2006年5号
気候変動枠組条約第12回締約国会議(COP12)及び 京都議定書第2回締約国会合(COP/MOP2) 参加報告
ケニア・ナイロビのUnited Nations Office at Nairobi Headquarters 「Gigiri Complex」において、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第12回締約国会議(COP12)及び京都議定書第2回締約国会合(COP/MOP2)が、2006年11月6日から11月17日にかけて開催された。
今会合は主な論点・注目点として、将来枠組、京都議定書(以下「議定書」)の見直し、CDM関連、適応、アフリカに関する問題などさまざまな議題が注目を集めた。
今会合の総参加者数は5,948名で、京都議定書第一回締約国会合が開催された昨年のCOP11(総参加者数9,474名) に比べ、減少した。しかし政府関係者の参加者数を見ると今回(2,352名)は例年並、もしくはそれ以上ということがわかり、やはり今会合も強い関心を持たれていることがわかる。
我が国からは、若林環境大臣、西村気候変動担当政府代表、小島環境省地球環境審議官、本部経済産業省審議官をはじめ、およそ60名が出席した。
【主な成果】
1)将来枠組
1-1.議定書9条に基づく議定書の見直し
~第2回目の見直しを2008年のCOP/MOP4で実施することを決定~
今会合において、1回目の議定書第9条に基づく議定書の見直しが行われた。議定書9条には、「…技術上、社会上及び経済上の情報に照らして、定期的にこの議定書の見直しを実施する。」「1回目の見直しは、COP/MOP2で行う。その後は一定の間隔でかつ適切な時期に行う。」とある。
これについては、対話(ダイアログ)、AWGと一体化して議論を行うべきだという意見と、将来枠組の議論とは切り離して簡素なものとすべきという意見が分かれており、本見直しの対象範囲、実施期間、将来枠組との連携などについて、最終日まで非公式の交渉が続けられた。
具体的には、まだ何も決まっていない「ポスト京都」の次期枠組について、現在は排出量削減義務を負っていない途上国のうち、急速な経済成長により排出量が大きい国々を含めた排出量削減の将来枠組を目指す先進国側と、新たな義務を課す結果につながりかねない議定書見直しの継続に反対する途上国側とが対立した。
結論としては、第2回目のレビューを2008年のCOP/MOP4で実施することを決定し、COP/MOP3で見直し範囲と内容について検討することとなった。決定書では、(途上国も含めた)締約国は2回目の見直しに基づいて「適切な行動をとる」という文言のほか、途上国への配慮として「見直しは締約国を新たな義務に導くものではない」とする文言も盛り込まれた。
1-2.AWG2
~今後の作業計画を決定し、2007年の作業スケジュールを決定~
次期約束策定には科学に基づいた十分な評価と分析が必要とする先進国(附属書I国)と、評価や分析ばかりでなく数値目標策定に向けた具体的な作業計画が必要で2008年までに作業を完了すべきとする途上国の意見の隔たりは変わらず大きかったが、協議を重ね、今後の作業計画に合意した。具体的な内容は以下のとおり。
・AWGの附属書I国の更なる約束に関する作業は、UNFCCCの究極目的の共有のビジョン(shared vision)に基づくものであることに合意。
・大気のCO2濃度を安定化するには世界の排出レベルを2000年の半分以下にしなければならないというIPCCの知見の認識。
・今後の作業計画について合意。2007年は附属書Ⅰ国の削減ポテンシャルと排出削減目標幅の分析を行う。
・第一約束期間と第二約束期間の間にギャップが生じることのないようAWGの作業を完了することを目指すことを確認。
また、多くの締約国が炭素市場の継続性についての強力なシグナルを送る必要性を強調したが、我が国はそれに対し、議定書3条9項の義務は附属書Bの改訂であり、柔軟性メカニズムの継続性を取り扱うことはないと指摘して反対意見を表明した。
1-3.気候変動に対応するための長期的協力に関する対話
