京都大学 西村和雄教授を委員長に迎え、標記研究委員会を9月より発足させた。以下にその概要を報告する。
1.研究委員会趣旨
我が国がキャッチアップ過程を終了し、グローバルな市場競争時代を迎える中で、経済・産業総体として競争力を保持していくためには、経済・産業の客観条件の変化に対応しうる人材の供給が不可欠である。1990年代に日米の経済状況の明暗を分けた一因として、ベンチャー精神を持った人材の不足も指摘されており、「創造力」「高度な専門的知識」「旺盛な独立心」など、今まで日本人は不得手とされてきた能力を備えた人材を輩出する仕組みが必要である。
過去、画一的で組織に順応しやすい人は出てくるが型破りな人材は出にくいとの批判から、「一芸入試」などの大学改革が行なわれたが、必ずしも成功しておらず、かえって学生の基礎学力の低下をまねいているという指摘がある。実際、TOEFLの得点が初めてアジア25カ国中最下位 になる、大学生の基礎数学知識の低下といった状況が近年報告されており、我が国の大学・大学院等の高等教育の実態は、先進国はおろか新興国と比較しても見劣りする状況にまで悪化している。
21世紀の経済産業政策を考える上でも、基礎的な学力の上に深く根差した真の創造性と国際競争力を持つ人材の育成は、喫緊の課題と言える。
また、個人のレベルから我が国の教育システムを見ると、終身雇用制とも絡んで、自己の職業人生のやり直しを教育によって実現することは、現状では容易でない。
そこで本研究委員会では、21世紀初頭の四半世紀を念頭におき、新時代に即した教育・人材育成のあり方について検討する。
2.検討事項
(1)時代の変化に伴い、経済・産業界から求められる新しい人材像。
(2)現行高等教育の問題点(カリキュラム、入試、教育環境等の問題)。
(3)新しい人材の養成に必要な高等教育の内容%程度(必要に応じ、高等教育以前
の教育についても検討)。
(4)以上を踏まえた我が国高等教育制度の改革のあり方。
3.研究期間
平成11年9月~平成12年3月
4.研究委員会委員(五十音順・敬称略)
<委員長> | ||
西村 和雄 | 京都大学経済研究所教授 | |
<委 員> | ||
浦坂 純子 | 同志社大学文学部専任講師 | |
岡部 恒治 | 埼玉 大学経済学部教授 | |
苅谷 剛彦 | 東京大学大学院教育学研究科助教授 | |
倉元 直樹 | 東北大学アドミッションセンター助教授 | |
子安 増生 | 京都大学大学院教育学研究科教授 | |
中馬 宏之 | 一橋大学イノベーション研究センター教授 | |
戸瀬 信之 | 慶應義塾大学経済学部教授 | |
平田 純一 | 立命館大学経済学部教授 | |
八木 匡 | 同志社大学経済学部教授 | |
<アドバイザー> | ||
飯高 茂 | 学習院大学理学部教授 | |
上野 健爾 | 京都大学大学院理学研究科教授 | |
佐野 博敏 | (財)大学セミナーハウス理事長・館長 | |
浪川 幸彦 | 名古屋大学大学院多元数理科学研究科教授 | |
<オブザーバー> | ||
石田 浩 | 東京大学社会科学研究所教授 | |
掛林 誠 | 通 商産業省大臣官房参事官(基礎産業局担当) | |
冨浦 英一 | 通 商産業省大臣官房企画調査官 | |
山田 宗範 | 通商産業省大臣官房参事官(産業政策局担当) | |
横山晋一郎 | 日本経済新聞社編集局社会部編集委員 |
(文責 事務局 古見孝治)