中国側から銭易・清華大学環境工学部教授(中国側共同議長)を含むWG委員4名が参加し、外国側から清木・(財)地球産業文化研究所専務理事(外国側共同議長)を含むWG委員4名、他が参加した。
本ミーティングのテーマは、中国の郷鎮企業の環境問題とその対策についてであり、参加者は、郷鎮企業の現状分析、郷鎮企業へのクリーナープロダクション導入のための政策提言等を含むチャイナカウンシル本会議へ提出する活動報告書につき検討を行った。
本報告書については、国連環境計画・産業環境部(UNEP-IE)が中国でクリーナープロダクションのプロジェクトを既に実施し、その結果 を収集したケーススタディーの幾つかを事例として引用する。また、クリーナープロダクションに関するデモンストレーション・プロジェクトの勧告部分をより具体化するため、UNEP-IEが提案している、選定された省レベルでの政策形成、実施条件の整備と実施、他の省への普及を図るデモンストレーション・プロジェクトの承認をチャイナカウンシル本会議へ勧告する、という点を報告書に加えることとなった。
次いで、次年度以降の作業計画では、西暦2001年までを4つのフェーズに分け、第1フェーズでは、利用可能な資金をベースに、(1)今回の勧告の深化、(2)ライフサイクルアセスメント、循環型経済システム(リサイクル)の分析といった新分野の検討を行うこととなった。次回のWGミーティングは、来年2月に中国国内において、UNEP-IEのクリーナープロダクションのデモンストレーション・プロジェクトの候補地で開催される予定である。
クリーナープロダクションWGによる郷鎮企業の現状分析及び政策提言内容を十分活用してもらう目的で、「郷鎮企業のクリーナープロダクション・ワークショップ」を開催した。国家環境保護総局(SEPA)、山東省、江蘇省、浙江省、山東省威海市環境保護局各代表、山東大学、山東省等の郷鎮企業(化学、革なめし、軽工業)幹部、清華大学環境工学部、他合計約70名が参加した。プレゼンテーションの主要な項目は次の通 りである。
山東省、江蘇省、浙江省各省の「郷鎮企業におけるクリーナープロダクション実施状況とその経験」
UNEP-IEの中国におけるクリーナープロダクション・プロジェクトの活動結果
中国郷鎮企業へのクリーナープロダクション導入促進
この内、「中国・郷鎮企業へのクリーナープロダクション導入促進」報告について紹介する。
郷鎮企業は、過去20年間にわたり、中国の経済改革と市場経済の発展に伴って急速な発展を遂げてきた。1980年から1995年の15年間を見ると、全産業の総生産高は18倍に拡大(年率21%成長)し、一方で郷鎮企業の生産高は同期間に100倍に拡大した。その結果 、郷鎮企業の生産高は、1995年時点で全産業総生産高の55%以上を占めるまでになった。
しかしながら、郷鎮企業はその急速な発展の影で、深刻な環境汚染問題を引き起こしている。国家環境保護局(NEPA)の調査によると、近年、中国全産業の汚染物質排出量 に占める郷鎮企業の比率が上昇している。1995年の郷鎮企業による廃水量 は、1989年に比較して121%、CODは246%、二酸化硫黄(SO2)は23%、煤塵は182%、そして固体廃棄物は552%、それぞれ増加した。
上記の環境汚染問題を改善し、中国経済の持続的な成長と発展を目指すためには、クリーナープロダクションの導入が必須であり、また、その潜在的な可能性はある。しかしながら、その導入に立ちはだかるバリアーとしては、以下の5点が挙げられる。
天然資源や環境保護の重要性とクリーナープロダクションへの理解・認識不足
経営資源の制約、旧式の環境保全設備機器、改善された機器を運転できる従業員の技術能力レベルの低さ
郷鎮企業向けのクリーナープロダクションのトレーニング・教育プログラムの不足
郷鎮企業においてクリーナープロダクションの実施を奨励する経済的インセンティブの不足
既存の環境保護法と規則が郷鎮企業の汚染物質排出削減そのもの(いわゆるエンド・オブ・パイプ対策の奨励)に焦点を合わせる傾向
郷鎮企業におけるクリーナープロダクションの導入を促進するためには、法制度の整備と、資源利用の効率向上と汚染物質排出削減のための財政的なインセンティブが必要である。また、郷鎮企業内部におけるクリーナープロダクション活動を成功させるためには、マネージャー層と従業員に対してのトレーニングと支援システムが不可欠である。
以上を踏まえて、チャイナカウンシル・クリーナープロダクションWGは、政策提言として以下を策定し、本年11月に開催されるチャイナカウンシル本会議へ報告する予定である。
1)郷鎮企業に対する法律面と規制管理の強化および施行能力の改善
郷鎮企業に適用される既存の環境保護法と規制の管理と施行を強化する。
現在の法律と規制を改正し、「エンド・オブ・パイプ」対策より、むしろクリーナープロダクション重視の新しい法律・規制措置に発展させる。
2)クリーナープロダクション導入に向けた強力な財政的インセンティブの創出
エネルギー、水、他の資源価格の引き上げにより、資源投入量 の削減につなげる。
排出汚染のペナルティー(排汚費)と産業廃棄物処理費用のレベルを引き上げる。
クリーナープロダクションのための直接的な財政支援措置(技術改善投資のための政府及び公的支援による民間資金貸付、投資に対する税額控除など)を拡大する。
3)郷鎮企業のクリーナープロダクション実施の能力拡大
郷鎮企業におけるクリーナープロダクションの経済、環境両面 のメリットを理解させる。
クリーナープロダクションを実施する郷鎮企業へのトレーニングと支援のための制度を設立する。
特定産業、または、特定地域(省)を対象としたクリーナープロダクションのデモンストレーションを実施し、政策提言の実効性のテストを行う。但し、郷鎮企業を含めた個別 企業レベルを対象として多くのクリーナープロダクションのデモンストレーションが既に実施されているため、UNEP-IEが提案する省レベルでのクリーナープロダクションの実施を推薦する。
以上
*1 中国政府は、環境と経済成長の調和が必要であるとの認識に立ち、環境と開発に関する中国と国際社会の協力促進を目的として、1992年に「環境と開発に関する中国国際協力委員会 ( CCICED: China Council for International Cooperation on Environment and Development ):チャイナカウンシル」を設立。第1回目のチャイナカウンシル本会議は同年4月に開催され、それ以降毎年1回開催されている。このチャイナカウンシルの目的を達成するため、クリーナープロダクションWGを含む作業部会 ( WG ) が設置され、年1~2回のミーティングを開催し、チャイナカウンシルに対する政策提言の策定を行っている。