明治学院大学国際学部長竹内啓教授を委員長とした標記研究委員会の2年に及ぶ研究の最終成果 が、このたび研究報告書としてまとまったのでその概要を報告する。委員長をはじめ各委員、関係諸機関の方々のこれまでのご努力・ご協力に対し厚く御礼申し上げたい。
本委員会は、当所の「2050年のサステイナビリテイ研究委員会」(平成9年度完了)の研究成果
として、今後21世紀に向けての最大の課題は衡平問題であるとの結論を受けて発足したものである。研究スコープは、21世紀初頭の東南アジア(タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア等)に置き、その社会問題の低減、市民社会の繁栄の為に、先進国の日本は今後どのような援助をすべきか、役割を果
たすべきかを導くことを目的としている。
研究初年度の平成10年度の研究では、主にアジアの経済発展と経済危機の総括、途上国の社会福祉問題・指標等にウエイトを置いたが、平成11年度ではさらに衡平問題に、より焦点を当て、経済発展のありかた、農業問題、援助の仕組み、国際金融、国際協力等々の多面
的な角度から取り組んでいる。また、国際機関等による従来の途上国援助が貧困緩和に真に効果
的なものであったかどうか疑問視されていることも鑑み、より貧困問題の本質に迫るべく、途上国の市民参加型の貧困改善事例調査研究も行った。ここでは紙面
の都合上研究報告書の章立てを紹介するに留める。
平成11年度「21世紀の開発戦略研究委員会」
研究報告書章立て
第1章 | 今後の経済社会の健全な発展について 竹内 啓委員長 明治学院大学国際学部長 |
第2章 | IMF改革の方向とインドネシア経済の再建 尾村敬二委員日本貿易振興会 アジア経済研究所経済協力研究部部長 |
第3章 | 持続可能な開発と国内・国際制度の役割 ―中国石炭燃焼問題への対応を素材として― 城山英明委員 東京大学大学院 法学政治学研究科助教授・行政学 |
第4章 | アジアの経済発展と環境問題 ―日本の役割と課題― 寺西俊一委員 一橋大学大学院経済学研究科教授 |
第5章 | 発展途上国の貧困問題と国際協力の課題 ―最近の主な動向を中心に― 中野 武委員 国際協力事業団国際協力専門員 (開発計画・援助行政) |
第6章 | アジアにおける保健医療援助の方向性について ―プライマリ・ヘルスケア再考― 林 謙治委員 国立公衆衛生院保健統計人口学部長 |
第7章 | 21世紀におけるアジア農業の課題 平島成望委員 明治学院大学国際学部教授 |
第8章 | 都市貧困地域の居住環境改善への戦略 穂坂光彦委員 日本福祉大学 経済学部経営開発学科教授 |
第9章 | 貧困問題と開発金融機関の具体的取組 ―社会構造面に焦点を当てて― 森 尚樹委員 国際協力銀行 環境社会開発室 環境2班課長 |
第10章 | 途上国への環境保全技術援助と今後の課題 吉岡完治委員 慶應義塾大学 産業研究所所長 |
第11章 | アジアの経済成長と貧困削減 ―実績と将来の開発援助戦略への示唆― 吉田恒昭委員 拓殖大学国際開発学部教授 |
特別寄稿
第1章 | 北九州市の国際貢献(途上国の環境保全技術援助)の経緯と現状 ―今後の国、地方自治体、企業、NGO等の役割、途上国援助のありかた― 中薗 哲 北九州市環境局環境保全部長 |
第2章 | 中国への環境技術移転事例とその課題 田米智加之 株式会社荏原製作所 エンジニアリング事業本部 海外事業推進室室長 |
第3章 | オイスカの開発協力の経緯と現状 亀山近幸 財団法人オイスカ事務局次長 |
第4章 | 地域開発におけるネットワーク作りとパートナーシップの重要性 ―途上国援助の新しい形 国際NGOによる都市間協力活動― Bernadia Irawati Tjandradewi専門委員 アジア太平洋都市間協力ネットワーク (CITYNET)事業課長 |
貧困・都市問題改善事例調査より
第1章 | アジアにおける貧困の緩和と解決のための戦略 Bernadia Irawati Tjandradewi専門委員 アジア太平洋都市間協力ネットワーク (CITYNET)事業課長 |
第2章 | 調査を振り返って |
貧困・都市問題改善事例集
タイ、インド、ベトナム、フイリピン、マレーシア各国の貧困都市問題改善事例の紹介 |
(文責 委員会事務局 寺田 隆)