深刻な学力低下への懸念など、日本の教育の危機が広く叫ばれている。本研究所においても平成11年度から「グローバル市場競争時代における教育・人材育成の在り方」研究委員会(委員長:西村和雄京大教授)を設置し、鋭意検討を進めている。こうした中、去る3月3日に日本の教育の在り方を問うシンポジウム(21世紀人材育成フォーラム主催、本研究所など後援)が京都大学で開催された。以下その概要を報告する。
(教育の基本に立ち返った議論を)
長尾真 京大学長は冒頭の挨拶の中で、中央教育審議会の委員として「初等中等教育と高等教育との接続の改善」に関する答申のとりまとめに参加した経験から、「教育の基本に立ち返ってその在り方を考えるというプロセスなしに、教育問題を現象論としてのみ捉えた対処療法的な議論に終始した。答申には多くの人々が満足していないという残念な事態になっている。社会や企業の立場からの教育現場へのフィードバックを含めて、大学や学校関係者だけでなく広く各方面
の専門家を集め、本質的に何をなすべきかをきちんと詰めることが大切」と強調した。
(強い危機意識)
シンポジウムでは、大学教育に直接携わっている大学人の立場から、日本の教育の現状について、厳しい見方や強い危機意識を持った発表が数多くなされた。学力低下の現状や学力そのものをどう捉えるべきか、理系大学教育や教員養成教育の現場で何が進行しているか、創造性教育のあるべき姿など、議論は広範なテーマに及んだ。ここでは、教育改革と「学力」の関係をめぐる議論を中心にポイントを紹介したい。
(学力低下の現状、学力とは)
(新学習指導要領の問題点)
(国民の意識を変える)
(文責 照井義則)