国連気候変動会合(ドイツ・ボン)参加報告
「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会第10および11回会合(AWG-LCA10、11)」および「京都議定書の下での附属書T国の更なる約束に関する特別作業部会第12および13回会合(AWG-KP12,13)」は、ドイツ・ボン(会場:Hotel Maritim Bonn)にて各々2010年5月31日(月)〜6月11日(金)(AWG-LCA10・AWG-KP12)および2010年8月2日(月)〜11月6日(金)(AWG-LCA11・AWG-KP13)に開催され、主に2013年以降の気候変動に関する国際的な枠組みについての議論が行われた。
ここでは、主に8月開催のAWG-LCA11・AWG-KP13を中心に報告する。
6月のAWGに引き続き、12月にメキシコ・カンクンで開催される第16回気候変動枠組条約締約国会議(COP16)での成果に向け、交渉が行われたが、各国からの修文案が相次ぎ、収束の方向は見られず、コペンハーゲンでの合意以前の段階に戻ったかの様相である。交渉全体にわたり、途上国が先進国に対し、COP16での京都議定書第2約束期間の決定、排出削減目標の大幅な引き上げや資金援助の増大等を強く求めつつ、途上国自身の緩和行動の透明性確保(MRV)等に対抗。一方、日本を含む先進国が、全ての主要排出国が義務を負う国際枠組みを目指して、途上国の緩和行動やその透明性確保を求めるという対立構造には全く変化が見られなかった。
会合風景(左:会場全景、右:プレナリ会場)
(1)条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会第11回会合(AWG-LCA11)
本会合は2007年12月にインドネシア・バリで開催されたCOP13において2013年以降の国際的枠組みを採択するために設置されたものであり、今回は第11回会合となる。
共有のビジョン、先進国・途上国の約束・行動および透明性の確保、適応、資金メカニズムのあり方、炭素市場、REED(途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減等)、セクター別アプローチ(国際航空・海運、農業)、対応措置等に関する協議グループがそれぞれ開催され、議長テキストを基に議論が進められた。
会合前に発表された議長テキストは、コペンハーゲン合意(CA)を踏まえた記述と、それに相反する記述が混在するものであった。途上国の一部は、CAは正式に採択された文書でないとし、CAに関する記述を全て拒否する主張を繰り返した。
CAを反映しようとする先進国とCAと異なる考え方に立つ文言を反映させようとする多くの途上国、双方の主張を含む膨大な修正案文となった。しかしながら、交渉そのものに特段の進展はみられなかった。
(2)京都議定書の下での附属書T国の更なる約束に関する特別作業部会第13回会合(AWG-KP13)
附属書T国の第一約束期間以降の約束を検討するプロセスである本会合は、付属書T国の削減目標(削減目標の水準、約束期間の長さ、基準年度)を中心に、森林吸収源、柔軟性メカニズム、対象ガス、京都議定書の約束期間の間の空白期間(ギャップ)がもたらす法的影響等についての議論が行われた。
途上国は、先進国の「歴史的責任」を根拠に、CAに基づいて付属書T国が表明した排出削減約束は全く不十分だとし、目標の大幅引き上げ(90年比40-50%減等)、目標達成のための手段(森林吸収源、メカニズム等)の利用制限もしくは禁止すべき等の主張を展開。
京都議定書第二約束期間について、多くの途上国からはこれを設定すべき、EUは引き続き一つの法的枠組を目指すが京都第二約束期間の検討にはオープン、日本およびロシアは、京都議定書の単純延長は受け入れられないと従来どおりの主張を繰り返した。事務局からは、最終的な解釈、決定は締約国自身が決めるとの発言があった。
最終日には、議論の進展や各国の意見を踏まえた議長による新テキストが配布された。
(3)次回会合の予定
次回会合は、2010年10月4日(月)〜9日(土)中国・天津にて開催される予定である。
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