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ニュースレター
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2005年 2号
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Seminar | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
−GISPRI / IGES共催−
2004年12月6日から17日にかけてアルゼンチン・ブエノスアイレスにて国連気候変動枠組条約第10回締約国会合(COP10)が開催されたのを受けて、2005年1月20日全社協・灘尾ホールにおいて標記セミナ−を開催した。本セミナーでは、実際にCOP10で交渉に当たった政府各省庁の担当者を講師に招き、交渉経緯や決定事項の報告及び会場からの質問に回答を頂き、地球温暖化問題における国際交渉についての情報を包括的かつタイムリーに提供し、セミナー参加者の本問題への更なる理解促進を実現した。産業界、コンサルタント、研究者、学生など地球温暖化問題に興味を持つ296名もの方々が会場に詰め掛けた。以下に、講演及び質疑応答を報告する。
外務省 気候変動枠組条約室首席事務官 小野益央氏
【ロシア関連】 Q1:ロシアの京都議定書批准後、同国とコンタクトはとっているのか? A1(外務省・小野氏):ロシアは京都議定書批准の際、2013年以降の参加については保留という条件を付けたと報道されたが、それは正確ではない。2013年以降についてはあくまでも2005年末までにUNFCCC締約国間で交渉を開始すると決定されている。現時点でロシアが2013年以降の行動について保留していても大きな問題ではない。ロシアはJIに関心を寄せており大使館にも接触を求めている。日本としては、JIを実施できるよう体制の整備を求めている。 【CDM関連】 Q2:CDMの具体的な問題点、対応策等は議論されたのか? A2(経済産業省・坂本氏):CDMのルールを具体的にどう変えるかというところまで議論・合意できていないし、それはCOPでまとまるような問題ではない。専門家を交えた話し合いが必要であり、そのためにも3月に日本主導で国際会議を行う予定。なお、CDM理事会の体制強化については多くの意見が出された。実際、資金が数百万ドルのオーダーで不足しており、CDM理事会も各国のvoluntary contributionを求めている。 Q3:日本からのvoluntary contributionは大きな意味があると思うが、検討されているのか? A3:(経済産業省・坂本氏)既に経済産業省・環境省からCDM理事会に対して数千万のオーダーで資金供与している。増額については検討中。 Q4:省エネ方法論を優先的に審査することとなったが、日本からの省エネ関連方法論は提出されていない。日本にはCDMに成り得る省エネプロジェクトが存在するのか? A4(経済産業省・坂本氏):日本に省エネプロジェクトに関する動きがないわけではない。CDM理事会17で省エネ方法論が2件追加されたし、経済産業省のヘルプデスクに持ち込まれる相談でも省エネ案件に関するものが一番多い。中国を始め、かなりの潜在性があると思われる。 Q5:省エネを進めるためには、国の政策が必要なのではないか?検討していることは? A5:(環境省・水野氏)CDMへの補助によってCDMの形成を促進したり、フィージビリティースタディーを実施したりしている。また、基本情報の提供やセミナーも開催するなどして努力している。今後も拡張していく予定。 (経済産業省・坂本氏)世界銀行などのファンドなどはpay on deliveryだが、日本が行っているCDM補助はup front paymentであるため、ファイナンス面では大きな力になるはず。来年度からCDMの補助率も高まり50%をカバーするようになる。又、より運用しやすくする手段も検討中。 Q6:3月に開催されるCDMワークショップについて、オブザーバー参加は可能か? A6(経済産業省・坂本氏):公開なので一般の方の参加も可能。ただ、会場の収容能力の問題はある。情報は経済産業省ホームページを参照。 