さる4月10日(火)、東海大学校友会館「富士の間」(霞ヶ関ビル)にて、当財団主催によるGISPRI公開セミナー「揺れ動く東南アジア政治経済の行方」が開催された。年初よりフィリピン,タイで政権交代、インドネシアではアチェ独立運動とワヒド政権の足元不安、アセアン経済の先行き不透明感など、多くの課題を抱えた東南 アジアの今後の見通しと日本の関わりが議論された。 |
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座長の山影進・東京大学大学院総合文化研究科教授より、新旧加盟国間の巨大 格差(アセアンデバイド)が加盟国間にアセアンの意義見直し機運をもたらす中、統合深化を支援して来た日本は今後どう関与すべきなのか、と問題提起された。 |
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2001年1月総選挙でタクシン政権が誕生し、金融改革・経済改革等11の緊急課 題取組みを開始したが、民主党政権時代の対外重視から国内向け経済政策優先に政策 転換している。財政ひっ迫下での赤字増大政策など、中央銀行と対立しつつ短期的成 果を指向している。今後の課題は、中央銀行との調整、前政権下で進められた地方分 権化との調和などであるが、指導力への不満、言論操作スキャンダルなど不安材料を 抱え先行きは厳しい。しかし、強いリーダー登場による景気回復への期待も一方にあ り、新しい局面を迎えつつあるといえよう。 |
中央政局では政党勢力が力を持ち、大統領弾劾への動きなど議会と大統領の対 立はあるがメガワティは当面ワヒドを支えよう。地方政局では民主化進展、地方自治 意識高揚とアチェの分離独立運動の高まり等行き過ぎた政治的自由化が混乱を誘発、 権威主義との両極間でのブレの中で均衡点をどう探り出すかが鍵となる。経済再建で はIBRAを使って政府による不良債務処理等が進められ、一時の自由化指向から180度 の転換と経済ナショナリズムの台頭が認められる。 |
ITは生産性向上の道具であり経営革新にはIT投資だけでなく、マネジメントの フラット化など経営手法のアップデートが必要だ。日本のIT戦略はIT導入でどういう社会を形成するかまだ見えない。また、日本の意志決定ペースではドッグイヤーはお
ろかマウスイヤーといわれるスピードで革新が進むITを活用できるのか懸念される。 地域支援として、e-ASEANは昨年11月に枠組み協定でアセアン側と合意、既存の情報基盤のアセアン地域インフラへの発展を目指している。 e-ASIAについては、アセアン+日中韓でITの展開を図ろうとするゴーチョク トン首相の提唱する案と、ITを活用したビジネスモデルでアジアで事業展開する日本 企業を支援する経済産業省構想との2つの考え方を並行的に進めている。 |
中国の経済的台頭は、アセアン域内に投下される筈だった直接投資を中国内に 吸引、輸出市場で中国産品との競合機会も増大、中国自身のアセアンへの投資等、ア セアンには大きな脅威・存在となりつつある。リーダー不在の中でアセアンは、通貨 危機の後遺症,域内格差等に悩まされ、AFTAの実施も危ぶまれる。地理的に中国、イ ンドの2大国に挟まれた東南アジアの統合はこれらに拮抗する力として重要であり、 日本支援で域内統一市場が形成されれば、現地日系企業のバックアップにもなる。 |
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Q1: |
アセアンメンバーは現在のアセアンをどう見ているか? |
A1: | タクシン政権は、対中国関係をより重視しているように見え、ワヒド大統 領も中国とインドを重視し、アセアン新規加盟国との協調まで考える余裕は無い。 |
Q2: | アセアン諸国内での日本のプレゼンスは低下していないか? |
A2: | 今や日本の製造業からASEAN諸国が学べるものは少ない。金融・通信・行 政等に至っては全く手本にならずプレゼンスは低下している。今後、日本は文化的共 通性に基づく協力に活路を探るべきだ。日本は「アジアの中でどう生きて行くか」を政財官皆で議論を掘り下げる必要があろう。 |
Q3: | 今後のアセアンの政治と経済はどうなるのか。 |
A3: | 経済は政治的安定と経済政策の妥当性が必要だ。政策妥当性では、日本も支援可能で、その実現に積極的に関わるべきだが、政治の安定性確保に直接関わることは適切でない。 |
(文責 セミナー事務局 竹林忠夫)
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