近年、アジア各国においては、急速な経済成長を背景として、廃棄物問題の深刻化が進んでいる。各国において廃棄物等の適正処理・リサイクル問題への関心は近年高まっており、廃棄物処理に関する法律についてはほぼ全ての国で整備されてきている。他方、リサイクルに関する法律に関しては格差が大きい。各国に於ける廃棄物関連法規制や関連政策の動向、適正処理・リサイクルへのニーズ・技術レベル等についての情報の発信・交換が不足しているため、技術・情報の共有化を通じて、廃棄物に対する国家間の共通認識を醸成する仕組みを検討する必要がある。またアジア各国で廃棄物の定義及び有害廃棄物の対象や基準値がまちまちであるため、化学的有害性や環境規制の基準の統一を図ることが望ましい。さらにアジア諸国では処理が困難な廃棄物等であって我が国で対応可能なものについては、我が国として積極的に受け入れることを検討するべきである。
輸出可能な循環資源については、輸出再生資源の品質に関する規格を整備し、それに基づく品質検査が可能であることが望ましい。また資源循環ネットワークの構築にあたっては、循環資源の移動先における不適正処理を防ぐため、残渣を含めた適正な処理が行われるための関係主体によるシステムを構築した上で、システムの全ての部分における環境汚染を防止するための措置や、システムに沿って循環資源が移動していることを確認するための措置等を講じ、循環資源の移動にかかるトレーサビリティを確保していくことが重要である。
循環資源は、動脈の貨物に比較して運賃負担力が小さいため、循環資源の資源性を発揮させ、有効利用を進めるためには、物流コストを低減させる必要がある。そのためには、大量一括輸送や、動脈物流の返り荷として循環資源を輸送する等、経済的な静脈物流システムを構築することが効果的であり、今後、必要なインフラ整備を進めていく必要がある。同時に我が国を含めアジア各国においては、廃棄物等や循環資源の越境移動を把握するための統計の整備を進めるべきである。
我が国は、これまで循環型経済社会の構築に向けて各種法制度を整備してきており、アジア各国での循環型経済社会の構築に際しても、これまでの経験やノウハウを伝えることにより貢献を行うことが可能である。このため、政策対話の場を活用して情報交換を進めるとともに、各国特有の社会的・経済的事情を考慮しつつ、各国での制度構築に向けた各種技術協力を行っていくことがわが国に求められる。さらに各国における循環型経済社会の構築に関する専門人材の育成・交流を図るとともに、循環型経済社会の構築に向けた環境教育を促進していくことが求められる。
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委員長 |
細田 衛士 |
慶應義塾大学 経済学部長 |
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委員 |
青山 周 |
(社)日本経済団体連合会 環境・技術本部 環境グループ長 |
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大和田 秀二 |
早稲田大学理工学部 環境資源工学科 教授 |
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熊野 英介 |
アミタ(株) 代表取締役社長 |
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小島 賢次 |
(株)リコー MFP事業本部 リサイクル事業センター長 |
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小島 道一 |
日本貿易振興機構 アジア経済研究所 新領域研究センター 研究員 |
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小林 幹男 |
産業技術総合研究所 環境管理技術研究部門 総括研究員 |
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島田 和明 |
同和鉱業(株) エコビジネス&リサイクルカンパニーリサイクル事業部長 |
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高田 直弘 |
(株)三菱総合研究所 地球環境本部資源 循環研究部 主席研究員 |
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山下 英俊 |
一橋大学大学院 経済学研究科 講師 |
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講師 |
桜庭 昭義 |
経済産業省 大臣官房企画課 企画官 |
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大谷 幸生 |
日本通運㈱ 海運事業部 係長 |
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平田 郁之 |
グリーンラボ 代表 |
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林 孝昌 |
(株)NTTデータ経営研究所 i-community戦略センター チーフコンサルタント |
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オブザーバー |
井内摂男 |
経済産業省 産業技術環境局 リサイクル推進課 課長 |
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小栗 和行 |
経済産業省 産業技術環境局 リサイクル推進課 課長補佐 |
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鍋島 学 |
経済産業省 産業技術環境局 リサイクル推進課 企画調整係長 |
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木村 紀雄 |
経済産業省 産業技術環境局 環境指導室 越境移動管理官 |
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事務局 |
木村 耕太郎 |
(財)地球産業文化研究所 専務理事 |
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本根 正三郎 |
(財)地球産業文化研究所 理事 事務局長 |
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阿部 秀樹 |
(財)地球産業文化研究所 主任研究員 |
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第1章 |
はじめに-東アジア域圏における資源循環の促進を求めて-(細田委員長) |
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第2章 |
東アジアのリサイクル技術および資源循環システムのあり方(大和田委員) |
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第3章 |
中国における廃棄物処理・リサイクル(高田委員) |
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第4章 |
国際資源循環に関する基盤構築(熊野委員) |
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第5章 |
国際リサイクルを評価する指標(山下委員) |
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第6章 |
日本・アジア(中国)における資源越境循環の実施・検討状況と今後の
課題と提案(小島(賢)委員) |
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第7章 |
同和鉱業の環境・リサイクル事業と国際資源循環について(島田委員) |
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第8章 |
アジアの国立研究所との連携研究の事例紹介(小林委員) |
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第9章 |
アジアにおける再生資源の越境移動:現状と課題(小島(道)委員) |
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第10章 |
リサイクルをめぐる中国の状況について(青山委員) |
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第11章 |
グリーン・エイド・プラン(桜庭講師) |
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第12章 |
中国物流事情と日本通運の中国展開(大谷講師) |
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第13章 |
中国企業の視点から見た日本と中国との循環ネットワークの構築に
ついて(平田講師) |
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第14章 |
国際資源循環における「トレーサビリティ」の概念整理(林講師) |
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第15章 |
アジア循環ネットワークの構築に向けての今後の課題(事務局) |
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<参考> |
委員会議事録 |