産業セクターの視点によるAR5論点調査研究委員会は、石谷久委員長(一般社団法人新エネルギー導入促進協議会代表理事)の下で3回開催された。
2020年の中期削減目標設定に当たり、多くの国は「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が2007年に公表した第4次評価報告書(AR4)を参照している。2013-14年を目標に第5次評価報告書(AR5)の作成が進められるなかで、同報告書に対する産業界からの意見反映は極めて重要であり、IPCC自身も産業界へのアウトリーチ活動を重視している。特に、IPCC第3作業部会の国内事務局を務める弊所が、IPCCの学識経験者・専門家と主要産業界代表による意見交換の場を設定し、AR5の論点や対応の在り方等を一層深堀りすることにより、産業界からの意見反映が可能と考えられる。
そこで、本委員会においては、AR5作成の進捗状況・動向に関する情報収集を進めるとともに、日本の対応方法、産業界の意見・ニーズ等について議論を重ねた。
■IPCCの概要と評価報告書
IPCCは、人為的な気候変動のリスクに関する最新の科学的・技術的・社会経済的な知見を取りまとめて評価し、各国政府へのアドバイス・カウンセル提供を目的として、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された。
これまで4回にわたる評価報告書を作成してきたが、いずれの報告書も、地球温暖化に関する最も権威のある科学的論拠として、「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」等の国際的取組や各国の政策決定者へ様々な知見を提供してきた。
IPCCは3つの作業部会および温室効果ガスインベントリ(目録)に関するタスク・フォースにより構成されている。
■第5次評価報告書(AR5)に向けた進捗状況
IPCCは、2008年4月の第28回総会において、第5次評価報告書の作成を決定した。2013年から14年にかけて、各作業部会報告書と統合報告書を完成させることになり、昨年10月に開かれた第31回総会で詳細が決定された。
第3作業部会報告書の特徴
・気候変動の緩和対策について、各セクターの技術的なポテンシャル評価をベースにしたボトムアップアプローチ、シナリオ分析によるトップダウンアプローチの双方を基に、方向性を明らかにする。
・国際協力、地域協力、国内対策など各レベルの方策、資金協力に関する評価を行う。特に、国際的な取組のための枠組み、緩和対策などに対する情報提供の観点から、科学的研究について評価を行う。
■今後のIPCCの活動
・第5次評価報告書(AR5)に対する意見・ニーズ 以上のような状況を踏まえて、第5次評価報告書(AR5)の特徴、執筆者推薦の考え方、執筆者への支援・協力体制、論文・報告書の発信力強化、産業界との情報共有化の必要性等幅広い観点から活発な意見交換を行った。
■研究委員会メンバー(敬称略、H22年3月時点)
委員長 | : | 石谷 久 | 一般社団法人新エネルギー導入促進協議会 代表理事 |
委 員 | : | 小林 茂樹 | 株式会社豊田中央研究所 主席研究員 |
澤 昭裕 | 21世紀政策研究所 研究主幹 | ||
杉山 大志 | 財団法人電力中央研究所 上席研究員 | ||
関 成孝 | 塩ビ工業・環境協会 専務理事 | ||
山地 憲治 | 東京大学 大学院工学系研究科教授 | ||
岡崎 照夫 | 新日本製鐵株式会社 環境部部長 | ||
影山 嘉宏 | 東京電力株式会社 環境部長 | ||
笹之内 雅幸 | トヨタ自動車株式会社 理事 CSR・環境部主査 | ||
村松 英樹 | 三菱マテリアル株式会社 セメント事業カンパニー 管理統括部企画管理部 上席技術主幹 |