|
|
ニュースレター
|
|
2000年7月号 |
||||||||||
PAPER | ||||||||||
説明: 企業A, Bに排出規制が課せられた場合、企業Aの削減コストを5,000円/トン、国家Bの削減コスを15,000円/トン、排出権価格を10,000円/トンと仮定すると、取引によって各企業 は5,000円/トンづつ利益を得ることになる(排出権価格は両者の交渉によって決定される)。 第二に、キャップ・アンド・トレード型排出権取引制度は、コマンド・アンド・コントロール型の規制や補助金とは異なり、広い範囲の排出源に総量 規制をかけることを可能にする。排出権取引制度が広い範囲をカバーすることによって、従来型規制等でカバーできない低コスト排出削減オプションが、各企業の自主的判断によって、市場に現れる(実施される)ことになる。その結果 、より低いコストで、総排出枠が担保されることになるはずである。
出所:EPA 4.4. SO2排出権取引市場における企業戦略 また、規制された企業側が制度のメリットを把握し、的確な行動をとったことも、このプログラムが成功している大きな要因であると考えられる。すなわち、規制される企業が排出権市場をどのように活用するのか、という点ム電力会社が規制に対してどのように行動したのかも重要である。 第一に、キャップ・アンド・トレードでは、総量規制はされるものの、排出削減の達成手段は、各電力会社が自由に選ぶことができた。それに加え、上記で述べたように、SO2排出削減プログラムおよび取引市場が整っていたため、排出削減オプションは多様化した。例えば、脱硫装置の設置、発電効率の改善、電源運用、燃料転換、電力取引、排出権取引などである。また、電力取引および排出権取引においては、金融市場の技術(デリバティブ市場)も応用可能であり、企業はリスク管理も行うことができた。このように、企業は自らが望む遵守方法で、適格な排出削減オプション・ポートフォリオを組むことができたのである。 第二に、多くの電力会社では、あらゆる知識を集結して、目標遵守の計画を立てていた。汚染防止に関するコスト最小化のためには、多くの要素[12]を考慮する必要があり、それらの専門的な知識を組み合わせるという目的で、全社におよぶ部門間協力チームを作った企業もあった。例えば、米国中部大西洋地域の大手電力会社であるポトマック電力(Pepco)は、発電部門、技術部門、電力販売、経営企画、燃料調達、環境管理、排出権取引業務などの部門から人材を集めて遵守計画の立案にあたっていた。 このような確固たる制度と流動的な市場の存在の下、企業の適格な行動により、米国におけるSO2排出削減目標は遵守され、なおかつ、排出削減費用の低減も達成されたのである。酸性雨プログラムを通 じて環境を保護する費用は、当初予定されていた40〜80億ドルをはるかに下回る10億ドルと、経済に与える影響は小さかった[13]。 [脚注]
|
||||||||||
|
|