1. 概要
GLOBEは1990年に、カナダ政府、企業、研究所など、「環境(温暖化)とビジネス」に関わる数多くの組織の下に設立された財団であり、2年に一回の割合で大規模な会議を行っている。
今回の「GLOBE 2000」は設立から第6回目の会議にあたり、3月22日~24日に、カナダ・バンクーバーのコンベンションセンターにて行われた。また、GLOBE
2000においては、会議に併設する形で展示会[1]が行われた。日本からは、(財)地球産業文化研究所(西村直子 信州大学経済学部助教授および筆者)以外に、(財)地球環境戦略研究機関(松尾直樹上席研究員)、東京電力の細谷理事(経団連の自主行動計画に関して発表)、その他各種メーカーからの参加があった。
GLOBE 2000では、民間企業、研究所、政府等あらゆる視点から特に「温暖化とビジネス」の分析および問題提起を試みている。会議開催にあたっては、カナダのクレティエン首相が「GLOBE会議が、持続可能な発展に関わるあらゆる複雑な問題の解決策を議論できる場所になるであろう」というコメントをよせており、また全体会合においては、地球サミット(1992年、リオ)の時に中心的な役割を果
たしたアースカウンシルのモーリス・ストロングを議長に、カナダのアンダーソン環境大臣が「来たる21世紀に向けて、カナダが世界の最適なエネルギー使用方法(技術革新を含む)と持続可能な経済発展をリードしていくべき」という内容のスピーチを行った。
GLOBE 2000では全体会合の後、1)温暖化問題とエネルギー、2)環境ビジネス戦略、3)環境問題と世界市場、という3つの大きなテーマ別
に並行して議論が進められた。以下は、その中で参加した地球温暖化問題への企業の自主的取り組みや今後の経済的手法(特に排出権取引)にかかわるセッションの主要な議論を、トピックスごとにまとめたものである。
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写真-1
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GLOBE2000議長開会演説
演説はアースカウンシルのモーリス・ストロング氏 |
2. トピックス
2.1 カナダの早期排出削減クレジット制度(CEA; Credit
for Early Action)
京都議定書を遵守していくため、カナダでは連邦・州政府が、政策プロセスとしてNational
Climate Change Processを設立した。このプロセスには、カナダが議定書の帰結とそれを遵守していくためのオプション(障壁と機会)の検討のため、政府、民間企業、学識経験者、環境NGOから450人以上の専門家が参加している。
イシューテーブルとして、部門ごと(7テーマ)、および部門にまたがる問題(9テーマ)として、合計16の問題が提示され、またWGが設置されている(コンセンサス形成が目的ではない)。特に注目されるテーマは、「Credit
for Early Action」、「Enhanced Voluntary Action」、「Kyoto Mechanisms」、「Tradeable
Permit Working Group」であり、2000年3月末の連邦・州政府環境大臣合同会議において、特に早期対策に関するオプション・メニュー設定の最初の議論を行うことが期待されている。GLOBE
2000では、特に「Credit for Early Action(早期削減クレジット制度)」についての議論が活発であった。会議での主な議論は以下のとおりである。
●早期クレジット制度の京都目標を遵守するためのカナダの政策における位
置付けとしては、主要な取引制度などの導入には時間が数年はかかり、そのためには、それへの移行措置として、民間企業に早期行動へのインセンティブ(将来の利用可能性を保証)を設けた早期クレジット制度のできるだけ早い導入が必要である。
●カナダで、早期行動に関する現在出されている考えとしては、「ベースライン・プロテクション」と、「早期削減クレジット制度」が検討されており、後者のパイロット・スキームとして、現在2種類の「パイロット型早期削減クレジット」が提案されている。
●「パイロット型早期削減クレジット」は、Bristol型(まず2年間行い、カナダの数値目標の産業分の1%(2.8
Mt)、効率2%向上、将来のクレジットのディスカウント)とCovenants型(まず2年間行い、ほとんどのコスト効果
的な削減量の政府による買い上げを行う)。
●これらの「パイロット」スキームの短所としては、将来の政策や削減の価値に関する確実性を上げるわけではない、短期的過ぎる、パイロットにしては複雑すぎる。パイロットではなく最初から正式の早期クレジット制度を立ち上げるべきである。また、パイロットは、スキームの信頼性に欠けるためそれによる削減量
