|
|
ニュースレター
|
|
2000年12月号 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
CONFERENCE | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
国連気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)随想
デン・ハーグと会場 京都で行われたCOP3以降、最大のイベントともいえるCOP6は、かねてより開催国としてオランダが名乗りを上げ、デン・ハーグが会場として決定していた。オランダといえば国土の4分の1は水面 下であり、温暖化の被害がすぐに連想されるばかりでなく、平地が多く自転車レーンや公共交通 機関が充実し、プロジェクトベースの排出削減ユニットの取得促進スキームを考えるなど、政策面 において話題にのぼることも多い。 デン・ハーグは人口50万規模程度のオランダ第3の都市であるが、国の政治の中心地として国会議事堂や各省庁、各国大使館が集中し、女王の宮殿があることでも有名である。 会場には、中心部(写真1)から2〜3km離れたオランダ国際会議場(写 真2)が使用された。メイン・サブのホールに加え、その他多くの会議室や、付属展示ホールを利用したプレス用スペース、各国代表団ブース、事務局作業ブースの設置など、かなりの広さを擁していた。さらに加えて会議場裏手徒歩5分のところに展示パビリオンも設置された。会場内には参加者向けに、相当数の利用フリーのパソコンが設置され、加えて電源や電話回線のとれる机が置かれたルームが2部屋、各部屋にはフリーに使える電話多数とコピー機一台が設置され、いつも利用待ちの列ができていた。確かに無料で電話がかけられ、コピーが使い放題なのは作業には有り難いことだが、国際電話を知り合いに長々とかけまくる者や、散乱するコピー用紙をみると、これはややサービスしすぎではないかとも思われた。今回の節度の無い利用がひとたび悪い経験として残ると、今後、本当に必要なときに必要な人にまで、こういった便利なサービスが供給されなくなる事態が出てきてしまうことが問題である。
COP6の位置づけ 議定書には実際に発効した後の各国が従うべき運用則(ガイドライン等)は具体的に定められておらず、COP/moP1(議定書発効後に議定書締約国により行われる第1回会合)で決定されることとなっている(但し17条排出量 取引のみCOP6決定)。しかしルールが発効後までどうなるか分からない議定書を主要締約国が前もって批准できるはずもない。よって主要ルールについてはCOP/moP1決定内容をCOP6において、事実上先取り合意することで、早期に批准の判断ができるようにするわけである(COP6でCOP/moP1に勧告する内容を決定する形をとる)。COP4で採択されたブエノスアイレス行動計画でこのことが具体的に定められ、それ以降、その合意テキストをまとめようと作業を進めてきた。 よってCOP5では議論の進展を確保するため、COP6までに補助機関会合を2回行うことが決定し、1回目は6月(SB12)ボンにて、2回目は9月 (SB13part)リヨンにて行われ、この2つの会合状況については既に同誌面 あるいはHPにて紹介した通りである。締約国数で圧倒的多数である途上国は、SB12にて一枚岩を結成して先進国に抵抗を強める傾向を見せたものの、SB13partではCOP6決定を間近に控え、各利害の立場を反映し再び主張が分裂する傾向を見せた。しかし個々の主張や、まとまりを見せる部分についてははより強固になってきていた。この間の各交渉テキストの進捗状況については技術的事項についてそこそこの進展をみせたものの、それ以外の主要対立点は思うように収束せず、10月の各議題毎の非公式協議を経て、今回COP6期間中第一週に再開されたSB13(part)のわずか会期6日間で、事務方レベルでどこまで翌週のCOP6閣僚会議に出してもおかしくないテキストにできるかが問われていた。つまり、当初よりCOP6合意が厳しい状況であったことは間違いないといえるだろう。 日本のスタンス 2002年京都議定書早期発効を掲げる日本としては、日本を含め各国が批准可能となるような合意にたどり着くことがかねてよりの目標であった。
特に日本としての主要な課題は、<1> 日本が森林等の吸収源にによって3.7%分(90年排出量
