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【主な概要】 1) マラケシュ合意 マラケシュ合意とは、2001年7月にドイツ・ボンで開催されたCOP6再開会合において合意された京都議定書の運用ルールの中核的要素(ボン合意)に基づき、具体的な運用細則を定めた文書を正式採択したもの。マラケシュ合意には、CDM、JI、排出量取引などの京都メカニズム、技術移転、キャパシティービルディングや基金などの途上国問題、遵守問題などが含まれている。11月30日のプレナリーにてマラケシュ合意は採択された。 2) 遵守ルール マラケシュ合意のうち、京都議定書の数値目標に関する不遵守の措置(排出超過分の1.3 倍の次期約束期間の割当量からの差引、次期約束期間における遵守確保のための行動計画の策定、排出量取引による移転の禁止)に関する手続きや遵守委員会について、以下のように決定された。
3) 将来枠組みについて UNFCCCに基づく将来取組みについて 米国は将来の目標に関する交渉を開始しかねないものには全て反対するとの強固な姿勢をとっていたが、将来の交渉やコミットメントに何ら影響を与えることがないこと、及び新しいコミットメントを引き出すような交渉につながらないことを明記することで合意した。気候変動枠組条約のもとで米国や途上国含むすべての締約国の参加による「長期的協力に関する対話(モントリオール・アクションプラン)」が成立した。
京都議定書3条9項 G-77/中国は、あくまで議定書附属書B改正による附属書I国のみの将来の数値目標策定を提案、日本はUNFCCC下での幅広い参加を主張し3条9項とともに9条のレビューを強調、EUは9条に言及しつつ、附属書I国のコミットメントの検討開始をするよう提案し、コンタクトグループでの議論が展開された。また、最終日のプレナリーでは、ロシアが途上国による自主的なコミットのメカニズムに言及するよう求めるなどもつれる議題となった。
議定書9条に基づく議定書レビューの準備手続き 最終日まで議論がもつれたが、気候変動枠組条約の見直しと連動した京都議定書の見直しをCOP/MOP2で行うことを定めた議定書9条に基づく作業の準備を開始することになった。COP/MOPは締約国に2006年9月1日を締め切りとして意見を提出するよう要請する。 4) 6条監督委員会
5) CDM関連
6) 次回の日程 現在の予定では、COP12 及び COP/MOP2は、地域グループ間での輪番によりアフリ カ地域で2006年11月6日から17日にかけて開催される予定であり、ケニアが立候補している。 【所 感】 マラケシュ合意が採択されたことで、京都議定書の下での排出量取引・CDM・JIが正式に立ち上がり、炭素は市場価値を得たことになる。炭素価格については、需要と供給の関係により市場が決定していくことになるので、今後の市場動向を注視していく必要がある。 将来枠組みについては、「長期的協力に関する対話」(モントリオール・アクションプラン)は、全ての締約国の参加による対話プロセスについて合意されたものであり、今会合が全ての国が参加する実効性ある枠組みの構築に向けての道筋をつけたと言える。しかし、米国は、京都議定書に対して地球温暖化を避けるために何ももたらさないだろうとのスタンスであり、2013年以降についても法的拘束力を持つ温室効果ガス排出量目標やタイムテーブルを設定する交渉に加わる意向はないと表明している。また、インドや中国などの主要な途上国も、温室効果ガス排出量に関するいかなる義務も引き受けられないとの表明をしており、今後の交渉が容易でないことが想像出来る。UNFCCCのリチャード・キンリー事務局長代行は、京都議定書の後継となる合意ができるには、3年から5年はかかる可能性があり、2008年から2010年が新しい合意が正式決定される時期だろうと見通しを述べている。今後は、UNFCCCでの議論は勿論であるが、G8サミット・アジア太平洋パートナーシップや各国の動向を注視していく必要がある。 本原稿執筆時、カナダにおいては、汚職やリベート問題がきっかけで不信任決議されたことを受け、2006年1月23日投票に向けて総選挙が行われている。世論調査では、京都議定書に反対している野党保守党が与党自由党をリードしている。選挙は投票が終わるまで分からないが、COP11及びCOP/MOP1で議長として活躍したステファン・ディオン環境大臣が現役職から退くのであれば、複雑な思いである。 |