はほとんど期待できない、といった産業界や研究機関からの不満の声があげられていた。
●これらの3つの提案は、産業、NGO合同のCEERP (Canadian Early Emission
Reduction Program)に大きく依存している。
●早期削減クレジット制度を実現・運用していくにあたっては、以下のような点を明確にしなければならない:
1) 早期クレジット制度専用のレジストリーの確立の必要性(リスク回避のため)
2) 数量化、文書化、パフォーマンスの証明
3) 排出量測定方法
4) バウンダリー定義
5) リーケージの考慮
6) 削減量の追加性
●一方、ベースライン・プロテクションと早期行動記録にはレジストリーが必要と認識されている(政府を待たずに民間で行っていこうという動きもある)。
●カナダにおける自主協定のレジストリー制度の役割を果たすVCR[2]は、政府は推している(評価している)側面
があるが(カナダの温暖化対策政策パッケージ全体の中の位置付けとしては大きい)、民間企業の立場から見れば、それによる「追加的な」削減はほとんどなく、単なるデータベースとしての位
置付けでしかない。
●将来、そのものが早期削減クレジットのデータベースとなる期待は、産業界にはほとんどない。早期削減クレジットのデータベースは、既存のVCRよりもはるかに充実したものでなければならないという認識が強く、現在の関心事は「ベースライン・プロテクション(現在の排出削減努力によって将来の割当量
などで不利益を被らないようにすること)」[3]の方法。
●VCRへの参加企業や団体は多い(1000社弱)が、その「最低水準」のデータ提出要件を満たしているのは、1割程度にすぎない。
●北米においては、産業界と政府とのパートナーシップの関係はかなり薄く、たとえばVCRによって、将来のクレジット獲得などのインセンティブは、ほとんどないのが現状である。
●一方、米国における自主行動のレジストリー制度を規定している、エネルギー政策法1605(b)は、法的根拠などで明確化されているため、VCRよりは機能していると評価されている。
●早期削減クレジット制度創設の動きは、むしろ産業界から起こっていて、それは、VCRの流れとは、(独立で)同時並行的なものと認識されている。
●早期削減クレジット制度は、「パイロット」プログラムを考案中[4]だが、前述のように、民間企業への魅力に乏しい。理由としては、2年間と期間が短く、パイロットの効果
はあまり期待できない。政府支出コストを最小化させるものの、積極性がない。自主行動にかなりの比重があるものの、実際の資金的な支援や投資の意思は薄く、コミットメントと将来の方向性に関しては、不透明で一貫性のない政策面
のシグナルしか出していない(2年間、成長の余地なし、クレジットのディスカウント等)。
●カナダにおいては、CO2排出量の見通しはどんどん上方修正されてきているが(現状で1990年水準を13%オーバー。[5]京都目標は日本と同じマイナス6%)有効な対策は実施されておらず、政府の無策ぶりが強調されている。
●3月末に行われる連邦・州政府合同環境大臣会合でのトピックスのひとつとなっているが、その会合において大きな前進が見られるという観測はあまりない。
●現状では、政府はまだ早期クレジット制度にあまり積極的な姿勢を示していない。
●政府への期待として、京都コミットメント達成のためには、(補助金や)取引制度(アローワンス+クレジット)などの必要性の認識、明確な政策の方向性を示すシグナルを提示することが期待されている。
●早期行動の必要性としては、京都以降の枠組に向けての第一歩であり、CO2排出トレンドを下方修正し、長寿命で炭素集約的投資を軽減させ、世界に対してカナダのCO2排出削減に対する意思表明等の効果
が期待される。
●早期クレジット制度に関する歴史的な経緯:
大臣クラスコミットメント(1998年4月)→CEAイシュー・テーブル(1998年末)→CEERP共同(1999年3月)→大臣クラスコミットメント未達(1999年4月)→連邦・地方政府合同WG設立(1999年末/2000年初頭)→ベースライン・プロテクション・イニシアティブ(2000年1月)→連邦・地方政府大臣合同会議(2000年3月末)
●カナダの既存の民間主導排出削減クレジット取引制度であるGERT [6]、PERT
[7]は、1999年初頭にCredit for Early Actionにかかわるベースライン・プロテクションの方法に関して、政府のNAICC
