IPCC第3次評価報告書(TAR)の緩和策部門担当の第三作業部会(WGIII)は、実際の対策を扱うという意味で技術的、社会的だけでなく、政治的色彩 の濃い部門である。昨年末からの専門家による査読プロセスが終わり、今回の代表執筆者(LA)会合は、これらの専門家によるコメントを反映した形で、また、章間の調整をする形で、いかにして第2次ドラフトは2000年5月はじめが期限であり、それ以降は政府および専門家の査読を経て、最終的な報告書(11月予定)が作成されることになる。
参加者
WG3のLAとRE(査読編集者)、議長団メンバーの総計約120人(約80カ国)。うち日本からは2章LA国環研森田氏、3章LA東農工大柏木教授、RE東大石谷教授、4章LA日本林業協会藤森氏、6章LA慶応大山口教授、10章LA慶応大和気教授、谷口副議長(第9章のRE兼任)の7人に加え、GISPRI松尾、田中が参加。
議論の概要―全体会合
Davidson共同議長から、今回のLA会合の位 置づけと留意すべき点が説明された。留意点は以下の通りである。
また、Metz共同議長から、専門家による査読コメントの取り扱いと再執筆の際の留意点が示された。
他に会合中の意見として注目すべきものは、横断的課題に関してより具体的な、明示的な指針を乞うものであった。これを受け、谷口副議長により最終日全体会合において、今後第二次ドラフトに関して各課題に関連するキーワードの使用法、定義などのクロスチェックを行い、LAおよびREに提供することが提案された。このクロスチェックの留意点(=第二次ドラフト執筆においての留意点)も同時に示された。今後GISPRIでは次回専門家査読コメント提出にむけ、このクロスチェックについて作業を進めることとなった。
TSU(技術支援ユニット)からExecutive Summaryを基にしたSPM(政策決定者向け要約)およびTS(技術要約)の第0次ドラフトが提出された。これをもとに、各章の会合では第1次ドラフトに向けたSPMの見直し、また、TSを参考にしてExecutive
Summaryの見直しを進めることとなった。
今回のLA会合の大きな進展として、章間に共通するキーワードを17列挙し、関連する章をグループ化し、各キーワードでリードする章(調整の責任を持ち、主に議論される章)を決め調整を行い始めたことが挙げられる。以下が、キーワードと関連章である(リード章は下線)。まだ、分類わけ自体や調整内容には問題が残るが、具体的な枠組みができたということができる。
各章ごとのLA会合
各章に分かれて、それぞれ100ページ近いコメント集と取り組みながら、コメントへの対応と、文章のリバイズが検討された。コメントは議論終了時、電子ファイルに保存されTSUに提出された。また、TSU作成によるSPMの第0次ドラフトの検討も行った。
その他の会合
今後予定されている下記に関する専門家会合の事前ミーティングが開かれた。
1999年の専門家会合に関する資料配布
1999年に開催されたIPCC専門家会合のサマリーが配布された。また、※印の会合についてはプロシーディングの完全版が配布された。
今後の第三作業部会に関する予定
本文2000年5月5日が第2次ドラフトの締め切り。5月19日に政府及び専門家査読者に配布。7月28日がコメント締め切り。8月11日にコメントのまとめがLAに送付。
SPMおよびTS: LAからの現ドラフトに関するコメントの締切りは2月27日。2回のテレコンファレンス(TSは一回)を経て5月5日に新ドラフト完成。5月19日に政府および査読者に配布。
第4回LA会合:南アフリカ、ケープタウンにおいて8月21~25日開催予定である。
アイゼンナハで続いて行われた部門別影響に関する専門家会合については、2月末のキューバで行われる発展性・公平性・持続可能性に関する専門家会合と併せて、次号ニュースレターにて報告予定である。
(田中加奈子)