東京大学総合文化研究科・山影進教授を委員長に迎えての平成11年 度「東南アジア諸国の政治経済システムの変化と日本を含む地域協力 の可能性」研究委員会は、1年間の活動を終え、このほどその報告書 を完成した。山影委員長はじめ、委員会御参加の委員各位の御尽力に 改めて心よりの感謝の意を表したい。
1.はじめに
深化・拡大プロセスを辿るASEANへの日本の関わりは、1997年通貨 危機以降、さらにその絆を強めつつあるが、ASEAN諸国と日本の関
係、地域統合体としてのASEANと日本の関係に加え、アジア・大平洋 に拡がる広域的な地域秩序を視野に入れながら、日本がASEANと如何
なる関わりを持つことができるのか? 或いは持つべきなのか? こ れが本委員会、「東南アジア諸国の政治経済システムの変化と日本を
含む地域協力の可能性」研究委員会の問題意識であり主題であった。
本研究に先立って、平成10年度には「ASEANを中心としたアジアの 政治・社会システムとそれに立脚した地域協力と日本の対応-ナショ
ナリズムとグローバリズムの調和-」研究委員会が設けられ、日本に とって一層重要度を増しつつあるASEAN諸国における危機以降の変革
の実態把握とその基礎的分析を中心に、この地域が域内及び域外とど のような協力関係を持とうとしているのかが議論された。東南アジア
に関する皮相的な或いは不正確な情報が横溢するなかで、実証データ の把握に徹し、その解析から導かれた論考は今後のASEANの行方を展
望するうえで多大の示唆を与えるとともに、ASEAN研究のひとつのア プローチを提示した。