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2005年 3号
Report
平成16年度
「CDM/JIのリスクとその軽減策に関する調査研究委員会」報告書

貿易と環境の調和に関する調査研究−第2次−

平成16年度 日本自転車振興会補助事業



同調査研究委員会は山口光恒委員長(慶應義塾大学経済学部教授)の下で5回開催され、CDM及びJIの実施促進を目的にリスクの整理とその軽減策を模索した。
まずプロジェクト実施にかかるリスクを把握し、投資国・ホスト国企業から見たCDM/JIを考察した。そしてCDM事業の現状や傾向、ホスト国の受け入れ状況、日本企業の取り組みを分析した上で、日本企業が省エネCDMプロジェクトをより積極的に実施するための支援策を検討した。要点は以下のとおり。


CDM/JI、省エネプロジェクトに対する日本のスタンス
  日本政府はCDM/JI等具体的な排出削減プロジェクトを数多く実施し、将来のクレジット供給可能量を拡大することに重点を置く。
  途上国では省エネプロジェクトのニーズは高い。一方、日本は世界最高水準のエネルギー・環境技術を有する。省エネCDMはエネルギー消費量低減、世界のエネルギー安全保障の強化に貢献できる。

省エネプロジェクト実施の実状
  省エネ効果とCERの売却益を足しても必要投資額に満たないものが多い。
  日本の省エネ関係者にはCDMへの厭戦気分が見られる。

CDMの傾向
  CDM理事会に提案された新方法論のうち、バイオマス利用、メタン回収・発電が多く、省エネは全体の10%程度でごく最近提出されたもの。
  ホスト国はインド、ブラジルが多く、インドは省エネプロジェクトにも多く取り組む。受け入れ体制は、インド、マレーシア、ベトナム、中国、ブラジル、チリが積極的。
  最近はユニラテラルCDMに近い形態のプロジェクトが多い。
  中国では、複雑なCDM方法論、出来たばかりの関連法規、不透明な国内ルール等から、CDMプロジェクトが進んでいるとは言いがたい。

クレジット買取りを主目的とするファンドを利用する事業者のリスク
  プロジェクトのリスクは負わないため、デリバリーリスクを重点的にヘッジすればよい。事業者がクレジットを削減目標の遵守に利用する場合、ファンドがプロジェクトのポートフォリオを組んで投資を行うと共に、事業者もクレジット入手先を多様化しリスクを緩和する必要がある。

CDM/JIプロジェクトに参画する事業者のリスク
  1)緩和策がないという制度リスク、2)プロジェクトを行う主体が自己責任で対策を取らねばならないプロジェクトベースのリスク、3)政府が対策を講じることで軽減可能なリスクに分類できる
  DOEによる有効化リスク、CDM理事会による方法論の承認やプロジェクトの登録リスク、取引費用リスク。プロジェクト実施段階では財務リスク。

省エネCDMプロジェクト推進のためのリスク軽減策
  CDM化するまでは、a)潜在的なプロジェクトの発掘とb)汎用性の高い方法論の確立が重要。a)は経済産業省の「CDM/JIアクセラレーションプログラム」がカバーする予定。b)に対しては省エネに関する統合方法論の作成、業種別の省エネ方法論の作成支援が考えられる。
  CDMプロジェクトを実施する段階では、ファイナンススキームの導入が必要。例えば省エネCDMプロジェクト専用のプロジェクト金融ファシリティが考えられる。ファイナンスリスクの軽減だけでなく、ファシリティを利用しなければプロジェクトの金融が回らないことを説明し、追加性を証明出来れば承認リスクの軽減にもなる。

研究委員会名簿 (敬称略、五十音順)  
委員長 山口 光恒 慶應義塾大学 経済学部 教授
委 員 稲田 恭輔 国際協力銀行 企業金融部 第5班 調査役
  大沼 あゆみ 慶應義塾大学 経済学部 教授
  岡崎 照夫 新日本製鐵株式會社 環境部部長
    地球環境対策グループリーダー
  西尾 龍太郎 ナットソース・ジャパン株式会社 マネージャー
  西村 邦幸 株式会社三菱総合研究所 主席研究員
  波多野 順治 三菱証券株式会社 
    クリーン・エネルギー・ファイナンス委員会 委員長
  藤森 眞理子 パシフィックコンサルタンツ株式会社 環境事業本部
    地球環境部 技術課長
  増田 正人 有限会社エムフォーユー 代表取締役
  山田 和人 パシフィックコンサルタンツ株式会社 環境事業本部
    地球環境部 部長代理
    (平成16年3月31日現在)

(文責 信岡洋子)