(COP10会場正門) | (COP10会場) |
【主な概要】 |
(1)経済産業省が中心となり開催したサイドイベントについて |
【テーマ】 途上国でのエネルギー問題対応でのグローバルな協力 | ||
【主 催】 経済産業省、GISPRI、IGES、IETA | ||
【日 時】 12月13日18~20時 | ||
【概 要】 | ||
エネルギー効率化や再生可能エネルギー等の技術移転を含む将来における途上国のエネルギー問題に対する地球規模での協力体制について、日本を始め、中国、インド、米国の政府代表及び専門家との意見交換を目的に行われ、「産業構造審議会環境部会地球環境小委員会将来枠組み検討専門委員会中間とりまとめ」について活発な議論を行った。 |
【海外からの評価】 |
【Chandrashekhar Dasgupta 氏(インド大使)】 |
中間とりまとめについて、エネルギーセクターにおける地球規模の実践的な協力構造を提案するものだとし、京都議定書の代替案ではなく京都議定書の措置を生かした上での新しい提案を提供している点を挙げて高く評価した。 |
【Gao Feng 氏(中国・外務省)】 |
中間とりまとめについて、現状をベースに議論している点を高く評価し、すべてには同意できないものの将来枠組みをこの方向で議論していくことは正しいと述べた。同時に、この提案は国際レベルでの政策コンサルテーションに利用できると述べた。 |
【Andrei Marcu 氏(IETA)】 |
中間とりまとめに対して、新しい道を探求する素晴らしい作業だとし、高く評価した。技術開発と移転では市場メカニズムが中心的な役割を果たすことを強調、資本をコスト効果の高い形で活用することが主な政策ドライバーであることを明らかにし、気候変動について国別のアプローチではなく部門別のアプローチにシフトすることを主張した。 |
【Harlan Watson 氏(米国国務省気候変動問題上級交渉官)】 |
中間とりまとめについては、政治的な現実をベースとした非常に利用価値のある研究であること、及び外部の専門家や米国や中国といった国々ともインフォーマルに意見交換を行ったこと等を指摘し高く評価した。エネルギー部門の直接投資額では、民間部門が全体の90%を占めていると述べ、途上国での持続可能な開発政策の中で、気候変動を主流のものとすることの重要性を強調し、貧困削減と気候変動の両方に効果がある解決策を呼びかけた。 |
(2)CDM理事会の作業について |
;FCCC/CP/2004/L.2を採択した。 |
・ | 特に運輸部門、エネルギー効率化、地域暖房といった分野の新方法論を提案するようプロジェクト参加者を奨励し、そのような方法論が出てきた場合には優先的に検討し、統合した方法論とすることをCDM理事会に求める。 | |
・ | CDM理事会は、承認された方法論をプロジェクトカテゴリーや適用条件毎に整理したデータベースを作成する。 | |
・ | CDM理事会は会合への出席をメンバー、代理メンバー及び事務局に限定することが出来るが、その場合は京都議定書締約国やUNFCCCに信任されているオブザーバーや関係者にプラスして、京都議定書非締約国も傍聴可能にする。なお、CDM理事会は会合を非公開にする権限を持つ。 | |
・ | CDM理事会次期メンバーにはアジア代表として、藤冨正晴氏(日本エネルギー経済研究所アジア太平洋エネルギー研究センター所長)が決定した。 |
(3)小規模吸収源CDMのルール策定(SBSTA Agenda Item 5(b)) |
;ルールの概要として以下の内容を決定した。 |
・ | 規模は、年間吸収量が平均で8,000tCO2以下のプロジェクト。 | |
・ | 計測方法は、通常の吸収源CDMは実測が必要だが、小規模の場合は規定値を活用して、実測を省略することが出来る。 | |
・ | 登録費用等は、あくまでも低所得コミュニティ及び人々に直接便益を与えるべきものであることから通常の吸収源CDMよりも低めに設定。 |