を100%として)の削減としてカウント可能となるものが採択されること、<2>
京都メカニズム使用において定量的上限を定めない・CDM事業としての適否はホスト国の判断とする・その資金としてODA使用を排除しないなど、必要以上の制約を課すことをなるべく避けること、<3>
不遵守の場合でも罰金などの強制的な結果を課すことは事実上執行が不可能なため無意味であり、遵守促進を進めるような制度とすること等であった。 スペシャルイベント NGOの行動
一週目:進展の少ないSB13 初日のCOP6の開会議事終了後、9月より一時中断の形をとっていた第13回補助機関会合(SB13)が再開された。さらにはその下部のジョイントワーキンググループ(JWG)、コンタクトグループ(CG)といったそれぞれの議題毎のグループで、翌週閣僚レベルにあげるための、事務レベルによる最後のテキストの詰めが議論された。 メカニズムにおいては、議長を助ける非公式の少数メンバー(フレンズ・オブ・ザ・チェアー)による非公開(インフォーマル・インフォーマル)での作業を進めていたが、SB13最終日の18日(土)11時にようやくCGが開かれた。インドからG778中国として意見提出したばかりであり、それをテキストに反映させるよう注文がつき、採択を行うSBI/SBSTA合同全体会議開会前の14時まで作業を続ける変更が決定され、未だにテキストが流動的であることが推測された。この日昼は各議題CGの最終会合ラッシュであったが、報告・レビュー等の5,7,8条CGにおいても最後まで、削除、ブラケットをとれ、入れろ、といった発言が続き、時間がないので今後ということで、とりあえず議長が用意したドラフト決議文を殆どそのままで押し切り、CGの結論とするなど、まとまりの無さを見せた。 LULUCFも前日夜から結局何も決まらずじまいだったようだが、期間中に注目を集めたのは米加日の合同提案による3条4項森林管理に関する「フェーズ・イン・アプローチ」である。これはある一定量 までは無条件で森林管理による吸収量を全量認め、それ以上については一定の割引をした上で吸収量 として認める。更に次の閾値以上の分については、再び全吸収量算入可能とするものである。これは日本のような国土の狭い国を配慮(一定まで全量 認める)しつつも米等が多大にクレジットを持つという懸念を抑え(割引)、かつ森林管理のインセンティブをも損なわない(閾値の設定)ことを意図して考え出されたものであり、あまり科学的根拠があるわけではない。またこれに従っていろいろなケースを試算しても、概して附属書T国トータルであまり他に削減努力をしなくても済んでしまう結果 になることから環境NGOは猛反発した。EUは交渉担当者レベルでは一時この提案に理解の姿勢を見せたと思われるも、その後正式に反対を表明した。特に90年レベルでは算入していないのに目標達成には人為的活動と見なして算入できるという根本的問題がある。結局「フェーズ・イン・アプローチ」は一つのoptionとして翌週に残った。 途上国援助関連議題ではSB13最終全体会議の採択の場に至っても、なお途上国の不満が噴出、個別 修正箇所にまで言及するなど紛糾した。 メカニズムのテキストは全体で計90頁弱まで減り、内容は随分すっきりし、対立点が見やすくなった。しかしまだ未解決事項が多く、閣僚会合にすべて投げられるとは到底思えない。なお、補完性についてのoptionは下記3つにまとめられた。
以上のように、多くの議題において時間が足りず、また事務レベルではもはや決着がつくどころか、逆にブラケットが増えていくような場合もあり、翌週にCOP閣僚会合で議論ということで全体会議ではほぼ結論草稿通 りに採択し、多量の選択肢やブラケットを残したまま、SB13は23:30頃にようやく閉幕した。 二週目:閣僚会合開始 いよいよ議論は事務レベルから閣僚レベルへと移行した。あれだけの膨大なブラケットを残したテキストをどう処理し、合意に持っていくのかが心配されたが、月曜夜の非公式閣僚全体会合で早速、 ・各議題毎のCG・JWGの議長と現時点の成果物である公式文書を記載したもの。 ・COP6議長(プレジデント)による非公式ノート というプロンクCOP6議長のペーパーが2種類配られ、特に後者のペーパーは、先週までの交渉進展状況と未解決の「crunch issue(交渉を進めるため明確な政治決断が必要な事項)」が各議題毎に簡潔に整理されたものであり、今後の交渉の急速な進展を期待させるものであった。