2003年5号

WTO加盟後の中国が 我が国に与える影響と我が国の対応

 中国は80年代以降改革開放をベースに目覚ましい経済発展を遂げ、2001年12月のWTO加盟、2008年北京五輪開催そして2010年上海万博開催決定等により、新たな発展段階を迎えている。すなわち、中国は「世界の工場」と言われるまでになる一方、沿岸部を中心に所得向上が著しく、世界は供給基地としてだけではなく、巨大需要市場としての中国に熱い目線を向けている。例えば、携帯電話加入者数が2002年に2億人を突破するまで成長し、世界一の加入者数になったことは、中国の消費市場としての魅力を端的に示しているといえよう。

  このような中で、我が国の代表的機械工業である自動車産業も、競って中国企業との合弁形式で現地進出を図っており、この動きも世界に残された最後の巨大市場として中国を認識したからに他ならない。

  しかしながら、2002年に誕生した胡錦濤・温家宝体制の動向、2003年初めを中心に世界を震撼させたSARSに関する初動対応を始め、中国政治・経済・社会には依然として先行き不透明感が漂っているのも現状であり、WTO加盟によって引き起こされる直接・間接の変化が期待・懸念されるところである。

  当研究会は、平成14年度からこの中国に関する研究を開始し、平成15年度も引き続き本研究を深めて行くこととした。

  平成14年度は、標記につき主として
  WTO加盟後の中国の変化吟味(WTO加盟に伴う中国の行政・政治・経済の動向等)
  本邦企業が何を目的として中国に進出し、そこにはどのようなリスクが存在するのかを踏まえ戦略的に重要な産業を中心に中国市場の動向及び日本企業の対中戦略の問題点等を研究した。
  平成15年度においては、特に について中国進出のより広範な研究が必要であり、これら調査研究等を行うとともに、こうした日本企業の対中戦略展開を政策的にサポートする方策の在り方について検討する等、我が国の対中戦略の在り方全般を取りまとめることとした。

  具体的には、委員会委員及び対中進出を行っている我が国の個別企業から講師を招聘し、ヒアリング範囲を拡大、個別企業の調査研究を継続するとともに、本研究全体について以下の観点からとりまとめを行う。
  中国進出動機と中国進出に伴うリスクを踏まえた対中進出戦略の分析(知的財産権保護、売掛金回収問題対応その他リスクにつき、大企業及び中堅企業の経営者等からのヒアリングをベースとする)
  対中進出戦略に当たって、民間で対応し得ること又は民間が独自で行わなければならないこと
  対中進出戦略に当たっての政策サポート(リスク回避課題、紛争処理メカニズムの在り方等)

なお、本研究成果のアウトリーチとして、平成16年2月5日開催の第14回GISPRIシンポジウムにおいて公開討論を行う予定である。

  本研究委員会の構成は、以下の通りである。

(敬称略、順不同)
委員長
  関  志雄   独立行政法人 経済産業研究所 上席研究員
委員
  井出 亜夫   慶應義塾大学 大学院政策・メディア研究科 教授
  木村 福成   慶應義塾大学 経済学部 教授
  金 堅敏   (株)富士通総研 経済研究所 主任研究員
  後藤 康浩   日本経済新聞社 論説委員
  嶋原 信治   日中投資促進機構 事務局長
  服部 健治   愛知大学 現代中国学部 教授
  原田 泰   内閣府 経済社会総合研究所 総括政策研究官
  古屋 明   伊藤忠ビジネス戦略研究所 所長代行
  藪内 正樹   日本貿易振興会 事業推進主管 中国・北アジアチームリーダー

(委員会事務局 増淵友則)

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