1. 日時 平成7年11月6日(月) 13:30~17:15
2. 場所 日本学術会議(東京都港区六本木)
3. 主催
(財)地球・人間環境フォーラム、(財)地球産業文化研究所、環境庁、
通商産業省
4. 後援
外務省、農林水産省、運輸省、建設省、科学技術庁、気象庁、日本学術会議
5. プログラム(敬称略)
趣旨説明
環境庁地球環境部長 浜中 裕徳
通商産業省大臣官房審議官 片山登善男
IPCC第2次評価報告書に関する近況
第1作業部会(温暖化の科学的知見)
気象研究所
鬼頭 昭雄
第2作業部会(温暖化の影響と対応策)
国立環境研究所 西岡 秀三
通商産業省参与 塚本 弘
第3作業部会(温暖化の社会経済的側面
)
関西学院大学 天野 明弘
特別講演 "Possible
Climate Change"
IPCC議長
B.ボリン
質疑応答
6. 概要
IPCCは、1992年11月から第二次評価報告書の作成に取り組んでいるが、本年12月中旬にローマで開催される第11回総会での採択にむけて、作業は最終段階にはいっている。10月にモントリオールで開催された第2ならびに第3作業部会の総会でそれぞれの作業部会の報告書が採択されたのを機に、題記講演会を昨年に引き続き(財)地球・人間環境フォーラムなどと共同で開催し、産・官・学の各界からの270名の参加を得た。
本年は特別講師にIPCC議長のバート・ボリン教授をむかえ、第1から第3各作業部会で作成に参加している諸氏からの各作業部会報告書の概要の紹介に加え、炭素循環を初めとする気候変動一般 についての講演が行われた。
各作業部会報告書の主なポイントは以下のとおり。
温室効果ガスの濃度は依然として増加している
気候は過去1世紀にわたり変化してきた
様々な変化が気候に対する人間の影響を示唆している
将来気候がさらに変化することが予想される
多くの不確実性が依然として残されている
前回の報告書作成以降での新たな知見で大きなものは、気候変動に影響を与えるのは温室効果 ガス(温暖効果)だけでなくエアロゾル(大気中の硫酸塩などの微粒子=冷却効果 )であることが解明したことである。温室効果ガスの効果にアエロゾルの効果 を併せて考えると、強硬な政策をとらないときの2100年までの気温上昇は2.0(1.0~3.5)。C、海面 水位上昇は約50(15~95)cmと温室効果ガスの影響のみで評価した前回の計算値3.0(1.5~4.5)。C、約65cmを下回る数字となった。
前回の旧第2作業部会が担当した「影響と適応策」に関しては、国連気候変動枠組条約第2条の「気候系に危険な人工の影響を与えることを防止する水準」に有用な情報を与えることをねらいとして「脆弱性」ならびに「闇値」の解明に重点をおいて執筆がすすめられた。
前回の旧第3作業部会が担当した「緩和策」に関しては、「エネルギー供給」、「産業」に加えて「運輸」、「民生」の両分野においても検討がすすめられた、この分野においては、2100年まで極力定量 的な解析が試みられ、単なる豊作の列挙ではなく技術的に到達し得る範囲まで言明したことが大きな特徴といえる。
新第3作業部会では、前回の報告書でカバーしなかった「社会経済側面 の評価」に取り組んだ。同報告書では、第1ならびに第2作業部会が取り扱っている自然科学・工学の範囲を越えて、地域間ならびに世代間の公平性、適応・緩和へのコスト評価、政策手段の経済的評価などに取り組んだ。この分野での報告書は今後の世界的な方向のあり方に重大な影響を与えるものであるが、今回の報告書はあくまでもIPCCの目的を逸脱せず、各項目の科学的側面 からの評価を純粋に行っている。