非公式閣僚全体会合は公式のCOP6本会議と同時並行で行われた。各国閣僚は、本会議でのステートメント時には一度非公式閣僚会合を抜けて、終わるとまた戻ってくるという異例の会議進行となり、またプロンク議長は本来、本会議に出席すべきであるが、本会議には代理をたて、実質的に重要な交渉を行う非公式閣僚全体会合にて、積極的に各国の主張を明確化させ、議論を仕切っていた。そして各国閣僚には、重要だと思う方を自分で選んで出席しろと促し(当然、非公式を選ぶことになる)、形式にとらわれず、残された会議期間を少しでも有効に実質議論を進めようとする彼の決意を感じ取ることができた。またプロンク議長は非公式閣僚全体会合においては透明性を重視し、プレス以外には原則公開としたが、会場席数が限られており、通 路に傍聴の各国事務レベルの代表団があふれる状況もあったため、安全上の理由から多少の入場制限をせざるを得ないことに了解を求めた。そのためモニターで同時放映されることとなり、会期後半は会場はクローズドとなったため、主にNGOはモニターを見守ることとなった。 パッケージでの合意 結局各テキストは膨大なoptionが残り、それを一つ一つ詰めていって閣僚会議で合意に至る時間はない。また各議題は相互に密接に連動する項目を抱え、政治レベルでの決断ということになると、どの項目でどの程度譲歩できるかは、他の項目がどういった結果 に終わるかによっても左右されるため、もはや各項目だけで判断されるのでなく、合意は主要項目全てのパッケージでということになる。ある国が特定の項目内容を変えることを要求すれば、それで不利になる別 の国は他項目での巻き返しをはかり、それがまたどこかの国の利害を左右すると言うように、まさに何本もの連立方程式の解を求める実に困難な作業である。閣僚会合では「compromise」を促す言葉がプロンク議長及び幾つかの締約国から繰り返された。A.途上国援助関連、B.メカニズム、C.LULUCF、D.政策措置・遵守・報告等 という4つの分科会に別 れ非公開で閣僚協議を進め、非公式閣僚全体会合で報告するという形が取られた。各国主張内容を明確化し把握したプロンク議長は、それを考慮しつつ23日(木)夜に議長調停案をパッケージで示し、(土曜昼までの延長含め)残り36時間でこれを議論のベースとして合意にこぎ着けたいと述べた。内容は上記A〜Dの4つの議題についてそれぞれ項目毎に合意案として選ばれた選択肢が記載されている。まさに「折衷」案であり、それ故にかえってどの国にとっても不満なものとなってしまったのかもしれないが、あれだけの膨大な選択肢のある各テキストの中から一つのパッケージを作るとすれば無理もないであろう。以上のようなことからそもそも36時間で合意する事はかなり難しいことは明らかだったが、強力なイニシアチブを見せていたプロンク議長への期待や、京都議定書がまとまった経験から、何とか決まるのではと漠然と抱いていた人も多かった。交渉は以降最終土曜朝まで、非公開の密室会合が続いた。 (議長調停案の和訳はhttp://www.gispri.or.jp/kankyo/unfccc/20006.html を御覧ください) 最終日:交渉決裂 延長日の土曜朝9〜10時位には会場に交渉決裂の噂が飛び交い、しかし一方ではEUがまだ交渉しているという噂もあるなど、本当に決裂したのか、なにが原因なのだと我々は情報を確かめ合う状況であった。閣僚交渉のため、政府代表団の一員であっても、交渉状況が分からない場合もある。しかし、事務局作業ブースの人間が暇そうにしていることからも、交渉決裂は間違いないことが感じ取られた。 やはりCOP3の時とは違い、問題点が多岐にわたり、かつパッケージでとなると、具体的に形が見えてくればくるほど合意が困難となることを、あらためて思い出させる結果 となった。 特に深刻な対立点や注目点は以下の項目と推測される。
これらについて幾つかの状況を簡単に記すと、
今後の予定(COP6決定1より)
と、定められた。以上より、今後は何らかのパッケージの合意を先行させ、それに従って各交渉テキストに反映させていく形で進められていくと予想される。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|