昨年来の米国発の世界的金融危機により多くの企業が打撃を受け、企業収益のみならず国民生活そのものも脅かす危機的状況になっております。一方、地球温暖化問題は本年12月にポスト京都議定書の新たな枠組みが策定される予定で、低炭素化社会への変換が喫緊の課題となっております。資源・エネルギー問題、水不足、生態系の破壊などの環境問題も深刻化しており、加えて少子高齢化、貧困、福祉、雇用不安など多くの社会問題が顕在化しています。
現在多くの企業がCSR(企業の社会的責任)の発展に努め、一種のCSRバブルともいえる状況にあります。しかし昨今の業績悪化時において“みせかけ”や“チャリティー”のCSRは大きく見直され、本業(コア・コンピテンス)を通じたCSR活動が、これからの企業戦略の一つのキーワードと考えられます。また、多くの企業が環境ビジネスを新たな中核事業として位置付けると同時に、様々な社会問題をビジネスとして解決するソーシャルビジネスが萌芽期を迎えております。
このような状況を踏まえ、日本大学大学院グローバル・ビジネス研究科・井出亜夫教授に座長をお引き受けいただき、大学研究者、企業担当者、弁護士、NOP等の専門家からなる研究委員会を7月よりスタートいたしました。企業における本業を通じたCSR活動、特に環境ビジネスの展開およびソーシャルビジネスの発展に着目して、持続可能な自然環境・社会環境構築のための新たなビジネス文化の創造について、先駆的な事例報告などを通して議論を深めてまいります。
なお、本年度は研究委員会での議論を補完するための調査として「CSR報告書に見る環境問題・社会問題の取組みに関する調査」を委託してまとめる予定です。さらに、年度末には一般公開のシンポジウムを開催して、CSR戦略としての環境問題や社会問題への取組みを考えて行きたいと思います。
井出 亜夫 |
日本大学大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授(研究科長) |
エクベリ 聡子 | 株式会社イースクエア 取締役 |
大宮 正 | 西村あさひ法律事務所 弁護士 |
岸本 幸子 | 特定非営利活動法人 パブリック リソース センター 事務局長・理事 |
澁谷 隆 | 富士ゼロックス株式会社 CSR部部長 |
塚本 一郎 | 明治大学 経営学部 教授 |
友村 自生 | イオン1%クラブ 事務局長 |
山口 範子 | 特定非営利活動法人 日本水フォーラム チーフ |