(4)「適応策と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画」の合意 |
;合意内容 |
・ | 適応の科学的技術、社会経済的側面に関する5ヵ年作業計画の策定。 | |
・ | 地域ワークショップ、島嶼諸島のための専門家会合の開催など気候変動の悪影響への途上国における適応。 |
(5)閣僚級会合について |
以下の四項目をメインテーマとした閣僚級会合が開催された。地理的バランスなどを考慮し、一項目につきモデレーターとパネリスト(6 名~7 名)が活発な討論を行った。 |
10 周年の枠組条約、成果と将来の課題 | ||
気候変動の影響、適応策及び持続可能な開発 | ||
技術と気候変動 | ||
気候変動の緩和、政策とその影響 |
【各国の主な発言内容】 |
洪水、台風、氷河融解、砂漠化、熱波などの各国の被害を報告。(各国) | ||
気候変動問題は、持続可能な開発と一緒に考えなくてはいけない。(各国) | ||
ロシアの京都議定書批准を歓迎。(各国) | ||
適応、緩和ともに不十分。(各国) | ||
京都議定書のトップダウンアプローチは良くない。技術開発が必要。(米国) | ||
米国は50 億ドル以上を科学技術に投資し、水素、原子力、再生可能エネルギー、炭素遊離などを推し進めている。(米国) | ||
気温上昇を産業革命前と比べて2℃以内に抑えなければいけない。(EU) | ||
気候にやさしい技術の研究開発、利用、および世界規模の普及を促進するための奨励金制度の施行が必要。(EU) | ||
ヨーロッパレベルでは、欧州域内排出量取引制度、再生可能エネルギー、エネルギー効率化、バイオ燃料、エコ設計などに関する様々な指令がある。(EU) | ||
先進国による技術移転、支援が不十分。(途上国) | ||
先進国の温室効果ガス排出量が増えていることを非難する。(途上国) | ||
発展途上国で石油燃料の輸出に依存する国には、補助金が必要。(OPEC) |
(閣僚級会合の様子) |
(6)政府専門家セミナーについて |
全ての締約国の参加の下に、中・長期的な将来の行動に向けて、情報交換を通じた取組を開始することを決定した。国連気候変動枠組条約および京都議定書の下で実施される今後のいかなる交渉、コミットメント、プロセス、枠組み、もしくは指令を侵すことなく、締約国会議は非公式な情報交換を推進するべく政府専門家セミナーを開催する。 セミナーは、2005年5月の補助機関会合(SB22)に連続して行われ、全てのUNFCCC締約国は、セミナーで発表する機会を有する。 |
(7)COP11について |
2005年11月7日~18日開催予定のCOP11は、2005年前半にホスト国を募ることになった。なお、COP11は、京都議定書第1回締約国会合(MOP1)と併せて開催される。 |
(8)その他 |
最後発開発途上国基金(LDC 基金)、特別気候変動基金(SCCF)、非附属書I 締約国による第二回および当てはまる場合は第三回の国別報告書の提出、政策措置、議定書2.3条(政策措置の悪影響)を含めたいくつかの問題に関する交渉は、終了せず、これらの問題は、さらなる検討のため、SB22 に送られた。 |
【所感】 |
COP10は気候変動枠組条約発効10周年という節目で、2005年2月16日の京都議定書発効を目前に控えた重要な会議であり、将来の行動に向けての政府専門家セミナー開催の合意も得られた大変意義のある会議だった。閣僚級会合において、洪水・台風・氷河融解・砂漠化・熱波などの被害報告が世界各地からされたことが印象的であった。世界各地での地球温暖化の被害が進んでいることを再認識できた。 今後の課題は、炭素隔離・水素・第4世代原子力などの技術開発を推し進めているものの京都議定書に参加していない米国を取り入れ、中国・インドなどの温室効果ガス排出量が多い発展途上国も含めた世界的な協調により、温室効果ガス排出量削減のために世界が一丸となり次なるステップに向けて前進することである。 |
(地球環境対策部 矢尾板泰久) |