2005年5号
ISO14064(温室効果ガスマネジメント)への 対応及び活用の可能性・方向性に関する調査研究委員会
ISO14064は環境マネジメントの自主的な国際規格であるISO14000シリーズのガイドラインとして来年に導入が予定されている。国内事業者にも広く取得され運用されているISO14000シリーズに温室効果ガスのマネジメントが含まれることで、事業者の環境マネジメント、温室効果ガスのマネジメントの取組みにも様々な影響・変化を及ぼすことが予想される。
また現在、事業者をとりまく温暖化対策に関する状況としては、今年2月の京都議定書の発効、4月の京都議定書目標達成計画の策定、地球温暖化対策推進法の改定による事業者等の排出量算定報告制度の導入、経団連自主行動計画に基づく自主的な排出削減への取組みの強化、各地方自治体による温暖化対策関連の制度策定の加速、CSR・リスクマネジメントの観点で一般消費者・投資家等からの事業者の温室効果ガス排出マネジメントへの注目度の高まり、といったものがある。このような状況の中で、ISO14064が導入される意味・影響は小さくない。
そこで、このISO14064へ対応や活用の可能性・方向性について、我が国事業者が「温暖化対策」を通じて国内外での競争力を強化するという面を意識しつつ、多方面の視点(事業者、消費者、行政、認証機関等)のもとで検討・整理を行なう。
■具体的な問題意識
事業者にとって、温室効果ガスの排出削減を中心とする地球温暖化対策の推進は経営上の重要課題となりつつある。そこで、産業界は自主的な取組みの推進を加速しているが、政府による温室効果ガス排出削減に関する規制的政策の導入には概ね慎重な立場である。
ISO14064は 温室効果ガスの排出量・削減量の算定・報告・認証の仕組みづくりに関する自主的な国際規格ではあるが、使われ方次第では事実上強制力を持つ制度と同等に機能することも考えられる。過去に、日本企業はISO9001(品質マネジメントシステム)が導入された際、国際競争力維持のため積極的にこれを取得したが、ISO14064が環境マネジメントシステムであるISO14000シリーズの一環で導入されれば、温室効果ガス排出についても同様の対応を迫られることも予想される。この点、過去の事例から対欧米輸出の多い業種が積極的に行動する可能性がある。これらの業種のレスカーボンエネルギーへの要望の高まりが、エネルギー及びエネルギー供給者選択の重要な一要因となる可能性もある。
しかし、また次のようなチャンスも考えることができる。すなわち、温室効果ガス排出量・削減量等の算定・認証スキームは、国内で統一的に確立されていない。仮にこのISO14064が、14001シリーズの一環として国内で標準的な地位を得て、国・各自治体での各種プログラム、各自業者の自主的取り組み等での共通のフレームワークとして機能すれば、複数の算定・報告スキームへの対応による重複した作業を回避し、「温暖化対応価値」の把握について共通の基準を確立する可能性もあるといえる。ステイクホルダーから、企業の社会的責任に関し問われつつあり、環境価値が商品・サービスの選択の基準の一つとなってきている現在、それを強みとする事業者にとっては大きなチャンスであるといえる。
このように、ISO14064は、我が国の事業者にとって競争戦略面で実質上強制力を持つ規制と同様に機能して事業活動に影響を与える可能性と同時に、温暖化への取組みや取り組んだ価値についての共通のモノサシとして機能し、事業者の取組みのインセンティブを喚起しうるという可能性も秘めている。そこで、日本企業は、国際・国内競争力の維持・リスク管理の観点から、この国際規格への対応及び活用の可能性やその方向性について多様な視点から検討・準備を行ことが有用ではないかと考えられる。 |
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① |
ISO14064の策定状況や内容の把握 |
② |
多様な視点からみたISO14064の活用の可能性についての確認
(消費者・事業者・行政・監査機関等の各関係者の視点に基づく評価) |
③ |
ISO140001シリーズの中にISO14064が入り、「温暖化」の視点が加味された影響についての検討
(監査機関の視点での環境監査の流れの変化についての問題提起) |
④ |
個別論点の深掘り(事業者・行政、消費者からみた、GHGマネジメント・ISO14064))
・ |
事業者のGHGマネジメントの取組み、自治体での事業者のGHGマネジメントに関連する施策展開、消費者の視点でみた事業者の温暖化対策やGHGマネジメントと、それらへのISO14064の影響を検証 |
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⑤ |
ISO14064の各関係者の視点に基づく対応・活用の可能性と事業者の取組みの方向性についての整理・検討 |
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を行なう。
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ISO検討WGに参加している専門家、メーカー等先進的に導入する可能性のある業種、エネルギー供給事業者をはじめ、各種産業界及び認証機関、自治体、消費者サイドの研究者等で委員会を構成し、ISO14064の活用に関連して我が国産業界としてとるべき方向性等について整理・検討を行う。 |
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工藤拓毅 日本エネルギー経済研究所 マネージャー (含め委員計15名) |
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【検討予定項目】 |
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第1回(趣旨確認、現状整理、方向性イメージ) |
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① |
ISO14064の現状や概要の確認 |
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② |
事業者のGHG算定・報告に関する現状の整理 |
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③ |
ISO14064の影響や活用に関するイメージの確認(事務局より叩き台提示) |
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※ |
③をもとに、各委員に個別論点(影響・活用のイメージ)についてのアンケートを第2回までに行い、第2回でそのまとめを議論の題材として用いる。 |
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第2回(ISOの中の温暖化の位置づけの確認、今後の検討材料の整理) |
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① |
ISO14000シリーズからみたISO14064の位置づけ・意味合いについて(外部講師) |
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② |
各ステイクホルダーのISO14064の捉え方(アンケート結果参照)についての整理
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欧米の動き |
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国内事業者にとってのリスクとメリット、対応の要否・程度の判断材料 |
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エネルギー事業者/需要家サイドでのインパクト |
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消費者から見た事業者の温暖化対策、GHGマネジメント |
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国内制度(国、自治体)での活用や影響 |
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GHGマネジメントでのデータの確からしさに関する論点(監査の視点) |
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第3回(監査機関の目からみたISO14064) |
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① |
ISO14000シリーズにISO14064が入り「温暖化」の視点が加味された影響の検討 (監査機関の視点での環境監査の流れの変化についての問題提起と議論) |
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第4回(個別論点の深堀・・・事業者・行政、消費者からみた、GHGマネジメント・ISO14064)(委員・外部講師からの報告・コメント) |
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① |
事業者にとってのGHGマネジメントの取組みの実際と、ISO14064の影響について |
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② |
自治体での事業者のGHGマネジメントに関連する施策展開や、その際のガイドラインとしてのISOの意味などについて |
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③ |
消費者の視点でみた、事業者の温暖化対策やGHGマネジメントについて、またその際のISOの影響 |
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第5回(総括) |
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① |
ISO14064の各関係者の視点に基づく対応・活用の可能性と事業者の取組みの方向性についての整理・検討 |
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