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ニュースレター
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2009年
1号
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Research Project | |||||||||||||||||||||||||||||||
平成20年度
「社会文化の変化と企業経営の進化に関する」研究委員会
昨年度に引き続き研究委員会を開催し、種々の社会問題や日本文化の変化の中で企業経営はどう進化するかについて議論、調査研究を行っている。外部講師からの事例研究を踏まえ、特にCSR(企業の社会的責任)、企業理念、職場環境、文化の影響などを焦点とした。 また、「社会文化の変化に対応する先進企業の社会的評価に関する調査」について委託調査を実施し、消費者から選ばれるエクセレントカンパニーとはどのようなものかを、消費者アンケートの結果も含めて探り、これを研究委員会での議論の材料とした。 本年度の総括として、2月23日に「第19回GISPRIシンポジウム 社会文化の変化と企業経営の進化−今望まれる持続可能な企業とは−」の公開シンポジウムを開催する。 年度末には以上を報告書にまとめ公表する予定である。 ■第19回GISPRIシンポジウム −今望まれる持続可能な企業とは− 開催案内 ■社会文化の変化に対応する先進企業の社会的評価に関する調査 概要 2.外部講師ご講演内容(事務局とりまとめ) (1)杉浦 勉 氏(丸紅経済研究所 顧問) 『Soft Power Superpowers』 5月に出版された著書“Soft Power Superpowers”の執筆部分についてご紹介。ソフトパワーとは強制力や資金力ではなく、魅力によって望むものを得る能力であって、「一国のソフトパワーは@他者に対する文化的魅力、A政治的価値、B外交政策の3つの要素から成る」(Joseph.S.Nye)。日本においてはポップ・カルチャーが世界でも優位であり経済発展においても重要性が拡大。世界の動向をみても、今後は文化的魅力の三要素である「品質」・「香味」・「感性」の3つが揃って製品やサービスが伸びていく。つまり「根源現成(=伝統回帰による創新)」のような考え方が重要であり、実際に企業が体現するためには、良い種子(製作者)・良い土壌(鑑賞者・消費者)・良い育成(政治支援・資金支援)の3つが必要である。 (2)田正澄 氏(ネスレ日本株式会社 取締役兼専務執行役員) 『ネスレの共通価値の創造』 ネスレはスイスに本部を置くグループ売り上げ10.5兆円の世界最大の食品飲料企業グループ。さまざまな社会問題への取り組みは、1企業ですべての分野には対応できない。ネスレは自社戦略に即した得意分野、特に原料生産者および消費者との共通価値を広める観点からCSRを行っている。@農業支援では61万人に無償の技術提供、例えば衛生的な乳牛の飼育指導などを行っている。A製造面では消費エネルギー削減、取水量の削減、人材育成など、B消費者へは、地域に合わせた購入しやすい価格・商品設定、食育活動などを行っている。これらの取り組みは、世界的な調査会社・投資会社・ビジネス雑誌などから高い評価を得ている。 (3)武田貞生 氏((財)日本規格協会 理事) 『ISOにおけるSRへの取り組み』 武田氏は5年前よりISO理事会日本代表を務めている。2001年よりCSR規格作成を開始して、企業だけにとらわれない考え方で(Cを除いた)SRとしてワーキンググループで検討し、2010年の発行を目指している。今回社会的課題についての初めての取り組みであり、産業界、政府、消費者、NGO、労働界などの多くのステークホルダーが参加して幅広く意見を反映しているため、包括的なガイダンス文書となっている。 (4)辰巳菊子 氏((社)日本消費生活アドバイザー・コンルタント協会 常任理事 環境委員長) 『今、グリーンコンシューマーは企業のこんなところまで見ています』 持続可能な社会を目指すために、持続可能な商品・企業を選ぶのは消費者であり、グリーンコンシューマーが増える(例:16%)ことが重要である。また、商品の原料採取から廃棄された後まで“商品の一生”を考えるのも大切である。そのためには商品・サービスを提供する企業と消費者のコミュニケーションさらにはコラボレーションが重要である。 (5)渡部 幹 氏(早稲田大学高等研究所 准教授) 『社会心理学から見た職場の問題構造』 「不機嫌な職場〜なぜ社員同士で協力できないのか」の著者の一人。2000年代に入ってからアメリカ型成果主義が日本型組織文化に導入された結果、「不機嫌な職場」が生まれたと考えられる。今後日本の組織文化に成果主義をなじませるには、@会社全体での啓蒙、A人事・評価制度の見直し、B社会的交換による「効力感」の促進、「重要な他者」の獲得、社内での「関係拡張」のトップダウンとボトムアップの両方からの取り組みが必要である。 (6)石田 寛 氏(経済人コー円卓会議日本委員会 専務理事 事務局長) 『本業を通じたCSR経営の実現に向けて』 経済人コー円卓会議(CRT)は、ジャパンバッシングを契機として1986年に日米欧の経済団体が集まって、スイスのコーにて開催され、その後年1回定期的に開催されている。1994年に策定した「CRT・企業の行動指針」では、日本から「共生(Kyosei)」、欧州から「人間の尊厳」、米国から「ステークホルダー」の提案が基になっており、経団連の企業行動憲章や国連のグローバルコンパクトにも生かされている。CRT日本委員会では、CRTの考えを基にCSR推進の企業コンサルタントを行っている。 (7)福川伸次 氏((財)機械産業記念事業財団 会長) 『今なぜ「新日本様式」なのか?−グローバル競争の中での伝統文化の見直し−』 2005年7月に経済産業省の提案により、2006年1月に「新日本様式」協議会が49企業、15団体、40個人により設立された。「新日本様式」100選は、「たくみのこころ」「ふるまいのこころ」「もてなしのこころ」という三つの「こころ」をベースにおき、それらと先端技術との融合や現代社会へ提案されているもの、また日本の独自性やオリジナリティが表現され、同時に日本の国際競争力を高め産業振興に役立つものとして、13名の有識者からなる評議員により選定された。 (敬称略、五十音順)
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