「企業の環境パフォーマンス評価」研究委員会について |
1.はじめに
企業の環境格付に関する試みは、国内では「エコファンド」と呼ばれる投資信託、海外ではダウジョーンズ社による 「Dow Jones
Sustainability Group Index」などで環境格付の試みが行われているが、これらはあくまでも投資のためのものであり、必ずしも環境対策や環境への優しさだけを評価していない傾向がある。
その他の機関でも環境格付の試みが行われており、例えば環境経営学会では、「環境経営格付機構(SMRI)」を設立するなど、環境格付に対する社会的な必要性は徐々に高まりつつあるが、企業の環境対策や環境への優しさを公平かつ客観的に評価する具体的手法は確立されていない。その観点から、企業の環境対策や環境への取り組みを総合的に評価するための「企業の環境パフォーマンス評価」が必要となってきている。
2.目的
本研究では、CO2、SOx、NOxなどの温暖化ガス排出量を含めた環境パフォーマンスを総合評価するためのスタンダードのあり方について、LCAなどによる評価、および企業の環境に対する取組みの積極性等の視点より検討する。企業が環境格付で評価が上がることは、環境対策への積極的な取組みを示すことによる企業価値の向上にもつながるため、企業の環境対策推進ドライブとなり、環境改善に対する社会的な意識向上の醸成となる。
3.組織(案)
研究委員会メンバーは、以下のメンバーで構成する。
なお、具体的な委員の氏名については、委員長のご意見も参考にして決定する。また必要に応じ、環境省の方、学識経験者、環境対策の優良な企業の方などに、オブザーバーまたは講師として出席していただくことも考慮する。
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委員長(決定): |
石谷 久 慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科 教授 |
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委 員(予定): |
学識経験者(環境経営分野等)、政府関係者(経済産業省等)、環境経営学会メンバー、監査法人メンバー(朝日監査法人、トーマツ環境品質研究所等)、その他専門分野の方 |
4.現状調査と評価の方向性
(1) 評価手法
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現在環境に関する評価を行っている代表的な組織は、次の一覧表に示す通りであり、それぞれの目的に応じた評価項目により企業評価を行っている。
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環境評価組織等 |
環境影響評価手法 |
備 考 |
環 境 省 |
環境パフォーマンス指標 |
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国際標準化機構(ISO) |
ISO14000シリーズ |
(日本規格協会がJISとして発行) |
環境経営学会 |
LCA(ライフサイクルアセスメント) |
H14年環境経営格付機構(SMRI)設立 |
産業環境管理協会 |
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(株)トーマツ審査評価機構 |
デトロイトトウシュトーマツ(DTT)開発の
環境報告書評価ツール、スコアカードによる |
監査法人トーマツのグループ企業 |
ダウ・ジョーンズ(米国) |
Dow Jones Sustainability Index |
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(2) 評価項目
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評価項目は、それぞれの組織により異なり、定量的な評価のための配点等も異なっているが、以下の項目についてはほぼ共通して評価の対象となっている。
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経営者による環境方針の公開(環境報告書の発行を含む) |
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環境管理システム(EMS)の構築 |
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ISO14000シリーズの認証取得 |
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環境会計の導入 |
すなわち、企業の環境改善に対する方針が明確であり、そのためのしっかりとした組織があり、継続的に改善できるシステムを構築しており、その上で会社経営状況もチェックしていることが、評価の上で共通のポイントとなる。 |
(3)評価尺度標準化の方向性
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企業の環境に対するやさしさをより定量的に評価するためには、上記ポイントの定量評価をベースとして、次の課題をクリアにした上で、具体的評価手法を確立して行く必要がある。
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公平な評価のために多くのデータが必要であるが、企業の機密保持との関係でデータをどの範囲とするか |
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経済的価値の評価方法 |
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業種の違い、企業規模の相違による環境影響度合いの違いをどう評価するか |
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評価のための組織設立の必要性 等 |
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5.研究内容およびスケジュール
本研究では14年度、
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LCA等による評価基準の現状調査と、それを用いた評価尺度の可能性に関する考察 |
(2) |
エコファンド等既存のエコ評価尺度の現状分析と、評価尺度の内容についての検討 |
を行い、評価尺度の具体的内容の方向性を示す。 15年度はこの調査・検討結果を踏まえ、
(3) |
環境パフォーマンスを総合評価するためのスタンダードのあり方についての分析と検討 |
を行い、具体的提言をまとめる予定。概略スケジュールは以下の通りで、初回の委員会は12月第1週の予定。 |
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