本委員会は、経済発展と環境保全との両立に悩むアジア地域の途上国への環境協力の一環として、環境技術移転に関し、具体的な政策へつながる提言を見いだす事を目的としている。本中間報告は、今後具体策へつながる提言へと議論を進めていく上でのたたき台としてまとめたものである。
論議を進める上で「環境技術移転」に関わる重要項目を、大きく「情報」、「資金」、「制度他」の3つに分類した。前半の議論では、主に中国を対象として「情報」、「資金」に関して検討した。
電子メディアによるデータベースに焦点をあて検討を行った。アジアの途上国においては、環境分野は、現状では、研究・技術論文データベースの利用等が一部に見られるがあまり活用されていない。この原因、背景は以下と考えられる。
a) 一般的に途上国では、環境技術開発/移転へのインセンティブが低い。
b) アクセス可能な情報は技術情報が中心であり、利用者が限定される。
c) 情報公開の必要性に対する意識が低い。
d) 情報通信インフラが未整備な地域が多い。
(1)データベース構築の現状
すでに、多くの国/機関が環境技術の情報整備を開始しており、IEAでは従来からの技術情報データベース(ETDE)に加えて'90年から実証済み技術データベース(CADETT)、'95年からIEA温室効果
ガス技術情報交換事業(GG-TIE)の運用を開始している。またUNEPでは、世界各国の環境技術データベース(UNEP/IETC)の構築が推進されている。日本ではAPECバーチャルセンターが'97年4月から運用開始予定である。また、中国においても、国家環境保護局と清華大による国内の環境情報ネットワーク構築のプロジェクトが進行中である。
(2)既存データベースの課題
上記の各データベースは環境技術の内容、改善効果
、企業名等が主であり、相手国側のプロジェクトニーズ、プロジェクト資金の確保の方策、プロジェクトの成功・失敗例、推進のためのノウハウ情報、コストベネフィット情報、他技術とのパッケージング等のプロジェクト推進に必要な情報は不足している。
検索機能が十分でない。また情報利用からプロジェクト化までをフォローアップするコンサルティング機能を備えたものはまだない。
途上国側の通
信インフラ等のハードの整備は不十分であり、アクセスが可能な組織/人員も限られる。インフラ整備への支援とともに通
信メディア以外の情報交流手段についても検討が必要である。
途上国の情報ニーズ発掘、利用率向上のための措置が不足している。
(3)データベースシステム推進のための施策
情報インフラが整備されている組織を活用する等の専門の窓口の整備。
既存の技術情報に加え、上記(2)の1.
に示した内容等の付与。
検索機能を充実させると共に、ニーズ/シーズのマッチング、プロジェクト推進のためのコンサル機能、これらの機能を有する仲介組織(Intermediary)となれるコンサルタントに関する情報の付与。
データを提供する側における用語の定義やデータベース構造等の基準化。
他のデータベースとの連携および役割の分担。
(1)途上国における資金調達の現状
途上国の企業が環境保全のための投資を行う場合、一般 の設備投資と同じくequityまたはdebtによって資金調達を行う。ただし、何らかの優遇政策が途上国政府、技術の送り手である先進国政府、国際機関などによってなされるケースがある。
(2)途上国における資金調達の課題
途上国では、企業の大部分を占める中小企業による環境保全投資をいかに進めるかがポイントとなるが、現実には以下のような問題点があるため進んでいない。
中小企業は一般
的に営業利益が小さい(留保が小さい)。
金融機関の融資条件に疎く、詳細なビジネスプランなどの作成能力がない。また、コンサルタント・フィーなどを払う余裕、習慣がない。
資金があっても環境保全技術のような比較的未確立で新しい技術に関しては、大きなリスクを感じる。
融資側が、環境保全技術導入による長期的メリットではなく、短期的な収益や担保物件を重視する。
特に商業銀行は、リスクや大きな取引費用回避のために、大企業への融資を優先する。また、途上国では「市場」が不安定なことが長期投資に影響する。
政府・援助機関と中小企業との仲介をとる民間コンサルタントが、出来高払いで報酬を受けるために、大きなプロジェクトが優先される。
(3)資金調達推進のための施策
環境技術移転促進のためのより具体的な施策は、一般 的に以下の様に分類される。