Q7:COP10においてユニラテラルCDM(途上国関係者だけのCDM)に関する議論はあったか? A7(経済産業省・坂本氏):京都議定書の中でのCDMは先進国と途上国のプロジェクトと位置付けられている。途上国はクレジットを保有していても、排出量取引に参加出来るのは先進国だけと京都議定書に記載されているため使えないので意味がないと思われる。基本的に日本としては、ユニラテラルCDMは認められないという見解。現在、CDM理事会にホンジュラスの小規模水力CDMプロジェクトが申請されたが、ユニラテラルCDMであるということで見直し要請が入っている。CDM理事会は次回の会合(EB18、2005年2月23-25日)で検討する予定。 Q8:COP10でCDMへのODAの利用については議論があったか? A8(外務省・小野氏):ODAの流用は出来ないという決定事項はあるが、何を持って流用とするかの議論は未確定。ODAはもともと個々の案件ごとに検討するものであるため、プロジェクトのCDM化にODAを利用するのは問題だが、CDMプロジェクトの実施そのものに利用するのならば、当該ホスト国への資金が減額されているわけではないので問題ないと思っている。とはいえ、ホスト国との共通の理解が重要なため、そのための活動を積極的に行っている。 【吸収源CDM関連】 Q9:締約国全体吸収源CDMを促進すべきという共通認識があるのか?日本としては促進する動きはあるのか? A9(林野庁・赤木氏):各国によって事情が異なるため一概には言えない。日本やカナダは出来るだけ利用しやすい柔軟性を持たせたルールを主張する交渉スタンスだったが、中国、ブラジルは吸収源プロジェクトをネガティブに捉えており厳しいルールを主張していた。小規模吸収源CDMについては、全体的にルールを簡単にするということで合意できていた。 Q10:伐採木材製品(HWP)に対する主要国の主張はどうなっているのか? A10(林野庁・赤木氏):HWPの主たるアプローチ及び主張国は下記のとおり: ・デフォルト方式 → 伐採即排出とみなす方法。 ・フロー方式 → 木材を利用した国の排出とみなす方法。木材輸出国が主張。 ・プロダクション方式 → 米国・アルゼンチン等が主張。 ・ストック方式 → 国内のストック変化量を排出とカウント。EUやノルウェー等が主張。 どの方式も一長一短があり、日本政府として「これが良い」という議論には至っていない。日本は、全体の80%の木材を輸入しているためフロー方式には反対。 Q11:森林の違法伐採と植林した森林の伐採の取扱いを変えるということは考えていないのか? A11(林野庁・赤木氏):第2約束期間以降の話として、議論の整理を専門家が行っている。 Q12:海中の藻類も吸収源の対象にするつもりか? A12(林野庁・赤木氏):COP10では海中の吸収源について議論していない。具体的なイシューについても承知していない。 【適応策関連】 Q13:環境省として適応策についてはどのように考えているのか?ODAや防災対策への資金を利用できるのではないか? A13(環境省・水野氏):どのような影響に対して適応するのかはしばしば議論になっている。無論、気候変動に対する適応への対策だが、事実上その影響だけを限定するのは難しい。持続可能な発展対策の中に統合していくことが重要。一般論としては、科学・技術の面で、援助していくつもり。 Q14:今後、適応策について学術的にどのようなことをやっていけば良いと思うか? A14(環境省・水野氏):地域別の影響を検出するモデルの開発等、地域毎の知見が役立つ。 【2013年以降の枠組み関連】 Q15:政府専門家セミナーはCOPに反映されないが、具体的にどのような形で議論が進んでいくのか? A15:(環境省・水野氏)セミナーの内容はCOPで報告されないものの、各締約国には提供されるので、その違いに留意。なお、京都議定書3.9条には2013年以降の目標について2005年末までに議論を開始することと定められているが、日本にとってその条項は議論を始めるきっかけであり、京都議定書に定められることのみを行えば良いと思っているわけではない。日本としては、米国・途上国も含めた枠組みについて議論することを目指している。