1994年4号

第9回気候変動枠組み条約政府間交渉会議

 気候変動枠組み条約は、本条約の批准国が昨年1221日に条約発効に必要な50か国を越え、本年3月21日に発効することになった。去る2月7日~18日スイス・ジュネーブで開催された本条約に関する政府間交渉会議(INC)は、条約を実行していくための具体策を検討するためのものであり、来年3月の締約国会議までに決定しなければならない。

 本会議には、135か国の代表と57NGOなどから500名を越える人々が参加しており、日本からは通 産省、外務省、環境庁、気象庁、資エネ庁などから15人が出席した。会議は、約束事項を検討するワーキンググループ(以下WGと記す)Iと資金問題を検討するWGIIが並行に進められ、随時全体会合やOECDG77+中国の会合が開かれた。

 以下に要旨を記す。

(1)WGI(約束に関する事項)

 5つの案件について討議が行われた。

 1)メソドロジー

 IPCCより温室効果 ガス(以下GHG)目録作成のためのドラフト・ガイドラインが提出され、このガイドラインに沿って各国は情報の送付を行うことで合意した。ただし、比較が可能であることを条件に他の方法の使用も承認された。他に地球温暖化指数(GWPS)の使用は各国に任されること(最新版は199411月のIPCCの特別 レポートで提示)、バンカー油からの排出も目録に含めることが合意された。

 2)情報の送付

 先進締約国が9月21日までに提出するGHG削減のための政策や目録についての情報を作成するに際し基準とするガイドラインが合意された。このガイドラインは、一貫性、透明性、比較可能性の3つを基本理念としており、排出源と吸収源を区別 しガス毎に明記することや対象とするGHGとして、最低CO2CH4N2Oの3つ、可能ならCONOxVOCsPFCsHFCsSF6も対象とすることなどが示されている。すでにイギリスとカナダが提出済みである。日本は、先の日本版アジェンダ21の作成時と同様、NGOを含め広く民間の意見を聴きながら本年6月中には最終版を完成し、次回会合には間に合わせたいとしている。

3)補助機関の役割

 2種類の補助機関について、その役割分担がほぼ合意された。IPCCとの重複を避けることや先進国と途上国の配分、地理的バランスなどを考慮すべしという意見が出され、運営資金の問題を含めて次回会合で議論される。

a)SBI(Subsidiary Body for Implementation)

 送付された情報を評価し、締約国会議に対して政策的な助言を行う補助機関。その他に資金供与や技術移転における適格性の判定も行う。

b)SBSTA(Subsidiary Body for Scientific and Technological Advice)

 政策から離れた科学的、技術的事項についてSBIや締約国会議に助言する補助機関。その他に途上国のキャパシティビルディングやトレーニングについても助言する。

4)約束の妥当性

 「今世紀末までに従前の状態に戻す」という本条約の約束は、現在の科学的情報によれば、本条約の目的である気候変動を防止するためには充分ではなく、追加的措置が必要であり、2000年以降のGHG削減の目標や措置について何ら普及していない点からも妥当性はないとの意見が多くの国から出された(最終判断は、締約国会議に委ねられる)。このため、今後は条約の改正、共同声明、議定書の作成などを通 して2000年以降の目標や基準を設定していくことになりそうであり(アメリカ、ドイツ、ニュージーランドなどが議定書の交渉を支持)、今後の取り扱いについて次回議論する。4月30日までにこのテーマについてのさらなるコメントを事務局に送付するよう求められている。

5)共同実施

 本テーマは政治色が強く、継続審議となった。出された意見としては、先進国同士で行うべき(G77)、条文には共同実施の範囲を規定しておらず、制限すべきでない(ノルウェー、オランダ)、共同実施によるGHGの削減は、コミットメントの5~10%以内とすべし(ナウル共和国)、共同実施は追加的なものとすべし(EU、アメリカ)、パイロット・フェーズで経験を積むべし(EU、アルゼンチン、ニュージーランド)など。日本はパイロット・フェーズを、1994年後半から1997年までの3年間を目途に早急に実施すべきこと、また、そのために実施済の共同実施プロジェクトの報告を事務局は求めるべきであることなどの意見を述べた。今後は本会合の討論などを踏まえて、4月30日までに各国からさらなるコメントを受け、事務局で案を作成して各国に送付することになっている。

(2)WGII(資金に関する事項)

 GEF(地球環境基金)の改組問題が決着しておらず、また政治的要素が強いため継続審議となった。

1)GEFの利用

 3月のGEFの会合で改組問題の決着を働きかける。

2)資金供与の適格性

 すべての活動に資金供与が自動的に行われるわけではなく、資金供与をスムーズに行うため途上国からの早急な情報の送付を求める先進国と、情報の送付がなければ援助がないのは困るという途上国の意見が対立した。結局、途上国からの情報送付の内容やフォーマットを明確にするために、次回会合までに途上国が専門家会合を開き、また事務局が文書を作成することで合意した。

(3)今後のスケジュール

1)1994年8月22日~31日   第10INC(ジュネーブ)
2)1995年2月6日~17日   第11INC(ニューヨーク)
3)1995年3月28日~4月7日 第1回締約国会議(ベルリン)

 

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