(National Air Issues Coordinating Committee)に助言を求められ、2000年1月の連邦・州の環境/エネルギー大臣会合でアナウンスされたベースライン・プロテクションのドラフトに大幅に取り入れられた。
●GERTは、1999年7月から、プロジェクトの最初のレビューを行ってきている。GERTの技術委員会によるレビューを経ることによって、プロジェクトとスキーム全体の信頼性を増そうとしている。
●民間企業の排出権取引制度全般に対する意見として、成長のためキャップアンドトレード方式よりもクレジット方式を好む、製品のライフサイクルまで含めた寄与を考慮すべき、短期的な行動のインパクトやコストなどの不確実性(規制の枠組がはっきりしないためむしろ排出量
が増えているという傾向あり)も考慮すべきといった意見もあった。
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写真-2
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排出削減コスト報告 北米では、すでに温室効果ガス排出権取引(クレジット型)市場が存在する.Trexler and Associates Inc.というプロジェクト・ブローカーがプロジェクトによる排出削減のコストカーブとそのリスクについて分析結果 を発表した. |
2.2 カナダ国内排出権取引制度設計の議論
この問題は、Tradeable Permits Working Group (TPWG)によって報告書が2000年3月にリリースされた(執筆時点ではサマリーのみ)。このWGでは、一年前にリリースされた別
の政府組織であるNRTEEの同種のスタディーも踏まえ、強制的でキャップアンドトレードタイプの国内排出権取引制度のオプションを検討している。
その特徴は、オプションごとに排出源カバレージの広さを推定し、無償割当やオークションの場合に、国際競争力の問題や、資本ロスの補填問題を扱っていることである。その他、制度の法的な側面
、導入のリードタイムなども扱っている。このWGにおける検討の概要は以下のとおり。
●京都議定書の枠組が前提。批准しないうちには国内的に決定が行われる可能性は小さい。それまでは、さらなる検討が必要。
●18人の委員会のメンバー(連邦政府4人、州政府6人、産業2人(石油とアルミ)、電力2人、環境NGO
2人、学会1人、Climate Change Secretariat 1人)が個人資格で参加。
●低コストオプションからの実施のみならず、社会全体の消費パターンを変更することが期待される。
●政府主導ではなく、民間による実施が重要。
●排出量(源)のカバレージのオプションとしては、大規模排出者(下流部門)、上流部門(できるだけ広いカバレージ(カナダGHGsの75%)、エネルギー起源CO2のみ)、混合型
の3種類。
●割当のオプションとしては、カバレージの範囲の無償割当に、オークション(+収入の還流)を部分的に含んだ方法が望ましい。グランドファーザリングは資本ロスの補填に対応する方法であり、一時的で部分的なもの。国際競争力の点を重視するなら、「原単位
×現状のアウトプット(経時的;無償)」の割当方法がベター(特に途上国との競争を行う企業の場合)。
●残された課題:
1)割当に関しては、総量(資本ロスを重視)and/or原単位ベース(国際競争力を重視)。
2)WTO則との関係。
3)オークションと無償割当を混在させた場合の収入の還流の問題(+政治的受容性)。
2.3 米国の状況(北米における温室効果ガス排出権取引市場の実際)
●現在、米国の排出権取引制度につながる制度的枠組みは、エネルギー政策法(Energy
Policy Act)の1605(b)条項が、その法的なベースとなっている。これは、CCAPの自主協定イニシアティブであるClimate
Challenge(電力会社対象)とClimate Wise(その他企業対象)をサポートする条項になっていて、国内の排出削減行動やUSIJI(米国のAIJスキーム)のクレジットを登録することになっている。法的には、Title
XVI of the Energy Policy Act、 Section 1605 (a) は排出量の報告、Section
1695 (b) が排出「削減」量のデータベース作成(企業のボランタリーベース)となっている。現状での自主協定の形態は、各企業が、独自の方法で、DOEと協定を結ぶ形態となっている。
●連邦の酸性雨プログラムのSO2、NOXをはじめ、RECLAIM等多数の環境規制のフレームワークに基づいた排出権取引が行われている。SO2アローワンス市場の場合、規制が強化される2000年(Phase
II)から、年間排出可能量895万トンに対し、スキーム発足以降6年程度で6000万トンの取引量
