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ニュースレター
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2000年10月号 |
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CONFERENCE | ||
第13回補助機関会合第1部(SB13 part1)概要
リヨンと会場
よってCOP5では議論の進展を確保するため、COP6までに補助機関会合を2回一週間ずつ開催し、それぞれの前一週間に非公式会合を行うことが決定した。今年8月には、会合のナンバーリングをする上で「最も実用的な方法」として、COP6のもとで同時に開催予定の次回SBを今回の続き(SB13 part1)とすることを含めたagendaがリリースされた。よって今回は“SB13 part1”[1]ということになったが、いずれにしろCOP6前の最後の公式会合である。京都議定書早期発効を第一に掲げる日本としては、COP6で日本を含め各国が批准可能となるための(必ずしも必要でない項目は後回しにし)最低限必要な合意をなんとか優先的に実現していくことに主眼をおいている。 よって今回は強力な「ネゴシエーション」の段階に入り、COP6合意のドラフトテキストが練り上げられていくことが期待されていた。いよいよ個々の細かい技術的ルールに関して、一つ一つ国内で批准可能になるような合意をしていく傾向が会議全面 にでてきた感がある。 参加者は昨年のSB10(約1,346名)、今年6月のSB12(約1,674名)今回(約2,036名)と増加基調にある。特に報道関係者が2.5倍に増えているが、開会においてジョスパン首相の挨拶があったためと思われる。また、通 常条約事務局所在地ボンで開催される補助機関会合が、わざわざリヨンに誘致され、ジョスパン首相が挨拶するということ自体が、この会合の重要な位 置づけを表しているとも言える。 成果や如何に? 総じて期待されたほど進んでいないという議長の悲観的見解もあるなど、表向きの京都メカニズムの議論が停滞したように、手放しに喜べる状態では無いことは確かだろう。COP6まで8週間ということを考えると、依然として厳しい状況である。しかし遵守制度や5,7,8条ガイドラインをはじめとして、技術的内容に関してそれなりの進展がみられ、具体的な制度が見えて来つつあるともいえる。各テキストは対立点や括弧 書きが多く残っているものの、メカニズムを除けばそれなりに進展しているものも多い。 この時期になると当然ではあるが、水面下の根回しが大きな比重を占めてきており、頻繁にEUやアンブレラGその他のクローズド会合が開かれていた。このために、事実上見通 しが立ったと思われるものもあり、今後どこまで水面下で調整ができるかにかかってきている。後は政治レベルの判断がどう転ぶかに左右されるだろう。まず10月4,5日に非公式閣僚会合が予定されている。 COP5議長に、交渉プロセスを強化するため必要なあらゆる措置をとることを要請する、等のCOP5決定1にもとづいて、どのような具体的措置がとられるかは未だ不明である。但しシシュコCOP5議長とプロンクCOP6議長はよく連絡を取り合っている様子。 途上国動向 前回SB12では、途上国が一枚岩となり、4条8,9項(途上国への悪影響への対処)問題等の遅れから、メカニズムの議論を妨害するなどの騒ぎがあったが、今回はLDC(最貧国)の独自の発言が目立ち、AOSIS(小島嶼国)をはじめとして途上国内での主張の分離が再び見え始め、一枚岩となった行動はなかった。決定が近くなると、やはり各立場の違いが表面 化してくるため、いつまでも共同歩調をとってはいられないようである。 とはいうものの、主張するところでは各途上国のかなり強固な口振りが目立ち、意見が一致するところでは途上国のサポート発言が相次ぎ、会議の時間をかなり使ってしまっているように見えた。 ちなみに、G77&中国の顔として交渉の場で長年活躍し続けた中国のZhong教授の逝去を悼み、開会において参加者全員によって黙祷が捧げられた。 新たな交渉グループ スイスとメキシコ・韓国の3国(アンブレラには入っていないがJUSSCANNZには入っている)は新たに “Environmental Integrity Group”を結成した。