから日本への輸入が増えることが望ましいが、日本にとっては円高で景気回復することは難しい。
◆アジアの国々の日本の景気回復に対する期待は大きい。それだけ日本に対する要求も大きい。
◆米欧ではM&Aや海外直接投資などによる企業のグローバル化の進展が著しいが、日本を含めたアジアの企業のグローバル化はまだ進んでいない。
5.エヴィアングループWeb Site
http://www.eviangroup.org/
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