「対話」はCOP11で設置が決まったもので、「交渉はしない」とする米国に配慮を示し、自由な意見交換の場として位置づけられている。議定書を批准していない国や途上国も参加した対話では、「持続可能な開発と市場の役割」をテーマに、各国・国際機関・シンクタンク等のプレゼンテーションが行われた。
次回は「適応」及び「技術」をテーマに2007年5月に開催される予定である。
2)適応
~5ヵ年作業計画の前半期の具体的な活動内容が合意。「適応基金」に関しては管理原則、運営形態、運営組織の構成等が決定~
すでに起こりつつある地球温暖化の影響については、先進国に比べて脆弱な途上国がより多くの被害を受けることが予想されている。これについての対応策としては、COP 10で「適応策と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画」が策定され、さらに、昨年のCOP11においては、「気候変動の影響、脆弱性及び適用に関する5ヵ年作業計画」が策定された。
今会合では、5ヵ年作業計画の前半期(2007年まで)の具体的な活動内容について合意され、同計画を「ナイロビ作業計画」と呼ぶことが決定された。このナイロビ作業計画に基づき、今後、各国・関係機関からの情報を集め、適応対策の策定に資する知見を集積していく。
また、CDMクレジットの2%を原資とする「適応基金」について、管理原則、運営形態、運営組織の構成が決議された。これに基づき、次回のCOP/MOP3にて基金付託先機関の決定を目指す。
3)技術移転
~今回での具体的な合意は見送られたが、引き続き議論を続けるとの決定~
先進国・途上国の区別なく、技術移転への関心は非常に高かった。オーストラリア、EU等の先進国及び韓国は技術移転に関する専門家グループ(EGTT)の継続を支持。途上国及び中国はEGTTでは十分ではないとして、条約の元での新たな組織を作り、技術移転の実施をモニタリングすること、技術移転基金を主張した。米国はそのような基金に関し懸念を表明。それぞれ技術移転の更なる推進に向けた考え方を提示したが、双方の調整が付かず、今回での合意は見送られた。しかし、EGTTの活動を1年間延長することが合意され、交渉文草案をSBSTA26へ送ることが決定したことで、EGTTの活動が停止されるという状況は回避された。
4)CDM
4-1.CCSプロジェクトの扱いについて
~CCSに伴うクレジットを認めるかについて結論は出ず、COP/MOP4でのガイダンス採択に向けたプロセスについて決定~
CO2の回収・貯留(CCS)に伴うクレジットを認めるかについて、賛成のEUや日本に対し、南米諸国や島嶼諸国が反対した。今会合での決定はできなかったが、2008年のCOP/MOP4においてガイダンスが採択されることを目指すプロセスが決定された。
4-2.新規HCFC22プラントでのCDMプロジェクトの扱いについて
前回のSBSTAに引き続き検討された新規HCFC22製造施設からのHFC23漏出回避プロジェクトからのクレジット取得については、非公式に交渉が行われたが、今回は合意に至らなかった。
4-3.省エネに関する小規模CDMの範囲拡大
簡素な手続きが適用される小規模CDMプロジェクトの範囲が変更され、省エネの小規模プロジェクト(タイプⅡプロジェクト)の範囲が従来の4倍(年間の削減エネルギー量:15GWh→60GWh)に拡大された。
5)その他
5-1.国際航空・海運からの排出
国際航空・海運からの排出量算定方法に関しては、ワークショップの開催等について検討されたが、産油国などの反対により合意が得られず、次回SBSTA26にて引き続き検討することになった。
5-2.「ナイロビ枠組」
~閣僚級会合でのステートメントにおいて、アナン国連事務総長が発表~
今回の会合はサハラ以南のアフリカでの初めての開催という側面もあり、気候変動の影響を受けやすいとされるアフリカへの配慮も主要な注目点となった。そのような中で、閣僚級会合に出席したアナン国連事務総長が、ステートメントにおいて、途上国、特にアフリカ諸国のためのCDM事業参加促進を目的として、国連関係6機関が主導するイニシアティブ「ナイロビ・フレームワーク」の立ち上げを発表した。
6)次回の予定
次回のCOP13及びCOP/MOP3は、2007年12月3日(月)から12月14日(金)まで、インドネシアで開催される予定である。