1996年6号

1996~97年のIPCC活動

 IPCCは、昨年の12月に第二次評価報告書(SAR)を採択し、1993年11月に始まった報告書作成に関連する一連の作業は終決した。従来の予定では、1996~97年は報告書の作成作業は行わず、SARの広報を行うワーク・ショップを各地で開催するとともに、1998年から執筆を開始し2000年の完成を目標とする第三次評価報告書(TAR)の内容決定およびそれに伴う作業部会および議長団の再編成などの作業を行うことになっていた。

 一方、国際連合気候変動枠組条約が1994年3月に発効したことにより、締約国会議が組織され、条約9、10条に基づき締約国会議の2つの補助機関(SBSTA:科学的及び技術的な助言のための補助機関、SBI:実施のための補助機関)も発足した。また、昨年開催された第1回締約国会議(COPI)において2000年以降の目標について1997年の第三回締約国会議迄に定めようというベルリン・マンデートが採択され、この検討を行うアド・ホック・グループも組織された。

 締約国会議発足後は、SBSTAの活用が期待されるため、条約の実施に直接関連する科学的調査はこちらに移行され、SBSTAとIPCCの作業分担が行われると予想されていたが、SBSTAがその組織編成関連などで立ち上がりが遅れておりなかなか実質的な活動が開始されないため、危機感をもった枠組条約締結国会議事務局からIPCCに当面 の作業を依頼することが補助機関の会議で提案され決議された。

 この依頼に対してどう対応するかを決定するため、3月末にIPCCのビューロー会議が開催され、枠組条約補助機関からの作成依頼への対応を含む今後のIPCC活動の方向について検討が行われた。この結果

・補助機関の要請に応えて技術的報告(Technical Paper)ならびに特別報告(Special Report)を作成する。
・技術的報告は、SARに付帯する作業と位置づけ、SARの範囲内で執筆する
・特別報告は、SARでカバーしきれなかった部分について追加作業を行う
・ボリン議長が辞任の意思表明を行い、これに伴い新議長の選出を行う
・技術的報告と特別報告はSARと関連性が高いためボリン議長が取り纏めを行い、新議長はTAR関連に主力を注ぐ

ことなどが決定された。補助機関の要請により作成することが決定された技術的報告のテーマと完成目標は以下のとおり

・Policies and Measures(AGBM) 96/11
・Regional Impacts of Climate Change 96/ 2
・Methodological and Technical Aspects
  of Technology Transfer
97/ 2
・Modeling of Stabilization Scenarios
  towards Addressing Article 2
96/11
・Implications of Emission Limitations 96/11
・Simple Climate Models 96/11

 SBSTAとIPCCの関係については、科学的評価などの実質的作業はIPCCが大部分を行い、SBSTAはその成果 を活用するという方式が確立されつつあり、IPCCの重要性が高まってきているといえよう。

 

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