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2001年 3

MEETING

IPCC第17回全体会合出張報告



  4月4日-6日、ケニア・ナイロビにおいて、上記会合が開催され、第三次評価報告書の受諾とともに、将来のIPCCの活動について議論が行われた。以下に概要を報告する。



 本年1月から3月でIPCC第3次評価報告書(TAR)の第1−3作業部会の報告 書が完成し、各作業部会全体会合において政策意思決定者向け要約の承認が行われた(本誌でも前号までに一部紹介)。本会合は、全作業部会、議長団が集まる総会会合 であり、前述TAR各作業部会報告書の最終的な受諾、9月完成予定の統合報告書の進 捗に加え、予算などいくつかの全体に関わる問題を議論した。中でも、将来のIPCC活 動についての議論が主要なものであった。
 日本からは経済省、環境省、気象庁、文部科学省、外務省より出席し(9名) 、各省庁の今後の活動動向に対する関心の深さが感じられた。また、二酸化炭素排出 目録に関するタスクフォース(TFI)の共同議長及び技術支援ユニットから3名、 GISPRIからは安本専務理事、石田環境対策部長、田中の3名が参加した。



主要な議論の概要

(1)将来IPCC活動について


 予め提示されたワトソン議長による議題案に沿って、各国から様々な意見が出 された。本会合では意見を徴集するにとどまり、各意見に基き議長が決議案の修正版 を作成し各国に再配布してコメントを求めることになった。9月のロンドンにおける 総会では作業部会と議長団構成を決め、来年3月までには新メンバーを選出する予定 である。主な議題ごとの議論内容を簡単に以下に示す。

包括的な評価報告書の必要性とその検討期間…広範な検討項目を扱う包括的な 評価報告書は今後とも必要であるとの意見が大勢を占めた。しかし、検討期間(これまでは5年)については、いくつか意見が出たが議論は収束しなかった。
特別報告書の必要性と作成…作成は必要であると言う意見が大勢を占めた。進 捗の管理などは、基本的に内容と一番関係の深い作業部会が行い、横断的事項は先進 国と途上国からの2人の副議長がとりまとめるということになった。
他条約機関からの検討要請への対応…他条約機関、特にUNFCCCからの要請につ いては積極的に応ずるべきであり、気候変動とその他の問題(生態多様性など)との 関連も検討するのは有効とのことであった。しかし、これらを行う際、気候変動に関 連するものに限ること、予算の考慮が必要であることが強調された。
評価報告書の査読プロセス…これまでの複数回の査読(政府査読は2回)を維 持することでまとまった。
作業部会の構成…TFIを第4作業部会にすることに関しては、7割が賛成、2 割が慎重に検討すべき、1割が反対であった。また、これまでの作業部会構成につい ても関連していくつか意見が出されたが、これら全て、次回総会で最終的に議論を行 うことになった。
議長団のサイズと構成…人数、地域バランスなど多数の意見が出されたが、い ずれの構成になるにせよ、ビューローメンバーは国ではなく、地域の代表であるべきことが強調された。

会場風景

日本側出席者



(2)IPCCの今後の中心課題

 残されている重要課題は何かということで、各国から様々な意見が出された。 その一部を紹介する。
危険なCO2濃度、閾値、感度分析および種々な部門に対する限界的な濃度水準 、といった人間影響の(限界値がわかるような)定量的評価
気候変化の影響の経済的評価
脆弱性、適応策の評価
技術的方策の詳細な検討
気候変化と生物多様性の関連及び持続可能な発展の検討
モデルの分解能向上
行動した場合としなかった場合のコスト、食糧・水資源との関係の検討
南半球など、データが少ない地域でのデータ収集強化
地域予測、地域の脆弱性など地域研究の強化



(3)統合報告書の進捗と今後


 現在、約40ページの報告書と約8ページのSPMの第一次原稿が完成し、査読コ メント収集のため各国に配布されたところである。本会合で、各国代表者から成る全 ての議長団のメンバーが査読編集者(Review Editor)に割り当てられた。今後、6月中旬の最後の執筆者会合(査読編集者も参加 )を経て、9月のロンドンにおける全体会合で採択する予定である。
(田中加奈子)