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2003年 2号

Conference
IPCC第20回総会 参加報告書



 2003年2月19〜21日、IPCC第20回総会がフランス・パリのUNESCO本部で開催された。今回は、第19回総会でインドのパチャウリ氏が議長に選出されて初めての総会で、ビューローメンバーも新しい体制で行われた。参加者は133カ国と36の組織から約200人、日本からは、経済産業省関参事官、環境省高橋室長、平石TFI共同議長はじめ11人が出席した。議題は第4次評価報告書に関する内容を中心に、各種報告書の作成提案、報告が行われた。以下に概要を報告する。

 なお、初日にフランスのラファラン首相(2002年5月就任)が、2日目にはバシュロ環境大臣が総会で演説し、フランス政府の地球温暖化問題に対する意識の高さを出席者に印象付けた。第21回IPCC総会は、本年11月3〜7日にウィーンで開催される予定である。

第4次評価報告書(AR4)について
  AR4は、19回総会で2007年末までに3つのワーキンググループが連続的に完成させ、内容は包括的で焦点を絞ったものとし、最新情報も取り入れることで合意した。20回総会ではAR4作成の第一歩として4月にマラケシュ、9月にベルリンでスコーピング会合を開催し、AR4の構成、横断的事項、主要執筆者について検討して11月の21回総会で進捗状況を報告することが決定された。なお横断的事項には、現在考えられている「不確実性とリスク」「緩和と適応の統合」「主要な脆弱性」「持続可能な発展」「地域統合」「水」の他に、米国提案の「技術」が追加された。

特別報告書・技術報告書・Methodology Reportsの決定枠組みについて
  今までIPCCが作成してきた報告書の種類・優先度はその都度検討し決定していたため、19回総会では、新ビューローが決定枠組みを作成することで合意し、AR4の作成を優先した上でUNFCCCからの要請に高い優先度を与えることを決定した。
20回総会では、コンタクトグループによる新しいガイドラインが作成され採択された。このガイドラインでは、19回総会での決定事項を前提にして文献の充実度、人材の有無等で作成を決めることが提案されている。

特別報告書及び技術報告書について 
(1) 代替フロン(HFCs、PFCs)に関する特別報告書
UNFCCCが、16回SBSTA会合においてIPCC及びTEAPに対し、強力な温室効果ガス(GHG)であるHFCs、PFCsの科学的情報に関する報告書作成を要請したのを受け、20回総会で本特別報告書の内容、スケジュール、予算、委任条項等に関するスコーピングペーパーが提出され採択された。2005年6月完成を目標に報告書を作成する。
(2) 炭素固定及び貯留に関する特別報告書
CO2削減への大きな効果が期待されている炭素固定・貯留について、19回総会で特別報告書を準備することが決定され、昨年11月にワークショップが開催され地中貯留技術及び海洋隔離技術とその範囲、コスト、リスク等様々な側面の検討が行われた。20回総会では、上記内容の報告が行われ、特別報告書は2005年初頭に完成することで合意した。
(3) IPCCガイドライン(1996年改訂)の再改訂について
上記ガイドラインは、SBSTAの要請を受けて2000年IPCCグッドプラクティスガイダンス(GPG)、IPCC排出係数データベース、2003年LULUCF−GPGの情報をベースに2006年までに見直すことにしており、20回総会でその内容が報告され採択された。
(4) 土地利用と土地利用変化、及び林業(LULUCF)に関するGPGについて
20回総会では、上記GPGは19回総会で合意されたワークプランにより順調に作業を進めていることが報告され、21回総会までに完成し、12月のCOP9に提出される予定。
(5) GHG排出係数に関するデータベース(EFDB)確立について
 EFDBは、信頼性の高い排出係数データベース公開のため日本が中心となって活動してきており、20回総会ではその活動と今後の予定について報告され、採択された。
 本データは、各国のインベントリー作成に役立つものとして大いに期待されており、将来はデータの信頼性確保のためアセスが必要との指摘もあった。
(6) 気候及び影響評価シナリオに関するタスクグループ(TGCIA)について
 TGCIAは、各作業部会の情報共有化、シナリオの一貫性向上を目的として設立され、今後はAR4作成過程において、データの充実、新知見のシナリオへの適用、情報・評価の最適化等を行い研究者や科学者をサポートしていく。20回総会では、役割を明確にするためのマンデートが提案されたが、内容の解釈について合意されなかったため次回へ持ち越しとなった。
          
 新メンバーでの初会合であったが、一部の国が議長の静止を無視して発言するような場面が見られたものの、議長パチャウリ氏のけじめのある議事進行、意見が対立した時の議長としての自信を持った対応により、全体としてスムーズな運営であった。

 内容的にも、一部修正等あったもののほぼ提案どおり承認され、事務局等が事前の準備を確実に行っていたことが伺える。

 今回、AR4に関する議論に多くの時間をかけたが、以前第2次評価報告書(SAR)が京都議定書採択のベースとなり、第3次評価報告書(TAR)が「ボン合意」「マラケシュ合意」を後押ししたように、AR4は、2013年以降の目標設定に関する国際交渉に大きな影響を及ぼすと考えられる。その重要性を考えると、今後のIPCCの活動はより透明性の高いプロセスで行われる必要があり、データ等の内容は高い信頼性が要求されるため、その観点でもフォローしていく必要がある。

(文責:阿知波雅宏)