具体的にそのセミナーの結果をどのように利用していくかはセミナーをやってみなければ分からないが、今後の議論の「呼び水」にしたい。 (経済産業省・坂本氏)水野氏と同意見。京都議定書3.9条をそのまま読むと、先進国と経済移行国しか含まれていない。しかもCOP/MOPで議論することになっており、米国は既に外れている。従って、この京都議定書の条項だけでは不十分。COP10では米国も途上国も頑なであり、彼らを巻き込むには今後長い時間がかかると思われる。しかし、努力をしていく。 (外務省・小野氏)日本は世界の主要20カ国と、過去3年間に渡って将来の枠組みについて意見交換を行っている。今年も行う予定であるため、5月のセミナーに追加してこの会合を「きっかけ」にしたい。又、G8サミット(議長国:英国)でも気候変動問題が取り上げられている。米国が入っているため京都議定書についての議論には必ずしもならないと思うが、気候変動問題の重要性は高まると思われる。 Q16:将来枠組みについて環境省と経済産業省の案は統一されていないが大丈夫なのか? A16:(環境省・水野氏)あくまでも中間とりまとめ。環境省と経済産業省が別々に検討しているのは事実だが、基本的なスタンスは共有している。具体的な部分については、調整しているわけではないのでバラバラな部分も当然ある。最終的には日本として1つの案を打ち立てていくつもりだが、もともと賛否両論ある非常に難しい事項であるため、各省庁で様々な意見を聞いて検討するのは、ある意味望ましい取り組み方ではないかと思う。 (経済産業省・坂本氏)中環審の7つの視点の説明を聞いて、経済産業省としても異論なし。 【京都メカニズム関連】 Q17:CDM以外の京都メカニズムについて議論は活発にされているのか?国際排出量取引はどうなるのか? A17(経済産業省・坂本氏):JIの6条監督委員会(CDMのCDM理事会に相当するもの)はCOP/MOP1で立ち上げる予定になっているので、それまでにそれぞれの地域で候補者をあげる運びになるだろう。しかし、COP/MOP1まで待つ必要もないので主要国で議論を進めでも良いと思っている。(欧州からそのような提案も既に受けている。) グリーン・インベストメント・スキーム(GIS)を利用して排出量取引をしようという動きもある。ファンドを設置して、AAUを売却して得られた資金をその国において環境目的の個別プロジェクトに使用するというもの。ブルガリアは2005年からGISを開始したいと述べているらしい。日本としては、CDM/JIのみではなくGISを利用してのクレジットの獲得も考えている。 (環境省・水野氏)CDM/JIについては積極的に進めていくつもり。特にJIについては、対象国を取り込んで進めている。 Q18:日本版ERUPT/CERUPTは行わないのか? A18(経済産業省・坂本氏):政府がクレジットを国内プロジェクト参加者から購入するスキームは既に存在する。アップフロントで資金提供し、補助金対応額を国に提供してもらうシステムであるため、世界銀行のファンドやオランダ政府とはやり方が異なるが、100億円規模で進めている。このスキームを利用して欲しい。なお、国が直接クレジットを購入するやり方も検討中。 【イベント関連】 Q19:2月16日に京都で行うイベントはどのようなものか? A19(環境省・水野氏):現時点であまり公開できることはないが、COP3を行った同会場で、夜6時から開催。ケニアのマタイ副大臣(ノーベル賞受賞者)からもメッセージを頂く予定。多くの方々に是非参加して欲しい。 【国内対策関連】 Q20:京都議定書の発効によって日本の国際対策・国内対策で何が変わるのか? A20:(外務省・小野氏)京都議定書で定められている目標が義務となるという意味で変わるが、既に目標達成のために対策を実施しているので、活動としては変わらない。 (環境省・水野氏)法律上の位置付けが変化する(大綱→計画というような名前の変化等)が、活動自体は変わらない。 (経済産業省・坂本氏)国際面での大きな違いは、今までバーチャルなものであった京都議定書がリアルなものになったということ。今後、CDMだけでなくJIも実施され、GISも検討されるだろう。
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