があった。遵守は100%。
●GHGs排出権取引に関しては、上記のように、法的な枠組みが未成熟であること、京都議定書の制度や発効の可能性が不透明であることなどから、現段階におけるGHGs排出権やクレジット取引は、まだ非常に薄い(取引量
は、ブローカーの一つであるCanter Fitzgeraldで今まで13.5 Mt-CO2(等価))。取り扱われている商品は、クレジットの信頼性によって3段階程度に格付けされていて自主協定ベースの自己削減、USIJIクレジットなどの他、ノルウェーなどからも入ってきている模様である。リスクがかなり大きいため、価格は2ドル/t-CO2以下程度のかなり低いものとなっている。商品の種類はオプション契約が多く、主としてブローカーを介在したOTC
(Over-the-Counter)ベースの相対取引である。
●リスクのもととなっている不確実性としては、米国の京都議定書批准の可能性(議会の寄与大)、京都議定書の発効可能性、発効できなかった場合の次のプロセスの可能性、京都メカニズムの運用則、国内規制フレームワーク創設の可能性(議会の寄与大)、排出権の将来価格、プロジェクトが将来認められる可能性、早期削減活動がむしろ負の方向に効く可能性等。
●その一方で、積極的企業の理由としては、株主に対する将来の規制強化への現状での対応(規制へのリスクヘッジ)、いくつかの主要企業によるGlobal
Climate Coalition(温暖化対策にネガティブな企業の連合)脱退、京都議定書の「息子」は批准されるであろうという期待、世界全体の温暖化対策への方向性、Low
Hanging Fruitが熟れてしまう、遵守コストは時間が経つにつれ急激に上昇する、多国間リスク緩和等である。米国なしで京都が発効する危険性(ビジネスチャンスの喪失)、早期行動のクレジットが喪失してしまうおそれ
等である。
●買い手の現状での思惑は、将来の規制フレームワークの潜在的なリスク回避、現状でのコストが将来よりもかなり低い見通
し、単なる有価証券取引としての側面、政策プロセスへの反映の期待、グリーン・パブリック・イメージ、グリーン・パワー市場の一部。コア・ビジネスに影響のない範囲で取引。買い手としては、電力会社、IPP、石油会社、投機家、各種製造業の企業(アルミ、鉄、セメント、紙パ、化学等)。
●売り手の現状での思惑は、キャッシュフローの創出、資産の現金化、さらなるプロジェクト資金、規制ができない場合をにらんでの収入創出、限界的なプロジェクトをフィージブルにする、クレジットのブランド名を高める、政策への影響の期待、グリーン・パブリック・イメージ。
●実際に取引されている「クレジット」は、「健全な」プロジェクトからのものがリスクが小さい「良い」評価を得ている。プロジェクトにかかわりリスクとしては、project
reliability, emission measurability, emission verifiability, delivery,
performance, additionality, counter-party credit risk, host-country
approval, leakageなどである。
●Ownershipが明確で、排出量のモニタリングが確実に行われ、確かなベースライン(方法論がしっかりしている)から削減があり、削減量
が数量的に第三者によって検証され文書化されていること、2008?12年(あるいは2000?12年)に削減があること、ホスト政府のバックアップがあること、確実な会社がスポンサーとなっていること、付随的な社会的便益があること、将来のCDMの認証手続きを意識したものになっていること
など。
●オンタリオ・パワーなどカナダの10のエネルギー企業のコンソーシアムであるGEMCo
(Greenhouse Emissions Management Consortium; http://www.gemco.org)は、Canterを仲介に、1999年10月に米国の4番目に大きな穀物保険企業IGF
Insuranceから、2.8 Mt-CO2(等価)のクレジット・オプションの購入を行った実績があるが(規模は過去最大)、かなり細かく、企業タイプごとに将来リスクの現在の市場価値評価や株式への影響評価を行っている。
2.4 その他の国の排出権取引制度状況
●オーストラリアでは、1999年内に4つの国内排出権取引に関するイシュー・ペーパーをリリースし、企業等からのコメントを得ている。今後のAGOの方向性としては、さらなるコンサルテーション、経済および社会的「調整」問題に関するさらなる分析、経済モデル開発、フィージビリティー・スタディーの報告書を政府に提出。
