本会議場サントン地区から南へ20Km、高速フリーウェイをバスで40分程にあるナズレック地区のエキスポセンター(万博会場跡地)にて8月26日〜9月4日までグローバルピープルズフォーラム(略称NGOフォーラム)が開催され、ワークショップ形式の発表討論会のほか、屋内展示,野外パフォーマンス,エコツアーなどが行われた。
以下は、関心あるセッションテーマについて、サントン本会議地区より出向き、参加した印象である。広範なテーマを取扱ったフォーラムの全容把握には至らぬが、その一端を窺うことができたように思われる。
ワークショップではNGOや市民活動組織が個別にセッションを主催、健康,食糧,水,エネルギー,森林,文化多様性,ガバナンス,貿易,農業,環境,人権,科学技術,ジョブ・雇用,ジェンダー,教育,宗教等の分野の計217テーマについて、講演発表と質疑応答が行われた。
「持続的発展(SD)とミレニアム開発目標(MDG)」では国連特別顧問を務めるJ.サックス・ハーバード大教授が講演、ミレニアムサミットで採択された2015年をゴールとする開発と貧困,環境,人権とグッドガバナンスなどの課題の克服が遅々として進んでいないと指摘し、米国,EUほか先進国が対GDP比0.7%をODAに拠出することを強く求めるとともに、フロアのNGOに対し、国連とNGOの協議機関CONGOとともに活動するよう熱弁を奮った。
このほか、「コミュニティと起業」では雇用創出のための各国、各地域での取組み事例報告があり、観光資源活用,熱帯雨林再生活動,地域通貨導入・普及プロジェクトなどがアフリカや南米のNGOから紹介された。「企業責任」ではコープウォッチ,第3世界ネットワーク等のNGOから、トリプルボトムライン未達の企業が社会に与えるネガティブなインパクトを政府が補償すべきであるといった厳しい意見が出された。「貿易とSD」では途上国農業保護のために補助金や関税といった措置の適用を求めるNGO意見が聞かれた。「人間開発のための技術移転」では貧困層にとって有用な技術が存在するにも拘らずそれを利用できない不満が表明され、貧困撲滅のための技術開発に対し資金援助が行われるべきとの意見が述べられた。とくに長期にわたる持続的発展の実現には地域単位、コミュニティベースの開発能力の強化が必要だとする説得性あるコメントが印象に残った。「GRI」では報告内容の信頼性確保,企業規模を勘案した報告システム,報告の義務化などが今後の検討課題として挙げられた。
いずれのテーマも真剣なしかし和やかな雰囲気の中で進められ、フロアからの積極的な質問,コメントが各テーマへの関心の深さを示していた。これらのセッションへの参加者は地元南アを始めアフリカ各国のNGO,自治体関係者のほか欧州,中南米地域のNGOが多く、アジア系は殆ど見かけることがなかった。日本のNGO参加者は300人を超えるとされていたが「SDのための教育の10年」ほか日本NGOが主催するワークショップを除けば、いまひとつ存在感が希薄との印象を否めなかったのは残念である。
会期終盤の9月2日には、アナン事務総長が来場、講演とNGOとの質疑応答を行った。講演では、今回のサミットにはこれまでになく多数のNGOと市民組織(CSO)が参集し、グローバルコミュニティが強く、大きく変わりつつあるとの印象が述べられ、SDの達成にNGO/CSOの不断の努力が欠かせず、自らを過小評価することなく持続的な成長目標に向けての課題に取組むことが必要だとした。そして、NGO/CSOが政府,ビジネスセクターと連携するためには共通の枠組みが必要であり、これまでに得られた合意に満足せず続けて圧力をかけるよう促した。最後に、「貧困層に清澄な水を与え、アフリカに緑をもたらし、地球資源に配慮する努力を続けよう」との呼び掛けで講演を結んだ。約30分間のアナン氏の登壇で、2000人を超える会場フロアは親近感と信頼感を寄せつつ氏の講演に聞き入り、参集NGOの氏への大きな期待を実感させた。
本会議場周辺でのNGOはロビイングを主体とするアドボカシー活動を展開し、一部アクティビスト達は本会議場での突出行動で存在のみを誇示した。一方、NGOフォーラムは、「本会議場から隔離された」なかで、参加諸組織同士の啓発活動・アピールとネットワーキングに力点を置き、比較的落ち着いた雰囲気で議論を展開、今後の取組みを描こうとしていたように思われた。
グローバルな意志決定にNGO/CSOの参画が重要とされるなかで、今次WSSDの経過と結末を見る限り、NGOの提案がどの程度反映されたのかいまひとつはっきりしない。セレモニー的側面を持つ国際会合でのロビー活動だけでなく、平時からの地道な取組みで力を貯え、理解者を増やすことがNGO/CSOには一層重要になりつつあるようだ。
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NGOフォーラム会場となったエキスポセンター入場ゲート |
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ネルソン・マンデラ元大統領の登壇なしで始まった開会式 |
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氷のペニギン彫刻で地球温暖化防止を訴えるパフォーマンス |
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