真の目的はCOP決定段階で交渉に加われるようにするためとの見方がある。LDC(最貧国)も新たな交渉グループと言える。 京都メカニズム 当初の議長テキスト(FCCC/SB/2000/4)をどこまで絞り込んで薄くできるかが焦点であったが、絞られるどころか実際には終盤に各交渉グループから新しいコメントが提出され更にテキストは膨れ、未だにCOP6決定ドラフトの姿は見えにくい[2]。相変わらずインドはnature and scope(性質と範囲;そもそも論)に固執し、今回はいよいよこれを含めて議論することとなった。予想通 り議論は進まず、一度最後までテキストを通して読み合わせただけで会期を使い果 たし、結論はその160頁に達してしまったテキストをpartUに送り検討する、というだけで終わった。 しかしEU・アンブレラ間で、盛んに水面下で会合が行われ、また追加提案が各交渉G間で近づいた内容になってきており、歩み寄りはそれなりに行われている模様。今後の水面 下の動きで政治決着[3]以外の部分を、特にEU・アンブレラ間でどこまで詰められるかがポイントである。なお10月16日〜18日にデリーにて非公式協議を開催予定。 遵守制度 遵守制度の設計が議論されており、実際の「組織」・「(遵守判定等の)手続き」・「(不遵守の)結果 (措置)」について具体的な検討がなされ、組織と手続きにおいて概ねの合意を得、遵守制度の姿がいよいよ見えてきた。概ね合意したのは、COP/MOPによって選ばれる遵守委員会(Compliance Committee)なる組織がつくられ、それはFacilitative branch(遵守促進をアドバイスする)とEnforcement branch(不遵守という法的判断を下す)の2つのブランチを通してその役目を果 たすということなど。実は上記内容は非公式会合でだされた豪・加・EU・日本・NZ・米の合同提案文書内容がそのまま反映されている形であり、日本も、もはや従来の主張である遵守促進だけではなく、何らかのEnforcementと名の付くものはいれざるを得ないと妥協したと考えられる。法的拘束力のある結果 に反対しているのは日・豪・露のみであるが、不遵守の疑いが提出されたときにはまずFacilitative branchを通す、あるいはEnforcement branchが勧告といった促進的結果を課すこともありうるとするなどの提案を展開している。他の「結果 」として不遵守の公表(豪)・次期からの超過トン数の罰則付差し引き(米)・遵守行動計画(EU)(米)・京都メカニズム使用の制限(日米等)・遵守基金(EU等)・罰金(途上国)・議定書上の権利の一時停止(日等)などがオプションとしてあがっており、いくつかの項目は以前より内容が具体化されている。 なお議定書18条修正問題がらみで、遵守制度の採択の方式として現在4つのoptionがあがっている。 途上国は差異ある責任を盾に、「結果」の適用は附属書T国のみで、判定対象には3条14項も加えよと主張。しかし遵守制度に関しては、先進国間で水面 下でその他の具体的内容が合意されさえすれば、大筋は定まるものと推察される。今回全く絞り込みはなされなかった上記「結果 」の議論を中心に10月12日〜14日にデリーにて非公式協議開催の見通しである。 土地利用・土地利用変化及び林業(LULUCF;sink) 日本は3.3条についてFAO活動ベースにより計算したデータを提出したが、案の定この方法を採用したのは日本のみ。3.4条では、天然林も日本の場合伐採禁止などにより人為的活動がなされていると解釈できるとして、天然林を含めたケースと育成林のみで計算した2ケースを提出したが、天然林の解釈は日本が期待するように解釈される状況にない。よって日本は孤立した状況にあり、当初の日本の吸収源による目標値達成は名実共に相当困難になったといえるだろう。 (中西秀高) 1.議事終了時にはアッシュ議長が「11月まで本会合をsuspendする。」と、ぼそっと宣言、あっけなく終わったことからも実感できる。 →本文に戻る 2.サウジやインドは、締約国によるいずれの提案も無視されてはならないと強く主張している。 →本文に戻る 3.supplementarity(補完性;即ちメカニズム使用の上限問題)等はCOP6の土壇場で政治決着するとの見方が先進国間で共有されている様子。 →本文に戻る |
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