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ニュースレター
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2010年 4号
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Opinion | ||||||
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日本理化学工業はチョークメーカーですが、全従業員76人中56人が知的障害者で、その5割がIQ50以下の重度障害者が働いておりながら、国内の30%以上のシェアを維持し、チョーク業界のトップメーカーになっています。これは障害者それぞれの理解力に合わせて工夫された各工程の中で、役に立っている幸せを感じ、集中して一生懸命働いてくれているおかげなのです。 当社が障害者多数雇用を目指したのは、禅僧から「人間の究極の幸せは、愛されること、ほめられること、人の役に立つこと、人に必要とされることであり、福祉施設で大事にされることが人間を幸せにするのではなく、役に立ち人に必要とされていると言葉をかける企業こそが人間を幸せにするのです」との言葉をいただいたからでした。 当社には見学者が多くありますが、その中で、有名私立小学校5年生が見学に来ましたが、見学のお礼の手紙に次のことが書かれていました。「字の読めない計算もできない人たちがあんなに上手に手早く作業をしているのを見てびっくりしました。天の神様は、どんな人にも世の中で役に立つ才能を与えてくださっているのですね」と。私はその言葉は、その才能を引き出すのは周りの大人たちの責任ですねと念を押されたと感じました。なぜなら、神様は世の中で役に立つことが幸せだと思う人間を作ってくださって、役に立っている幸せが集中した仕事となり、その積み重ねが開花して才能となったのですから。小学生から企業の役割の重大さを気付かされたのでした。 また、ジャパンタイムズに知的障害者の雇用記事を載せるため来社されたハンガリー人の女性記者からいただいた言葉があります。「日本の企業は職人文化を持っているから、字の読めない人でもこうして企業の戦力にできるのですね。私たちヨーロッパではマニュアル文化の国で、文字の読めない人は一般雇用の対象になっていません。日本は字が読めなくても手取り足取り、その人の能力が発揮できるように対応しているからなのですね」と。職人文化を持つ中小企業の活躍の場がここにあるのだと気付かされました。 日本国憲法27条には、すべて国民は勤労の権利を有し義務を負うとあります。国はすべての国民に対してとしている以上、一般企業で働けない人だからと、訓練しているとはいえ施設で面倒をみてもらえばよいと放置している現状は許されないのです。 いま日本では、福祉施設で20〜60歳までの40年間ケアするとしたら一人2億円以上かかると言われています。もし日本がこのベルギーの制度を導入すれば、国は年間500万円の施設への支出のところ、最低賃金を年間150万円とすれば350万円の削減ができ、障害者は月12〜13万円の支給があるわけですから、グループホームに月6〜7万円の費用を払えば、生活のケアをしてもらって地域社会で自立ができます。企業にとっては、賃金は国が払ってくれるのですから、中小企業の職人文化を活用して、少しでも役に立つように努力すれば、役に立った分だけ利益となり、中小企業の経営体質を強化することができます。さらに、たまたま障害児を持ったご両親、ご家族にとっても障害児を持った苦労を一生背負わねばならないことから解放させてあげられます。 世界のグローバル経済競争の中で、大企業は特例子会社の制度の中で現在の障害者雇用でより頑張っていただき、一般企業で働けない重度の障害者については、ベルギーの制度を導入して全企業の90%以上を占める全国の心ある中小企業に働く場を提供してもらって頑張ってもらえば、皆が役に立って働ける共生社会ができるのではないでしょうか。 日本理化学工業株式会社:http://www.rikagaku.co.jp/ 『働く幸せ 仕事でいちばん大切なこと』大山泰弘 著 |
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