近年のアジア地域の急激な経済成長は、相互依存を深めつつある日本にとっても大変に重要である。しかし、この経済成長を制約する要因として、今後のエネルギー需給と環境負荷に関する問題があり、アジア地域は、特に厳しい状況が予想されている。また、アジア地域は、温暖化、酸性雨等の地球環境問題の解決にとっても非常に大きな懸念要素である。
これらの問題の解決へのキーの一つとして、先進国から途上国への「環境技術の移転」による協力が期待されている。しかし、多くの途上国において、環境問題が貧困をベースとして生じている事から、経済成長を阻害する事なしに実現する事が必須であり、これが大きな課題となっている。また、対象国において技術の採用段階での法的、経済的、社会組織的な諸条件との適合も課題の一つであり、実効性を上げていくには、先進国と途上国との共同作業として十分な情報交流を図りながら進めていく事が重要である。
本委員会では、環境技術移転の現場の情報調査を行うとともに、アジアの発展途上国への日本(企業、諸機関、政府等)の環境協力に関する諸課題を抽出し、これらへの対策を踏まえた今後の我が国の環境協力政策のあり方を検討する事を目的とする。研究期間は、平成8年4月より平成9年8月までとし、月1回程度の頻度で実施する。
(1)アジア諸国における環境協力ニーズ/中国およびアセアン等
(2)日本の環境協力諸機関等の活動の現状と課題
(3)欧米諸国、国際機関のアジア諸国への環境協力への取り組みと現状およびこれらとの連携のあり方
(4)アジア諸国に進出している日本企業の環境への対応の現状と課題
(5)環境協力政策の今後のあり方について(まとめ)
座長 森嶌 昭夫 上智大学法学部国際関係法学科教授
委員 明日香壽川 電力中央研究所エネルギーシステムグループ
植田 和弘 京都大学経済学部教授
木下 俊夫 国際協力事業団企画部環境・女性課長
木下 俊彦 日本輸出入銀行海外投資研究所顧問
黒坂三和子 世界資源研究所上席研究員
田中 秀尚 三菱総合研究所科学・技術本部ニューサイエンス部第三室長代理
中西 準子 横浜国立大学環境科学研究センター教授
野田 真男 国際環境技術移転研究センター企画部長
長谷川 弘 日本工営?環境部
向井 保 新エネルギー・産業技術総合開発機構理事
(8月より有重有幸環境技術開発室長へ交替)
これまでの論議では、主に企業による環境技術移転に関し、現場サイドからの事例を中心に検討を進めた。
平成8年4月 本委員会の研究内容および進め方
5月 火力発電所における環境対応技術
電源開発(株)火力部火力技術課長 野口嘉一
中国における環境技術移転の問題点について
(株)荏原製作所環境プラント事業部副事業部長 廣田健 他
6月 環境装置技術における国際協力
(社)日本産業機械工業会国際環境技術協力センター顧問 名取眞
発展途上国への環境技術に係わる人材育成の現状と問題点
野田真男委員
7月上旬 アジア途上国進出時におけるパテント取得の現状と問題点
国際パテント貿易(株)代表取締役会長 三浦鉄生
アジア地域における排煙脱硫技術移転の現状と問題点
三菱重工(株)環境プラント部部長 小竹進一郎
7月下旬 中国における環境技術移転の現状と問題点
東京大学先端科学技術研究センター研究員 金淞
日本の公的機関(輸銀、JICA、OECF)の地球環境関係プロジェクトの
審査体制およびファイナンス
日本輸出入銀行海外投資研究所顧問 木下俊彦