●デンマークでは、2000年から開始することになっていた電力部門対象の国内排出権取引制度(電力市場自由化法案パッケージの一部)は、欧州委員会が(電力市場自由化の)法案パッケージ全体を、域内競争の点からチェックしているため、一年程度遅れる。
●その他、政府レベルではないが、多国籍企業であるメジャーのBP AmocoとShellは、ともに類似の社内(国際)排出権取引制度を導入し、排出削減策として有効に活用している。これは、自らの自主目標達成のための手段であるという側面
とともに、排出権取引制度の活用方法に関する経験蓄積という側面もある。
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展示会場にて 政府機関,民間企業,非営利団体など70ケ国、約400件の出展があった.凍結した地球儀の上の "STOP GLOBAL WARMING" の標識が目を引いた.指さすのは筆者. |
3. まとめ
天然資源省の最新(1999年12月)の予測によると、カナダの1997年のCO2排出量
は1990年比で13%の増加(年率1.7%の増加)であり、現状の政策を維持した場合、2010年時点では1990年比29%増加(年率1.0%)と、京都議定書のコミットメントをはるかに上回る水準となると見通
されている。そのため、カナダが京都議定書における排出目標をこのまま国内措置で遵守するのは、非常に困難である(吸収源を除く)。そのような状況のなかでも、カナダにおける温暖化政策の基本的な考え方は、できるだけ低いコストの、かつ国際競争力の点などから、カナダ経済に悪影響を及ぼさない方法を選択することである。その意味で、カナダにおいては、排出権取引に代表される国際的な柔軟性措置や、それにつながる国内排出権取引などの早期導入が望まれていると言える。実際、(実現性は疑問視されているものの)国内における政策の検討は進んできており、さらに米国とリンクした形で、リスク管理およびビジネスチャンスという視点から、民間企業主導による市場の胎動は始まっている。
GLOBE2000会議は、このようなカナダの温暖化防止に対する取り組みを一堂に集めることにより、カナダ国内外における今後の方向性の論点の明確化および解決のための方向性に一石を投じたのではないだろうか。また、温暖化問題における北米、ヨーロッパ、アジアなどの国境を越えた国々の間での意見交換、および協力関係の促進、さらには温暖化ビジネスの機会創出の場所になったと言えよう。
(小川順子)
[1]展示会の内容としては、カナダ、アメリカ等の政府各機関およびカナダを主とした企業や団体等が、自らの温暖化問題への取り組みに関する広報(PR)活動を行っていた。
[2]VCR(Voluntary Challenge and Registry)のプログラムは、国全体の行動計画であるNAPCC(National
Action Program for ClimateChange)の気候変動政策の大きな柱として、1994年に導入された。初年は475企業の参加を表明し(カナダの主要企業のほとんどを含む)、1995年には600以上の企業の参加があった。1999年現在、それらの企業の半数以上が行動計画を提出している。
[3]2000年1月12日、連邦・州政府環境およびエネルギー大臣は、ベースライン・プロテクション・イニシアティブを補足することをアナウンスした。これは、1990年以降の早期行動の結果
、将来の規制フレームワークにおいて、(当該企業へのグランドファザリングによる排出割当が減るなどの形の)負の効果
が起こることを回避する目的。Credit for Early Action (CEA)とはやや性格を異にする。
[4] 早期削減クレジット制度そのものが、将来のフルスケールのキャップアンドトレード型の排出権取引制度(排出権取引WGで検討中)のパイロット的な性格を持つ。
[5]1997年のCO2排出量実績値は、1990年比+13%であり、最新の見通
し(現状政策シナリオ)では、+16%(2000年)、+29%(2010年)、+44%(2020年)。2000年のCO2排出量
に関して、CO2 排出量が+11%(1994年時点予測)→+13%(1995年時点予測)→+16%(1999年時点予測)と常に上方修正されてきている。
[6]Greenhouse Gas Emission Reduction Trading Pilot:主にカナダの西部での民間主導プロジェクトタイプの排出権取引パイロットスキーム。GERTの主要参加企業であるBC
Hydroは、0.5ドル/t-CO2での購入を広く求めている。
[7]Pilot Emission Reduction Trading:カナダ東部での民間主導型プロジェクトタイプの排出権取引パイロットスキーム。