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2005年 3号
Report
平成16年度
「持続的な社会経済システムと企業の社会的責任」
研究委員会報告書
−CSR普及のための環境整備を考える−

平成16年度 日本自転車振興会補助事業

このほど、平成16年度「持続的な社会経済システムと企業の社会的責任」研究委員会報告書が完成、公開されたのでその概要を紹介する。



 平成16年度「持続的な社会経済システムと企業の社会的責任」研究委員会は、平成15年度の同名の研究委員会に続く第2次の研究プロジェクトであり、その目標は日本社会において企業が経済的パフォーマンスの追求、環境への配慮に加えて、社会的課題の解決(CSR)に取組む機運の高まりを維持促進し、定着させるために如何なる受け皿、如何なる制度的な仕掛けが必要となるのか、を議論し、持続的な社会経済システム構築に資するCSRに関る政策提言を導くことであった。

 日本におけるCSRに関する議論は、ビジネス・リード、すなわち一部の先進的な大企業・グローバル企業がこれを先導し、創意工夫を盛込みながら自発的な実践を展開している。こうした取組みがさらに広く日本の企業社会に普及定着するには、企業自身の挑戦を促す基盤環境の整備、制度面からの支援といったマクロな施策が求められるのではないか。

 本年度研究委員会では、こうした問題意識を共有しつつ、計5回にわたり講演と討論の機会を持った。
 御参加の委員各位には、さらに持論を披瀝して頂く趣旨から、6項目の設問で構成するアンケートへの回答をお願いし、貴重な御意見を記述して頂いた。これらはその原文のままを本報告書の第1部に収録させて頂くとともに、政策提言の源泉として参照させて頂いた。また、上記講演及び討論要旨を第2部として収録している。

 CSRの普及・定着のための要件は多々挙げられるが、その促進環境として特にCSR教育及び企業の社会性評価の重要性に注目、その実態を別途調査、第3部から第5部として本報告書に所収した。
 
 本報告書はCSRが一時的ブームに止まることなく、社会に定着するためにマクロレベルの施策の必要性をアピールする提言書であり、同時に、欧米CSR教育の実態ならびに日欧米での企業の社会性評価の最新動向に関する調査報告書でもある。       (報告書「はじめに」より)



要 旨

 企業の社会的責任(CSR)が一時的ブームに終わることなく、社会に定着するためには、企業による個別の具体的課題への取り組みと同時に、これを促す環境と仕組みが整備される必要がある。 そのために、(1)社会ビジョンのなかにCSRを明確に位置付けるCSRビジョンが作られるべきであり、その「場」となる「日本のCSRビジョン」づくり会議が設けられるべきこと、そして、(2)日本社会にCSRが普及・定着するために整備が急がれる環境条件として、@CSR教育を充実させ、社会全体のCSR理解を深めること、A企業のCSR経営を評価し、的確に意志表示を行うこと、B企業によるCSR情報開示を促進すること、C中小企業のCSR活動を支援すること、などが図られるべきである。

 欧州のCSR教育は緒についたばかりでその効果はまだ明らかでないが、政府・産業界からの助成を受け、活発に展開されている。日本への教育プログラムの移植には文化的背景の違い、言語上の問題など考慮が必要だが、ひとつのモデルとして検討されてよい。

 欧米の代表的な企業評価機関に関する調査の結果、その評価手法には共通点が多いものの将来の方向性には機関ごとに異なる戦略があることが判明した。企業にかかわる共通の問題意識として、的確な評価のための必要情報の不足が挙げられた。


報告書目次

CSR普及のための環境整備に関する提言 (全文はこちら
   
  日本の社会経済システムにCSRを定着させるための提言  
  【提言 1】 「日本のCSRビジョン」づくり
  【提言 2】 CSR普及・定着のための環境整備

第1部 日本の課題に関する研究委員会委員の問題意識

第2部 講演録及びコメント
  第1章 総論:日本におけるCSRの課題
  第2章 マクロ政策としての環境整備に関する問題提起
  第3章 公共政策としてのCSRの課題
  第4章 CSR教育

第3部 CSRに関する教育・啓発への欧州での取り組みに関する調査
第4部 欧米評価機関による企業の社会性評価プロセス調査
第5部 国内企業評価機関による企業の社会性評価プロセスに関するアンケート回答集


研究委員会名簿

委員長 谷本 寛治 一橋大学大学院商学研究科教授

委 員 浅井 茂利 全日本金属産業労働組合協議会政策局部長
委 員 足達 英一郎 日本総合研究所創発戦略センター上席主任研究員
委 員 安生 徹 経済同友会常務理事
委 員 荻野 博司 朝日新聞論説委員
委 員 岸本 幸子 特定非営利活動法人パブリックリソースセンター事務局長
委 員 國部 克彦 神戸大学大学院経営学研究科教授
委 員 関 正雄 株式会社損害保険ジャパンCSR・環境推進室長
委 員 冨田 秀実 ソニーコンプライアンス部門環境・CSR戦略室部長
委 員 藤井 良広 日本経済新聞社経済部編集委員
委 員 緑川 芳樹 グリーンコンシューマー研究会代表
委 員 森原 秀樹
反差別国際運動事務局長 (敬称略,五十音順)


[文責 竹林忠夫]