委員長:森嶌 昭夫(上智大学法学部教授)
平成9年度「アジア地域における環境技術移転」研究委員会は、平成10年5月に第9回委員会をもって終了した。委員および外部講師による合計10題の講演とそれに基づく活発な議論が行われた。このたび、海外調査結果
を含む本委員会活動の成果が取りまとめられ、報告書として刊行されたので、以下にその概要を紹介する。委員長はじめ、ご協力いただいた執筆者の方々へ深く感謝したい。
はじめに
急激な経済成長を遂げつつある東アジア地域において、これに伴って増大する環境負荷の問題が大きな懸念事項となっている。この解決策の一つとして、環境技術移転の実施が重要であり、日本の貢献が期待される分野となっている。
本調査研究では、平成8年度に引き続き、環境技術移転に関する基本的考え方を踏まえ、環境技術協力を推進するための方策について検討することを目的とした。昨年度の成果 を踏まえ、発展途上国へ技術移転する上で欠かすことのできないファクターである「制度」と「特許・ライセンス」に関しての議論を行った。また、米国、欧州等の先進国の政策も参考にしながら、途上国への環境技術移転に関して、世界の潮流となっている民間の活動支援のあり方を中心に調査研究し、その上で、必要となる技術移転のプロセス、促進のためのキーワード等を提示することにより、本報告書のとりまとめを試みた。
技術移転というものは、そもそも、単にあるA国からB国へ移るということだけではなく、相手国側へ移転されたものが広く、その国の中で共有されるためには、その移転した技術が広がっていく仕組みに持っていかなければならない。また、民間の資金をどのような形で技術移転を促進するような方向で活用させるかであり、資金供給の仕組みが重要である。さらには、制度、特許・ライセンスとの関係においては、日進月歩する先進国の技術が途上国側へ移転される際に、どのようにその知的所有権が保護されるかである。
技術移転の現状と問題点については、これまでの委員会活動を通 じてある程度の輪郭を把握できたが、本年度の委員会活動を通じて、技術移転の問題、資金の問題と知的所有権の問題を絡めて、具体的にどのように技術移転を活発化させていくべきかについての方向付けができたものと考える。本報告書が、今後の日本による環境技術移転協力を推進する上で、何らかの参考になればありがたい。
はじめに | (森嶌座長) |
第1章 | 技術移転に関する現状 |
1.情報 (事務局) | |
2.資金 (小西 彩) | |
3.制度 (明日香 壽川) | |
第2章 | 環境協力の問題点と課題 |
1.開発・環境と日本の協力 (小浜 裕久) | |
2.途上国での発電効率向上への協力 (井上 寿郎)・/FONT> | |
第3章 | 環境保全産業の振興 |
1.中国における環境保全産業 (事務局) | |
2.日本における公害防止のための公的融資制度 (小西 彩) | |
第4章 | 環境保全および技術移転に関する欧州での取り組み(市川のぶ子:欧州復興開発銀行環境エコノミスト) |
第5章 | AIJ(共同実施活動)/JI(共同実施)/CDM(クリーン開発メカニズム)/EmissionTrading(排出権取引)の現状と課題 |
1.温暖化対策協力プロジェクトの分析 (明日香 壽川) | |
2.AIJ/JI/CDM/Emission Tradingに関わる論点 (明日香 壽川) | |
3.AIJ、JI、CDMとの関連での今後の協力のあり方 (井上 寿郎)・/FONT> | |
第6章 | まとめ (明日香 壽川) |
座長 | :森嶌 昭夫 | 上智大学法学部教授 |
委員 | :明日香 壽川 | 東北大学東北アジア研究センター助教授 |
:井上 寿郎 | 電源開発株式会社国際事業部審議役 | |
:小西 彩 | 海外経済協力基金(OECF)業務第2部業務第3課課長代理 | |
:小浜 裕久 | 静岡県立大学国際関係学部教授 | |
:近藤 孝嗣 | (財)国際環境技術移転研究センター(ICETT)企画部長 | |
:相馬 哲夫 | アジア生産性機構国際事務局工業部長 |
(敬称略、所属・タイトルは平成10年5月現在のものです)